【ドラマの女王】 サクラ咲く“喧嘩一筋”。『ごくせん卒業スペシャル』

今回の【ドラマの女王】は、『ごくせん卒業スペシャル』（日本テレビ系）。つい最近本当に高校を卒業したという三浦春馬を含め、Hey!Say!JUMPの高木雄也などが生徒だった昨年４月〜６月まで放送された第3シリーズの３−Dの生徒たち（以下３D）によるハイスクール・ミュージカルならぬ、卒業物語。ヤンクミがさんざん手を焼いた可愛い“不良”たちの危うい進路も気になるが、彼らは無事卒業できるのか。


３Dの生徒たちの就職や進学などの進路が決まり、あとは全員での卒業式を待つばかりとなった“ヤンクミ”こと山口久美子（仲間由紀恵）。

赤銅学院高校の教頭先生でもありボヤッキーでもある生瀬勝久をはじめ、 ヤンクミ憧れの校医の夏目（小泉孝太郎）、平山あやと共に「花の女教師」“ほっしーの”星野亜希、理事長の江波杏子、忘れちゃいけない体育教師の東幹久など、学校メンバーは相変わらず和気あいあいと楽しい。
金子賢、内山くん、宇津井健の「大江戸一家」は今回はそんなに活躍しないが、進路が決まった３Dの悪ガキたちに店のラーメンをふるまうクマ（脇知弘）が、生徒たちのキケンを察知しヤンクミに伝え力になる。

式を間近に控え、卒業アルバムに映る自分たちを見て、この１年ヤンクミのおかげで高校生活が楽しく変わった事を振り返る３D。最初からそんなに荒れていたかな？
その頃、赤銅の２年、高杉（玉森裕太）という大和（高木雄也）の幼なじみを中心としたグループが、なにかと３Dに反抗的な態度をとっていた。また教師や友達が信じられない高杉は古巣の不良校の先輩たちの手先でもあった。スペシャルで初登場した玉森くん、美形だと思ったらやっぱりジャニースJｒなのね。

ある日、せっかく就職が決まった廉（三浦春馬）とクラ（桐山照史）の二人が、不況のあおりで内定が取り消しになってしまい、荒れたクラはとうとう高杉たち二年との乱闘を起こし卒業式まで謹慎処分になってしまう。その際にヤンクミに「卒業式なんてそんな大それたモンちゃうやろ」と毒づいたことから3Dの仲間割れを招いてしまう。

最終的には、高杉を助ける為に汚い手を使う不良と大乱闘をした３Dの生徒とヤンクミは、キズだらけで卒業式を迎える事ができる。就職にあぶれた廉たちは、いつも意地悪だけど本当はやさしい猿渡教頭（生瀬）から新しい就職先の面接を取り付けてもらい、その嬉しい気持ちを「ありがとうございました！！」と３D全員の気持ちのいい挨拶で返す。新学期になり、新たな不良クラスに挑むヤンクミ・・・・つづきは「夏公開の映画を見てね。」と続く。

どんどん不良の勢いが弱くなっている人気シリーズ『ごくせん』。その後、イケパラ、メイちゃん、ルーキーズと、他局もマネする「イケメン大放出作戦」は日テレのこのドラマが先駆けだった。第１シリーズの松本潤（嵐）から小栗旬、成宮寛貴、上地雄輔、松山ケンイチ、亀梨和也・赤西仁、速水もこみち、小池徹平、小出恵介、水嶋ヒロと数え上げたらキリが無い人気俳優を送り出している。

たしかに、面白いドラマだし『ありふれた奇跡』と違って仲間由紀恵もイキイキしている。（本人のヤル気では無く役柄が！）何度も続編が作られるヒットの理由もわかるのだが、記者はどうしてもこの『ごくせん』において生徒たちがヤンクミを支持する理由が「暴力」である事が納得できない。生徒たちを守る為に圧倒的に強い力で悪い輩をやっつけるヤンクミはかっこよく頼もしいが、暴力の魔の手から“暴力”により守られる生徒たちにとって、腕力の強いヤンクミと、内定を復活させてもらうために会社とかけあうヤンクミはどっちが大事なのだろう。
ヤンクミがもし力の弱い「普通の女の先生」だったら、生徒たちは心を動かされないのか。ケンカは弱いけど生徒の為に奔走する教師は日本中いくらでもいる。

最近世間を騒がせた「先生を流産させる会」事件。被害にあった妊婦の先生は、事件が発覚するまで嫌がらせに気づかず、生徒が毒だと思ったミョウバン（実は食品添加物。）を飲まされても、椅子のネジが緩んでいても、母子共にピンピンしている。事件発覚後も「改心してやさしい子になってほしい」と流産に手を染めようとした生徒を思いやる発言をするやさしい先生。記者はこの先生の方がヤンクミ先生よりも（身も心も）、「超人的」に強いと思う。

第３シリーズまでやりながら、“腕力の強さを見せないと”生徒たちに一目置かれないヤンクミと、視聴率は稼げても『金八先生』のような心に残る名シーンは生まれないドラマ『ごくせん』。きっと見ている子たちはみんないい子なのだろう。
ヤンクミの思いは決して“少年たちの心の闇”まで届かない。


（編集部：クリスタルたまき）