CAD技術の最前線を経てステップアップしたK.J氏

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ひとつのソフトウェアプロダクトを極めたエンジニアは、そのプロダクトを必要とする市場が一定の規模である限り、キャリアの価値は高い。K.Jさんは、CADの分野で市場動向を見据えながら転職を重ねてステップアップを続けた。

デファクトスタンダードとなって市場を席巻するプロダクトは少なくない。しかし、流行には終わりがあるように、デファクトを獲得した製品も、うまくバージョンアップしたり、新たな需要を取り込まなければ、やがて競争力を失う。しかし、いったんプロダクトとその対象業務、さらに顧客を熟知したエンジニアは、少しの追加スキルで取って代わって新たなデファクトとなった他社のプロダクトを扱うことが難しくない。必然的に新デファクトの拡販を急ぐベンダーは、転職市場で旧デファクトのエキスパートを待ち構えている。IT市場では、こうしたプロダクト軸でキャリアを積み重ねるエンジニアが少なくない。K.Jさんは三次元CADの分野でスキルを継続させて、最終的に最大手のSIerに到達した。

■大手システムインテグレーター テクニカルエキスパート(46歳)
新卒で大手SI企業A社のパートナー企業であるB社に入社。そこでCADと出合い、継続的にスキルを磨いて転職を何度か繰り返し、最終的にA社へのステップアップ転職を決める。

■転職前編 製造業向けCADの進化とともに歩んできた。
理系の難関大学に入学したが、就職は大手企業をあえて避けた。組織の歯車になるのが嫌だったからだ。今から思えば若さゆえの無知だが、小規模な企業ほど自分らしく自分の意思を軸に働けると考えたのである。ただ、業界・職種は決めていた。フォーカスしていたのは、CADを商品として扱う技術系企業である。アルバイトとして電機メーカーで働いたときに、二次元だったがCADの使い方を学び、このソフトウェアプロダクトは面白いなと感じていた。その際に、「自分だったらこんな使い方はしない」とか、さらには「プロダクトとしてこんな作り方をしたいな」といったアイデアや発想をたくさんもっていた。だから、就職活動の方向性は自ずとCADベンダーもしくはCADを取り扱うSIerに絞られたのである。

その結果、新卒で入ったB社は中堅SIerで、CADに力を入れようとしていたことを聞いたので入社した。20年以上前のことで、三次元CADがようやく実用化し始めたころで、大手製造も実証実験的に導入を考えだした時期である。B社では念願かなって三次元CADのプリセールスを担当。三次元CAD導入が未知の顧客ばかりだから、ユーザーに対してのプロモーションをじっくりとやれたし、設計の業務フローに入り込んでコンサルティング的な動きをさせてもらえた。売る側、ユーザー側とも勉強しながらの導入であり、市場価値の高い貴重なスキルを身につけることができた。実際、某外国ベンダーの有名CADの日本におけるファーストユーザーとなった自動車大手での導入プロジェクトに、私はプリセールスとして大きく関与している。

そこから十数年、三次元CADが急速に進化するとともに、転職を2回重ねることになった。立体で作図・設計する基本的な機能に加え、強度解析などのシミュレーションができるようになったり、調達や生産のためのデータを生成できるCAE方面の機能も広がったりした。ハードの進化も三次元CADの発展に貢献し、モデリングなどにかかるスピードも大幅にアップした。

市場をリードする海外CADベンダー各社もしのぎを削り、市場占有率は数ブランドが競い合った。ひとつが新しい機能を発表すれば、追随するほかのブランドがそれを凌駕する機能を発表するという中で、三次元CADはプロダクトとして成熟度を高めたのである。