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市民のネット表現に危機!? 平和神軍観察界裁判の行方

2009年04月03日08時00分 / 提供:日刊サイゾー

日刊サイゾー
市民のネット表現に危機!? 平和神軍観察界裁判の行方
 1月30日、東京高裁は会社員・橋爪研吾氏に対して、罰金30万円の支払いを命じる有罪判決を言い渡した。橋爪氏は自身のサイト上で、ラーメンチェーン「花月」などを運営するグロービートジャパン社(以下、グ社)を批判していたが、これが名誉毀損罪に当たるとされた。判決直後、大手新聞は「ネットで中傷、逆転有罪」(産経新聞)などと書き立てたが、この裁判、よくある「ネット上の中傷事件」とは事情が異なる。

 実は、グ社の会長を名乗る黒須英治氏は、右翼カルト集団「日本平和神軍」の総督。軍服で公道を行進したり、パソコン通信やインターネットにおいて朝鮮人差別発言などを繰り返してきたことで有名な集団だ。橋爪氏がウェブサイト「平和神軍観察会 逝き逝きて平和神軍」で批判していたのは、グ社とこの右翼カルトの関係や、グ社のフランチャイズ運営の実態だった。

「グ社への批判を本格的に書くようになったのは、00年以降。同社のフランチャイズ店店長から、被害の証言が寄せられたからです」(橋爪氏)

 その証言とは、開店後、グ社の指示により強引に自宅を担保に入れさせられたり、「(売り上げ減少は、店の)棚にあるバイキンマンのぬいぐるみが原因」と言いがかりのような経営指導をされた、というもの。平和神軍とグ社の関係は店の評判にも影響しており、橋爪氏によると、店長は「平和神軍との関係を知っていれば、契約しなかった」とも語ったという。

「観察会」の記述は、こうした証言に基づいたものだったが、グ社は橋爪氏を刑事告訴し、さらに民事裁判で損害賠償を請求した。民事裁判では橋爪氏に77万円の支払いを命じる東京高裁判決が05年に確定している。

 だが、民事裁判の判決確定後、刑事裁判では、グ社の設立当初から黒須氏が51%の同社株式を所有し、02〜05年度に計1億5,000万円以上の報酬を受け取っていたことなど、新事実も明らかになった。こうして昨年2月、東京地裁はグ社と平和神軍との間に一定の関係性はあると認定。橋爪氏の表現は公共の利益を図る目的だったと認定し、グ社と平和神軍は一体とまでは言えないとしたものの「(橋爪氏が)インターネットの個人利用者として要求される水準の事実確認は行っていた」として無罪を言い渡した。従来の名誉毀損の免責基準は、マスコミなどの報道機関を想定しており、「インターネットの個人利用者として」の基準が持ち出されたのは国内初。一般市民の事情を考慮した画期的判決だった。

 しかし今年1月30日、東京高裁が一審の新基準を全否定。要するに「ネット上の個人でもプロ並みの取材をしなければ有罪」という結論を出したのだ。被告弁護人の紀藤正樹弁護士も憤る。

「起訴自体が不当な事案なのに、これでは一般市民の立場での企業批判ができなくなる。ネット上の表現に壊滅的効果をもたらすのではないかと危惧する」

 同じく弁護人である山口貴士弁護士は、こう解説する。

「この判決直後に、芸能人のブログ炎上にからんで名誉毀損容疑での大量検挙が行われ、話題になった。しかし橋爪氏の事件では、有罪の二審判決ですら一審と同様に同氏の表現に公共性と公益目的を認定しており、私怨・利害関係・愉快犯的な意図にもとづくものではないことが認定されている。いわゆるネットの中傷事件とは別物です」

 公共性と公益目的をもったネット表現は、いわば一般市民による報道的行為。ところが新聞各紙は、一審の無罪判決のときから一貫して橋爪氏の表現を中傷呼ばわりだ。

「自分が諦めたら、平和神軍の問題が埋もれてしまう。そればかりか、社会的に意義のある情報を書いたのに前科者にされるという前例を作ることになる。自分だけの問題ではないので、この不当判決を覆すために闘う」と橋爪氏は、上告することを宣言している。

 一般市民の批判力を社会に生かしていくためにも、最高裁の判断が注目される。
(文=藤倉善郎/「サイゾー」4月号より)

※画像:「らあめん花月」「麺屋ZERO」(写真)などを運営するグロービート社の保養施設「花月荘」を「士官学校」として使用し、コスプレパフォーマンスを行う日本平和神軍(写真下・同社公式サイトより)。


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