月刊少年ガンガンで連載中の「鋼の錬金術師」。21巻まで発行されているコミックスの総売上が3千万部を超える人気漫画だ。4月には最新刊である22巻の発売と、アニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」の放送が決定している。

 この作品は2003年にもアニメ化されていたが、私は見ていなかった。正直にいえば一度だけ見てみたのだが世界観やストーリーがあまりにも暗く窮屈に感じられて、それきりとなってしまったのだ。あんなに重苦しい作品がなぜこれほど人気を集めているのか疑問に思っていたのだが、周囲のファンにそれをぶつけると、アニメと漫画は別物、という答えがほぼ100パーセント返ってくる。ならばと遅ればせながら手に取ってみた。

 主人公の「エドワード・エルリック」は弟である「アルフォンス・エルリック」と「錬金術」により亡き母を蘇らせようとした。しかし2人の前に現れたのは、生前の母とは似ても似つかぬ異形のもの。結果エドは右手と左足を、アルは肉体すべてを失ってしまう。エドは失った部分を機械鎧と化し、アルは鎧にその魂を宿して生きることとなった。その後「国家錬金術師」となったエドはアルとともに本来の体を取り戻すため、錬金術の力を増幅させる「賢者の石」を求めて旅に出る。

 エドとアルはさまざまな人と、そして人ならぬものと出会い、賢者の石や錬金術、軍、国家の秘密に迫っていく。その過程で知り合った多くの仲間と「約束の日」に備え、それぞれが成すべきことを成そうと懸命に努めているところで21巻は終わっている。

 私個人の素直な感想を述べると、おもしろいの一言。そしてある種の手強さを感じた。

 この作品は主人公が謎を求めて旅立ち、戦って仲間を得、次なる謎へといった判を押したような進み方をしていない。エドとアルが別の場所にいてそれぞれにドラマが展開されることもあるし、エド同様に国家錬金術師であり軍の中枢にいる「ロイ・マスタング」周辺にスポットが当たることも多い。さらに大勢いる登場人物それぞれにバックボーンがあり、回想シーンも容赦なく闖入してくる。しっかり読んでいないと時と場所が交錯してしまうのだ。

 ストーリー構成のみならず、なにもかもが一筋縄ではいかない。例えば私はすでに2度“仲間”という単語を使ってしまっているが、約束の日に向けて動いているエド一行とマスタング、隣国の皇子「リン・ヤオ」らは厳密には1つのパーティではない。同じ目的の元に集った同志という言葉の方がふさわしいのだが、かといって敵対しているというのでもないのだ。この微妙な距離感は従来の少年漫画ではあまりお目にかかったことがない。

 この作品には少年漫画にありがちな甘ったるいロマンチシズムが存在しない。こうきたらこうくる、という漫画好きなら誰でも持っている予感をことごとく裏切ってくれる。実に手強いが、それが乾いたおもしろさにつながっているのだ。錬金術というファンタジーの権化のようなモチーフを中心にすえ、あげく随所にコメディシーンをちりばめているというのに、どこまでも硬派。それでいてアニメで感じたような重苦しさはなかった。

 漫画版の印象はクール&ドライ。まるで湿気取りかビールの商品名のようだが、あながち的外れでもなかろう。そしてこの2つが、生命や死といったテーマを扱うのに最上の下地となっているのであろう。

(編集部:三浦ヨーコ)


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