今回の【ドラマの女王】は、多分今回で最後の仲間由紀恵、加瀬亮主演のフジテレビ木曜劇場『ありふれた奇跡』。みんなでギスギスして、ちっとも心温まらない“山田太一ワールド”もあと2回で最終回を迎える。このコーナーでは中盤において散々な評価をしてきたが、物語終盤にさしかかってグイグイと追い上げを見せている。


弱者問題の専門家も認めた“上から目線”のこのドラマ。今週もやってくれた。
お客の前で料理をして、レンジの説明をする人・加奈(仲間由紀恵)と、左官工の翔太(加瀬亮)は、「見知らぬ者同士に戻った気持ちで」という“ヘンテコ”なデートをする。実は子どもが3人いる主婦(加奈)だとか、おせっかいな母親がうるさい(加瀬亮)だとかウソ・リアルな二人の妄想も恐いが、1回だけセックスして翔太との関係を終わらそうとホテルを予約したという加奈。これが、手回しばかりが早く、演出が下手な“アラサー女”の正体か。こういう女の人ってどう?

「いつもは鈍い」くせに、この時ばかりは鋭く加奈の気持ちを察し「行かないよ!」と逃げ出す翔太。行かないで良かった。その普段着では高級ホテルのジュニア・スイートはみっともないぞ。
翔太にフラレた加奈、一人で泊まったんではさすがにもったいないので、母(戸田恵子)をホテルに呼び出す。華奢な戸田さんと並ぶと“体格2割増し”の仲間さん。残念。

グズグズしていた先週までよりも、テンポの良かった今週。住宅展示場をクビなった藤本役の陣内孝則が、やっと本来の面白さを見せてくれた。

「記者お気に入り」の翔太の家で“キュウリをあてに”酒をちびちび一人飲む四郎。そこに帰ってきた翔太が、そんなもん(キュウリ)で飲むなよとツッコミ、それならお前がスーパー行って何か買って来い。という四郎。こういうやり取りがたまらなく面白い。

陣内、戸田、風間、岸辺、松重、井川とそして八千草薫。これだけの強力キャストを集めときながら、「キュートなジジイ役」の井川比佐志以外の使い方が“全て失敗している”『ありふれた奇跡』。同キャストで「人情喜劇」の映画を作ったら、どれだけ面白いものができるか計り知れない。

東京は下町の小さな左官屋。祖父(井川)祖母(八千草)職人(松重)と血のつながらない娘ツバキ(仲間)が切り盛りしている。年に1、2度ふらりと帰ってくるフーテンの兄(加瀬)の幸せを願う妹のツバキ。→こっちの方がぜったい面白い。

それじゃ、「男はつらいよ。」と言われそうだ。ではこういうのはどうだろう。

大手建設会社の平社員玉ちゃん(加瀬)は、知る人ぞ知る“狩り名人”。会社じゃ社長のプーさん(岸辺)は実は玉ちゃんの猟銃の弟子。家では美人の奥さん(仲間)が待っていて、なにかというとアイリッシュダンスを踊り、ボロイ家をガタガタ言わせながら、二階のベットで「合体」する。

って、これも「釣りバカ日誌」か。

とにかくお暗いドラマ『ありふれた奇跡』第1章はサッサと終わらせて、コメディータッチで「シリーズ映画化」を望む。本来明るい役の方が生きる仲間由紀恵のキャラ。暗い加奈のまんまじゃかわいそうだし、加瀬亮はスクリーンでも抜群に栄える俳優。ドラマで終わらせるのはもったいない。

「暗い→明るい」展開が急すぎるって?大丈夫、大丈夫。
ほら、昔山田センセイが書いた『男はつらいよ。』だって、ドラマ第1章では主人公の寅さんがヘビに噛まれて死んでしまうんだし。

ってだから、それは山田太一じゃなくて山田洋次だよ。

(編集部:クリスタルたまき)

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