連載終了から20年以上が経った今もまったく衰えることのない輝きを放ち続けている漫画「タッチ」。ヒロインである「浅倉南」の魅力も同様で、時代の変遷とともに減衰することはない。南は永遠にすべての男性の憧れである。

 ルックス良し、成績良し、スポーツ万能で、おまけに同性からの人望も厚い。しかしそれだけでは漫画界において最強となることはできない。フィクションの世界に生きる漫画の登場人物たちの中では、完璧であることは珍しくもなんともないからだ。南を完全無欠のヒロインに仕立て上げているのは主人公「上杉達也」への愛である。

 南はコミックスでいえば5巻とかなり早い段階で自分の思いを達也に打ち明けている。しかし達也が名台詞「上杉達也は浅倉南を愛しています」で南に思いを伝えたのは最終巻である26巻。物語中の年月でいえば2年程度のことだが、南が物心ついた頃から達也を思っていたとすると、この告白を引き出すまでに10年以上かかったことになる。

 甲子園に“連れて行って”もらうことが幼少期からの夢であった南にとって、それを叶えてくれるのが愛する達也ではなく和也だったというのは少なからず納得のいかないものであったに違いない。しかしコミックス8巻で和也が他界し、達也が野球を始めても、南はすぐにはその夢を達也に背負わせることはしなかった。その時は夢よりも愛を重んじたのであろう。南が達也に甲子園に連れて行ってほしいと明言したのは14巻でのことあり、その真意のほどはストーリー上からは見出すことはできなかったが、タイミングはこの上ないものであった。

 自らの夢を一人の男に託し、自分は待つのみ。一見、男に頼りきりの弱い女にも見えるが、そうではない。そうすることで南は達也をたてているのだ。

 南は達也を信じ、許し、待ち続けてきた。達也が野球を始める前から、ボクシングを始める前から、本当に駄目な少年であった頃からずっと。自分の可能性を信じ、揺らぎや挫折を許してくれ、ひたすらに待ち続ける美少女。男性からすればまさに女神のような存在であろう。

 南には完璧な少女であるがゆえに抱える悩みもあった。しかしそれをフィーチャーしすぎると彼女は女神ではなくなってしまうため、作中ではさらりとその壁を乗り越えている。しかもそのきっかけが達也であるというおまけ付き。自分の完璧さを見せつけつつも男に花を持たせるあたり、ヒロインの鏡である。

 コミックス26巻を通じて南が待ち続けてきたのは達也からの告白ではない。甲子園に連れて行ってくれることでも、パーフェクトな自分にふさわしい男になることでもない。達也が達也であることの幸せを手にすることだ。最終話では南の夢を叶え、愛を告白したというのにどこか煮え切らない達也の姿が描かれている。それはこれから先も南が達也を支え続けることを示唆しているように思う。

 第1話から最終話まで、そして今でも完璧なヒロインであり続ける浅倉南。男性の価値観の変化やさらなるヒロインの登場により南がその座を追われることがあれば、それが時代の変わり目なのであろう。

(編集部:三浦ヨーコ)


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