WBC連覇の立役者となり、大会MVPを獲得したボストン・レッドソックスの松坂大輔だが、その活躍の裏には、対戦相手国との驚くべき駆け引き、そして、次に登板するピッチャーへの配慮が隠されていた――。

これは、2日放送のテレビ朝日系列『報道ステーション』が行った松坂大輔への独占インタビューで明らかになったものだ。

それは、3月16日に行われたWBC第2ラウンドの初戦=キューバ戦でのこと。「キューバは勝つためなら何でも使う」と話す松坂だが、その象徴的なシーンとして、松坂がボールを投じる際、城島が持つミットの位置をキューバ・ベンチの人間がスペイン語で「インコースだ」などと大声で打者に教えている場面が見られた。

松坂は、「キューバの常套手段なんですけど、キャッチャーの寄り方で、ベンチから声が出ているのが分かった。最初は何言ってるのか分からなかったけど、途中からコースを伝えているのが分かった」と語り、さらには「コースの指示があって、その通りのコースや予想をしている球種がくると難しい球でも凄くいい反応をするので、バッテリーにとっては厄介ですね」と苦笑いを浮かべる。

日本プロ野球でも、MLBでも、ルールブックに禁止という記載はないものの、パ・リーグでは合意事項として禁止となっている情報伝達行為に、その後、対策を講じた松坂−城島のバッテリーは2回裏から大きくミットを動かしはじめた。

「インコースのサインで外に構えていたりとか、実際にくるのはインコースだったり――」。なりふり構わぬキューバに対し、逆に揺さぶりを掛けはじめた二人。これには、実況アナウンサーも見事に騙され、該当するシーンでは、「おっと危ない。外へ投げたかったスライダーがインコースにきましたが(キューバの打者は)空振り」と解説しているほどだった。

この逆球戦法により、キューバの行為を封じた松坂は、「もう(声は)出てないな。(打順が)一回りする頃には、出てなかったんじゃないですかね。次に投げるピッチャーのために、やっと何かができたなと思いましたね。クマ(岩隈)と対戦した時には、ほとんどなかったですから」と語り、その対策は、岩隈が見事に抑えた敗者復活戦でのキューバ戦の布石にもなっていたという。