乙男(オトメン)――。乙男という字面はなんだか残念な男子を思わせるがそうではない。乙女チックな趣味志向を持つ男子たちのことである。

 別冊花とゆめで連載中の「オトメン(乙男)」。タイトル通り乙女チック男子がわさわさ登場する少女漫画であるのだが、作中でのオトメンの定義は以下の3つとなっている。?乙女的趣味・考えを持つ若い男性、?料理・裁縫など家事全般に才を発揮する若い男性、?乙女な心を持ちつつ、男らしさを兼ね備えた若い男性、だ。

 主人公「正宗飛鳥」は剣道部主将で眉目秀麗、おまけに成績もいいと一見ステレオタイプのヒーローである。しかしその実、彼は“ふわふわきらきらカワイイものが大好き”なオトメンだったのだ。飛鳥はその正体を隠したまま男の中の男として高校生活を送っていたが、転校生「都塚りょう」に一目惚れ。本当の自分をさらし、想いを打ち明ける。

 この作品を知らない人は、私が結末まで書いてしまったと早合点したかもしれない。しかし、これは第1話のストーリー。この作品は片思いの相手と結ばれてメデタシメデタシという当たり前の少女漫画ではないのだ。

 りょうとつきあうことになっても飛鳥はその乙女心ゆえに大忙し。少しでも喜んでもらえるようにと毎日手作り弁当を持参し、恋のおまじないを実践し、占いに一喜一憂する。クリスマスにはリース、オーナメント、ケーキを手作りし、プレゼントに手編みのマフラーを用意する乙女ぶりだ。

 そんな飛鳥の愛を一心に受けるりょうは美少女ながら男前。物腰柔らかだが考え方や言動に一本筋が通っており、男女問わず人気がある。しかし極度の天然で、飛鳥のことを恋人とはっきり認識しているかはさだかではない。

 りょうが男子、飛鳥が女子であれば典型的なきらきら少女漫画のできあがり、なのであるが(作中では飛鳥の友人「橘充太」がその通りの少女漫画を書いており、人気を博している)、それを逆にしただけでこうまでおもしろくなるとは思わなかった。作者である菅野文氏に脱帽である。

 飛鳥は長身痩躯にサラサラヘアーをなびかせた切れ長の目を持つ美少年である。そんな彼が真顔で生クリームをホイップし、あみぐるみに取り組み、シャツのほころびを繕うのだ。そしてそれらをりょうに手渡す時にはうっすらと頬を染め、瞳を輝かせる。これだけでもうニヤニヤが止まらない。

 この作品には飛鳥の他にも美少年キャラクターがたくさん登場するのだが、個人的イチオシは「多武峰(とうのみね)一」。飛鳥と競うほどの剣道の腕前を持ち、かつ、超一流のメイクアップ技術を誇る化粧系オトメンである。黒髪眼鏡の俺様キャラで、その高慢な台詞回しはもはや萌えというレベルではない。悶え死にそうだ。

 今、巷では“草食系男子”なるものが流行っていると聞く。オトメンと混同してしまいそうになるが、その本質はまったく違うものだ。飛鳥はりょうゆえに誰よりも乙女であり、りょうのために誰よりも男になれる。恋愛に縁はあるのに興味を示さない草食系男子などよりよほど魅力的ではないか。

 この作品の連載が始まったのは2006年。奇しくもニットカフェに通う男性たちが話題となった年である。そのままオトメンブームが来るのかと思いきや、いつのまにか草食系男子に取って代わられてしまった。主役がオトメンと騒がれた「仮面ライダーキバ」の放送も1月に終了。しかし私は夢見ている。オトメンブームの到来を。

(編集部:三浦ヨーコ)


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