競技かるたを扱った「ちはやふる」のヒットにより、漫画界ではニッチな青春ものが注目されつつある。ビッグコミックスピリッツで連載中の「とめはねっ!鈴里高校書道部」もそのジャンルの代表作といえよう。

 舞台は作品タイトルにもなっている「鈴里高校書道部」。主人公「大江縁」は高校入学そうそう部員が足らず廃部寸前の書道部になかば強引に入部させられてしまった。しかし大江はカナダからの帰国子女で、書道どころか習字の経験すらないド素人。それでも新入生歓迎会で見た書道部のパフォーマンスには少なからず興味を持っていた。不安を抱えながらも大江の書道にかける青春が始まる。

 ……と思いきや、入部翌日、大江は想いを寄せていたクラスメイト「望月結希」のために右手を骨折。もう一人部員がほしい書道部はそれを利用し、柔道部に所属している望月をもかけもちという形で入部させてしまう。望月は柔道で全国に名を馳せるほどの実力を持っていたが、生来の負けず嫌いな性質にくわえ、コンプレックスであった悪筆を解消するという望みもあり、書道にのめりこんでいく。

 近年、書はアートとして注目を浴びている。が、漫画の題材としては非常に地味なものといわざるを得ない。動きと台詞、この2つが圧倒的に少ないからである。くわえて、読者側の知識のなさもネックだ。しかし、この作品はこれらの悪条件を解消し、見事に“書道もの”として成立している。

 読者の書道に対する無知は、主人公に書道の初心者をすえることで解消。大江や望月に先輩や顧問らが指導する形で読者にも書道の知識を伝え、共有させることに成功している。文字の多さや難解な説明に音をあげてしまいそうになるが、これを理解することで読者が大江、望月の開眼や成長に大きく同調できるようになっているのだ。

 動きの少なさは、へたに脚色せずに逆にそこを強みとしている。過ぎた脚色はスポーツ漫画にありがちなトンデモ技方面へシフトしてしまいがちだが、それを巧みに回避し、リアリティを持たせているのだ。それでも、ここ、という場面ではピリッとした小技を利かせており、これが実に小気味いい。作者である河合克敏氏お得意の柔道シーンすら、書道のシーンを引き立てるためだけに存在しているように思える。

 河合氏は「帯をギュっとね!」や「モンキーターン」などのさわやか青春もので長らく少年誌の看板作家として活躍してきたが、この作品で青年誌デビューを果たした。それに合わせてか、この作品には高校が舞台でありながら大人が読んでも恥ずかしくならないクールさのようなものが漂っている。それでいて時折のぞかせる青春風味はさすがで、ついついニヤリとさせられてしまうのだ。この作品は、大人にこそふさわしい青春漫画である。

(編集部:三浦ヨーコ)


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