花鹿が、立人が15年ぶりに帰ってくる。少女漫画不朽の名作「花咲ける青少年」が4月からNHKBS2でアニメ化されるのだ。

 主人公は「花鹿・ルイーサ・陸深・バーンズワース」。世界有数の財閥バーンズワース家の一人娘である。14歳になった花鹿は、父にゲームを持ちかけられた。自分が選んだ3人の男から夫を決めろというのだ。

 その3人がどこの誰であるかは秘密で、さらには当人たちすら夫候補である事実を知らないという。広大な砂漠の中で3粒の砂金を探すような突拍子もない話に、花鹿は乗った。花鹿が幼い頃から兄のように慕ってきた「倣立人(ファンリーレン)」がその顛末を見届けることになったからだ。どこの誰とも知らぬ夫候補を探すことより、立人とともに過ごせることに幸福を感じる花鹿。年齢以上に幼い少女の夫探しは、彼女と立人を予想だにしなかった翻弄に巻き込むことになる。

 ここから先はアニメを楽しみにしている人のためにネタバレに注意して筆を進めるつもりだが、手がすべることもあるかもしれない。毛ほども先を知りたくないというのなら、ここでウィンドウを閉じることをおすすめする。

 この作品は美少年、美青年の万国博覧会だ。中性的な美少女である花鹿を取り巻く3人の夫候補たちは当然のように美しい。時に同性をも魅了するフランス貴族「ユージィン・アレキサンドル・ド・ヴォルカン」は美しく生まれるべくして生まれた魔的な美青年であるし、小国の第二王子「ルマティ・イヴァン・ダイ・ラギネイ」はエキゾチックな面差しにカリスマ性をのぞかせている。バーンズワース家の仇敵であるローゼンタール家の跡取り「カール・ローゼンタール」は生い立ちから来る哀しみを秘めた子犬のような目がたまらない。

 そして立人。若くして華僑の大財閥総帥となるために身につけた“擬態”がその美貌に深みを与え、花鹿を想いながらもその夫探しを見守る苦悩がさらに彼を美しくする。中国服を身につけていることが多く、これが非常に似合っているのだが、たまのスーツや変装もまたいい。作者である樹なつみ氏は本当に女子のツボを心得ている。

 花鹿に思いを寄せる4人ばかりでなく、いい男はまだまだいる。童顔がキュートな花鹿のボディーガード「寅之助・V・芳賀」、狂信的なまでにルマティを崇拝する妖美な「クインザ・ハフェズ」、無骨だが軍人らしい精悍さを持つ「イザック・ノエイ」などなど、まさに美しい青少年が花ざかりだ。

 しかしこの作品はただのイケメンわんさか漫画ではない。前半は遅々として進まない花鹿のロマンスを、後半はラギネイ王国の動乱を中心としてストーリーが展開されるのだが、そのバランスが秀逸なのだ。特にすべてが動き出すコミックス8巻は素晴らしい。ユージィン、ルマティ、カールそれぞれの花鹿への愛の言葉が作品の世界観を改めて認識させ、終焉へと向かわせる力を持っている。

 愛の言葉といえば、ルマティの祖父にあたる「マハティ・シェイク・ダイ・ラギネイ」のプロポーズが忘れられない。ここでその言葉を明かすことはしないが、少女漫画史に残る愛の告白だと私は思う。ぜひ漫画で、アニメで確かめてみてほしい。

 この作品は連載当時コアターゲットであったアラフォー世代はもちろん、今の若い女性にもおすすめできる。さきに断っておくが、BLの要素はまったくない。むしろそういったものを期待するのならこの作品には手を触れないでほしい。二次創作に汚されるのが我慢ならないほどの名作なのだ。

(編集部:三浦ヨーコ)


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