メロディ・サビを自動推定できる未来型音楽鑑賞を実現
今回のクレイジーエンジニアは音楽情報処理、音楽情報検索の最先端研究で世界に知られる、産業技術総合研究所の後藤真孝氏だ。音楽情報をコンピュータに取り込んで解析、音を認識させる研究に取り組み、すでに「メロディ、ビート、サビなどの自動推定」に世界で初めて成功している。

■サビ部分だけ再生する。曲のビートと映像が同期する
 音楽情報処理や音楽情報検索分野には、今や世界中の研究機関や研究者が参入しています。2000年以降に世界で急増、音楽情報検索に限っても、2004 年以降50人の新しいドクターが生まれています。背景にあるのは、この分野の重要性の増大です。音楽は産業、文化の面で主要なコンテンツですが、音楽を聴くユーザーにとっての鑑賞環境は激変しています。数百万曲を好きに聴く、なんてことはかつてありえなかった。音楽の情報検索や自動分類、推薦に対する潜在需要は非常に大きいものがあります。今後は、すべての音楽がデジタル化され、情報通信技術によって配信、検索、共有、創作、発信されるでしょう。そのための研究が世界中で進んでいるんです。

 そもそも音楽情報処理には、さまざまな技術的な課題、未解決で本質的な課題があります。複数の音が相互に関係し合いながら時間的な構造を形成して内容を伝える。そんな信号を理解する必要がある。いろんな音がまじる状況をどう分析し、どう内容を取り出すか。以前は科学技術が入っていない領域でした。

 私の所属する産業技術総合研究所(産総研)は、この分野で国内外に広く認知された研究拠点となっています。一連の「音楽音響信号」理解に関連した研究を展開。「人間が音楽を聴いてわかることをコンピュータにわからせる」基礎研究をはじめ、研究目的で自由に使える世界で最初の大規模な著作権処理済み音楽データベースなど、研究基盤整備にも取り組んできました。

 現在の研究テーマのひとつは、音楽音響信号理解技術が音楽の聴き方をいかに豊かにできるのかという応用研究、「能動的音楽鑑賞インターフェース」です。例えば音楽再生なら、楽曲構造を瞬時に視覚化する「音楽地図」を使って、サビ部分だけ再生する。それぞれの曲のビートを理解して、ビートに合わせてアニメが踊る。歌詞のテキストと同期させ、歌詞のどの個所からも曲が始められる……。さらには、音楽を加工したり、大量の音楽を検索、閲覧する新しい技術を発想する……。技術の進歩は、音楽を聴く楽しみをさらに大きくする可能性を秘めている。私はそう考えています。

■紙に一生懸命ソースコードを書いていた時代
 人生を大きく変えたのは、小学校6年生のときにコンピュータと出合ったことでした。友人の家で初めてNEC PC-8001に触れたんですが、プログラムで動くというのは、まさに衝撃でした。それこそ画面に名前を出したり、色をつけたりするだけでも楽しかった。

 BASICやZ80機械語でプログラミングしていましたが、PCに触れる時間が限られる私は、まずは紙に一生懸命ソースコードを書いて、それを持っていって実行していました。そんな私を見ていたんでしょう。中学生になるときに父がNEC PC-8801を買ってくれました。これも、人生を変える出来事でした。両親には本当に感謝しています。

 進学した中高一貫校では、物理部に入りました。工作やプラモデル、ハンダ付けなどモノづくりも好きだった私は、多くの刺激的な経験をしました。今も覚えているのは、中3のとき、高校生の先輩が作った設計図をもとに、Z80 CPUを使ったコンピュータ基板を自作したこと。これには、設計した先輩も「動いた!」と驚いて(笑)。

 その一方で、強い興味をもっていたのが音楽です。小4のとき、妹と一緒に親に通わされたピアノ教室は1年ほどでやめてしまったんですが、音を出すことには強い興味がありました。PCでも、ビープ音に始まって、PSG、FM音源、さらに中3のときにはYAMAHAポータトーンでMIDIによる自動演奏で遊んだり。物理部でも、アクリル板と衝撃センサーでドラムを自作したり、A/D変換、D/A変換でデジタルエフェクタを制作したり、文化祭では物理部バンドで自作楽器を使ったライブもやりました。

 そしてもうひとつ、高3から興味をもち始めるようになったのが、脳です。ニューラルネットワークの本などを自分で読み始めて。きっかけは、ホーガンの SF小説『未来の二つの顔』。テーマは人工知能。人間の脳と同じことをするコンピュータにものすごく興味をもった。そこで思ったんです。人間と同じことをやらせるには、人間を知らないといけない、と。

 そして大学の進学先を決めるとき、このキーワードが大きな決め手になります。音響関連とニューラルネットワーク。その両方の研究をしている大学があった。それが早稲田大学でした。もっとも音響の先生は……≫続きはこちら



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