■開発現場で直面する問題と克服
iPhoneは、近年登場した環境だけにPCやゲーム機のアプリケーション開発とはまた違った苦労があるという。iPhoneのアプリケーション開発における問題や苦労を開発担当の佐々木氏、阿久津氏に聞いた。
●メモリと環境との葛藤の日々
佐々木氏は、iPhoneアプリケーションの開発を始めた当初を、こう振り返る。
「元からガジェットアプリケーションの開発をしていたわけでないので、まず直面したのがメモリの問題です。パソコンの感覚で開発してると、パソコンなどとは違って使用できるメモリがすぐ足りなくなるんです(笑)。
『サムライチェス』の開発でも、iPhone 3Gは480×320の画面なんですが、半分くらいのサイズ画像を拡大して表示したりしてます。ギリギリのラインでメモリ使用量を微調整しないといけないんです。」
シニアマネージャ 佐々木義一郎氏

また、
「使えるメモリ関連に関しては、ユーザーのiPhone 3G毎に個体差があるんです。8台くらいを社内でテストしたんですが、自分のiPhone 3Gではさくさく動くのに、一部のiPhone 3Gでは動かないとかが発生したんです。原因は、iPhone 3Gってユーザーが自由にアプリケーションを入れられるので、インストールされたアプリケーションによって使用できるメモリの残量がかわってくるからなんです。そうなると、できるだけ動作に必要なメモリを小さくつくらないといけなくなるんです。

開発段階では、PC上のXchordを使って作成し、シミュレーターでチェックしてると環境にも余裕があるので、さくさく動いているので安心して実機にいれると動かない…といったこともしばしばで、慣れるまでは苦労しましたね。最初は手探りでしたが、進めるうちにチェックフローもわかってきたし、アプリケーションサイズのセーフラインも掴めました。

個人の人の場合は、テスト環境とかが足りないので、自分のiPhoneでは問題なく動くけど、リリース後に動作しないというユーザーからの問い合わせが多くきたなんてこともあるようです。」
と、経験と検証環境の必要性を指摘する。

●ディベロッパー同士の交流と情報共有
アプリケーション開発では、テスターやモニタなど、動作環境による問題などをチェックする作業が重要となるが、どのような方法をとっているのだろう。

阿久津氏は、「橋本が運営してるメーリングリストなどを活用しています。『タップネクスト』開発の際に、自社の最新のMacOS以外のバージョン違いの環境でのチェックをメーリングリストのみなさんにお願いしたところ、快く参加していただき、助けていただいたりしてます。また、App Storなどのコメントも建設的な報告とかも多いですね。
メーリングリストは開発者同士の交流がメインなんですけど、Twitterとかを利用したときは、ユーザーとつながるので、バージョンアップへの期待や要望などまた違った反響がありますね。」

●App Storeの功績と活発な開発者の交流
シニアマネージャ 阿久津健氏

阿久津氏は、iPhoneアプリケーションの開発環境について、App Storeが貢献している点を説明してくれた。
「iPhoneの開発環境は、ユーザーに近いところにいるのと、ユーザーからの反響をApp Storeバージョンアップでアプリケーションに早く反映できる体制が整っています。アップデートはApp Storeから自動で告知されるので、ユーザーは常に最新の環境で使えます。これが市販のパッケージアプリケーションなどと違うフットワークの軽さで、ユーザー満足度を得られやすい理由ですね。また、アプリケーションのコピー防止という意味でもStoreは有効です。App Storeでの購入が簡単なことやDRM管理も整備されていますので、ユーザー同士の不正使用とかが減って、Storeで購入してくれているのだと思います。」


橋本氏もiPhoneでの開発者の交流について、「iPhone開発者の交流では、昔のゲーム開発黎明期のような企業と個人、企業と企業の垣根をこえた交流がおこっています。現在のリアル社会のような競合関係ではないんですよ。世界がターゲットなので、お互いの情報を隠し合うとデメリットにしかならないんです。情報を出し合うことで、世界で売れるものを考え生み出していくことが、開発者同士で相互理解されているので仲がいいのです。Androidなどの開発環境でも同じような現象がおきてます。
現在500人くらいの人が参加されているiPhoneDeveloperJapanというメーリングリストがあるんですが、私も管理者の一人として参加させていただいていますが、交流も活発で、先日オフパーティを企画したところ参加者が100名にも上るほどでした。当然同業の企業の方も多いのですが、競合ではなく情報パートナーに近い関係を築けています。結果、サンフランシスコのMacWorldで国内の開発者が協力してpresentationを行ったりできました。」

「交流が、個人同士から個人と大企業までに拡大しているところが、ボーダーレスのインターネット的ですよね。」と、橋本氏は、時代の変化を強く実感しているという。

大企業から個人までつながる世界は、企業人であっても個人として立っており、その個人が世界をむいてネットワークを広げている図式が展開されはじめている。
個人がインターネットを通して世界につながる社会が現実のものとなりつつあり、ネィティブなネット世代により今後は更に社会に浸透していくのだろう。

CONIT


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