バーレーン戦の岡田監督<br>[photo by Kiminori SAWADA]

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 日本サッカー協会の関係者は正直に告白した。

「WBCはうらやましい。毎日が試合だから次第に盛り上がっていく。でも今回のワールドカップ予選は試合の間隔が開いているから、ちょっと盛り上がって元に戻る」

 バーレーン戦はそれでも盛り上がったほうだろう。スタジアムは満員になり、視聴率も20パーセントまであとわずかだった。

 だが、WBC前後の報道はどうか。試合当日と翌日はワールドカップまであと一歩という明るい話題が踊った。ところが前日以前や翌々日はすっかり話題が日本代表から別の話題に移っている。そうなっている責任の所在は明確だ。岡田監督である。

 バーレーン戦の前、5回の練習のうちすべてが公開されたのは2回だけ。しかも公開されたのはシュート練習などで、戦い方に結びつくヒントはない。情報漏れを防いでいるとしてもバーレーンは昨年から5回も対戦し、お互い特徴も戦い方も熟知している。隠す必要性は何なのか。昨年の第3次予選アウェイ戦、ドバイでの練習の際には、外国人は練習場内に残り、日本の報道陣だけが退去させられたことがあった。岡田監督は日本メディアに対して敵対関係を作ろうとしているようにしか見えない。

 知り合いのライターは皮肉混じりに言う。

「非公開の間は、ずっとセットプレーの練習をしているに違いない。だからセットプレーで点が取れる。非公開の時に普通の攻撃練習にすれば、流れの中で点が取れるようになるはずだ」

 非公開練習が続く中でメディアが試合に向けて話題を作ろうとしても、練習後の選手の意気込みなど情緒面の話ばかりになってしまう。しかもぶら下がりと言われる選手を囲んで全員で聞く取材だからネタはみな同じだ。

 非公開練習への不満をぶつけると、チームスタッフは弁護した。

「オーストラリア戦の前はマスコミをシャットアウトすることで選手の集中力を高めることができた。今回は公開しないことで選手たちに特別な試合だと意識させられた」

 スタッフが言う効果があったとしよう。そして非公開練習が必要だとしたとしても、プロである以上、別の方策も考えてしかるべきではないだろうか。

 プロ野球では野村監督の『ぼやき』が紙面に踊る。岡田監督もせめて毎日、何か話題になるような、できればサッカーについて何か啓発になるような発言ができないか。あるいは合宿中のどこか1日、選手たちとじっくり話ができる場が作れないのだろうか。勝つだけでいいというのはアマチュアで、勝って話題になってお客さんを呼べるのがプロなのだ。

 岡田監督が現役でプレーしていたころ、スタジアムは閑散としていた。ドイツから帰国した奥寺康彦(現横浜FC会長)がプレーするなど魅力はあったのだが、観客数は寂しい限りだった。岡田監督がまだあの時代を覚えているのなら、もっと大局的な視点から自らの行動を考えてほしいものだ。もしも、前回ワールドカップ出場を決めたときの『無観客試合』が一番やりやすい、と考えていないのならば。

文/森雅史