農業大学を舞台とし、人間と菌が右往左往する「もやしもん」。同様の一風変わったキャンパス漫画といえば佐々木倫子氏の名作「動物のお医者さん」を思い浮かべる人も多いだろう。なにかと比較されることの多い2つの作品だが、改めてここで類似点と相違点を挙げてみたい。

 舞台は「某農業大学」と「H大獣医学部」。関係者からすればまったくの別物なのであろうが、外側から見ればどうしても同じカテゴリに入れたくなってしまう。事実、どちらの作品でも牛の肛門に手を入れる“直腸検査”の実習場面が描かれていた。

 登場人物たちは教授、先輩、同級生とみな個性豊かで、樹=漆原、長谷川=菱沼、結城=二階堂といった図式が見える。これはあくまでキャラクター性ではなくポジションの話なのでご理解いただきたい。そして忘れてはいけないのが、菌=動物、である。

 沢木が常に「A.オリゼー」を連れているように、動物のお医者さんの主人公であるハムテルの傍らにはいつでも愛犬・チョビが寄り添っている。この他にも「P.クリソゲヌム」や「S.セレビシエ」が登場するように、ミケやヒヨちゃんやスナネズミたちがいる。

 このように類似点は確かに存在する。しかし相違点はそれ以上にあるのだ。

 もやしもんでは沢木と菌たちの意思疎通は完璧になされているが、動物のお医者さんではそうではない。動物たちに台詞はあるものの人間には通じているのかいないのか、ぎりぎりのラインが保たれている。ここに特殊能力を持つ者と一般大学生という主人公の違いが明確にされている。

 人間以外の登場人物(おかしな言葉だが他に適するものが見つからなかった)の扱いとしては動物のお医者さんの方でよりフィーチャーしている形だ。1話完結の物語の中心にいるのは多くの場合が動物であり、人間はそれにふり回される形となっている。

 もやしもんにおける菌はモブといってしまって構わない存在だ。ただなんとなくこちゃこちゃといて、かわいらしく、ほほえましい。しかしそんな存在であるからこそ、菌ならではのやり方で人間に呼びかける場面が非常に印象に残る。現在発行されているコミックス7巻までの間にたった一度だけ、菌がいなければストーリーが進まなかったであろう場面もあった。

 もっとも大きな相違点は、もやしもんはコメディであり、動物のお医者さんはギャグであるということ。コメディとギャグの境界線について掘り下げることはここではしないが、私の中ではこの2作品は別ジャンルの作品だ。

 もやしもんを読むとただ笑えるばかりでなく、登場人物たちの懸命な生き方に元気をもらえる。おまけに発酵食品に関する知識まで手に入るのだ。笑えて元気になってためになる、一粒で何度でもおいしい。一方、動物のお医者さんで得られるものは笑いのみ。しかしそれはただの笑いではない。たった一つの感情で心がいっぱいになるような極上の笑いだ。

 私がこの2作品を比べたのは優劣をつけたかったからではない。一方はすでに読破済みでこれからどちらかの作品を読もうという人のために2作品の肌触りのようなものの違いを知っておいてほしかったのだ。似ているけれど違う、という非常にありきたりな話になってしまったが、どちらも読んで損はないことだけは断言できる。

 蛇足にもほどがあるが、今日こそ日本酒を買ってきた。封を切ってオリゼーとの対面を楽しむ前に、本棚の奥に眠っている動物のお医者さんを探しておこう。

(編集部:三浦ヨーコ)


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