先月22日に発表された第81回アカデミー賞において、外国語映画部門で『おくりびと』が、短編アニメ部門で『つみきのいえ』が受賞し、日本で大きな話題となった。アニメ作品においては過去にも、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が長編アニメ部門で受賞したこともあり、ここにきて日本国内で、国際的評価の高い日本アニメを見直す動きが出てきている。すでに政府は、アニメ産業を日本の重点産業として保護・育成する方針を打ち出している。

 このように夢多き日本のアニメ業界だが、狭い業界であるがゆえに問題点も多い。今年1月に公正取引委員会が発表した実態調査(アニメーション産業に関する実態調査報告書)で、アニメ業界に蔓延する下請け制作現場の“疲弊”が明らかになったのだ。小規模業者が大半を占めるアニメ業界においては、発注者側が優位に立っていることが多く、不当に低い制作費や厳しい納期を押し付けられる、いわゆる“下請けいじめ”が蔓延しているという。

 悪質な下請けいじめは、法律上では「下請法違反」にあたる。――じつはこの「下請法違反」だが、アニメ業界だけに限らず、今年度に入って全国で急増しているのである。

「下請法違反」の大部分を占めるのは「不当減額」であるが、この摘発総額を見ただけでも、「下請法違反」が急増していることは明らかだ。平成19年度の1年間で10億8804万円だったものが、平成20年度は上半期だけで23億5446万円にのぼっており、半期だけで年間金額の2倍以上のペースで膨れ上がっている。このまま行けば、1年間で4倍以上に増加する計算となる。特に違反が多い業界は運輸業界。次いで自動車部品等のメーカーであると言われている。いずれにしても多くの業界で、不況の影響による業績悪化のしわ寄せが、“下請けいじめ”として中小・零細企業に及んでいる格好だ。

注:ちなみに、“下請け”のイメージが最も強い業界の1つに建設業界があるが、建設業界は「建設業法」で規制されているため、「下請法」の対象には入らない。

「不当減額」による“下請けいじめ”として今年度最も話題になったのは、阪神タイガーズ優勝グッズの大量発注事件だろう。ご存知の通り、昨年のプロ野球ペナントレースで阪神タイガーズは独走状態を続けていた。そこで阪神球団の親会社であるH2Oリテイリング(阪急・阪神百貨店グループ)は、タオルや帽子などの記念グッズを下請け業者に大量発注。しかしその後、巨人の猛追により、阪神は優勝を逃してしまう。目算が困ったH2Oリテイリングは、記念グッズの在庫を半額で買い叩いたという。これが悪質であるとして、公正取引委員会は同社に下請法違反の疑いで指導。同社は残りの半額を追加で支払うこととなった。

 ちなみに「下請法」の正式名称は、「下請け代金支払い遅延等防止法」といい、もともとは支払いの遅延を防止する目的で作られたものである。実際に、「下請法」で定められている遅延利息は14.6%と非常に高い。民法で定めている法定利息の5%や、商事法定利率6%と比べても、倍以上と非常に高利率となっている。しかし、この「支払い遅延」以前に、「不当な減額」が蔓延しているのが昨今の現状であるといえるだろう。

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