今回の【ドラマの女王】は低視聴率の日テレ『神の雫』を尻目に毎週2ケタ視聴率をキープしている、江口洋介主演のフジテレビ系列『トライアングル』。話題の広末涼子の活躍もさることながら、ムダにいっぱい出てくる“主役級”の俳優たち、初回のフランス、ドラマ中盤の上海ロケと、このご時勢になんともバブリーな制作費をかけているだけあって、見ごたえはあるのだが・・・・。


25年前の1月。雑草の 生い茂る河川敷に、殺された10歳の少女・葛城佐智絵の無惨な遺体が横たわっていた。そばに呆然と立つ少年の手は真っ赤な血に染まっている・・・。
事件は犯人が捕まらないまま時効を迎え、事件当時に刑事に事情を聞かれた同級生の少年たちは、医師からインターポール(国際刑事警察機構)の刑事に転身した郷田亮二(江口洋介)をはじめ、それぞれ出版社や建設会社に勤める大人になっていた。

一方、娘を殺された母(風吹ジュン)と父(大杉漣)は寂しさから、サチという10歳の少女を養女に迎えた。母の養育の元にサチ(広末涼子)は海外でも活躍する画家に成長した。

一応、江口演じる亮二と広末演じるヒロイン・サチの恋愛みたいな描写もあるが、前編通してめまぐるしく展開するサスペンス・ストーリーである。

過去の事件を担当した刑事が北大路欣也で、その息子(亮二の同僚刑事)が稲垣吾郎だったり、亮二の妹が相武紗季だったり、時々ギャグをかますノンキャリアの刑事に『あしたの、喜多善男』の小日向文世だったりと、“もったいない”感じで人気スターがちりばめられている。

そこに宅麻伸だの堺雅人だのがバタバタと殺され、とうとう事件の真相を握る同級生のひとり秋本(佐々木蔵之介)が不穏な動きをとり始めた。もうひとりの同級生、富岡(谷原章介)は“顔にアザのある男”新藤(宅麻伸)を撲殺した罪で自首。サチの兄(堺雅人)の死は、実は亮二を狙った他殺の可能性が・・・・。

と、複雑な相関図に出演者がオール・カメオ出演みたいな状態なので、ずっと見てても何がなんだかよく解らないドラマであるが、「少女殺害」という誰もがドキリとする嫌なキーワードをしつこくもってきた演出は一応成功していて、「道徳的にはアレだけど、“恐くて血生臭いモノ”に惹かれる」という心理をうまく突いている。

こんな内容もわかりにくい嫌な題材のドラマがなぜ高視聴率なのか。
現代には、人付き合いに行き詰る主婦や、会社と家庭の両方で圧縮される男性、塾漬けの子供たちなど、とんでもないストレスにさらされている人が多い。不景気もあいまって実社会ではなかなか解消できない過剰なストレスをみんなが溜め込んでいて、自分より不幸なものや歪んだ世界を覗くことによりその気持ちを落ち着かせている。

あっけなく人が殺され、多くの人間が介在する「無機質な世界」のドラマを見るという、ストレスの解消法。
景色の綺麗なフランスや、アクション映画でおなじみの上海ロケを織り込んだり、多くのキャストを要員する事で、血なまぐさいストーリーを“娯楽作”に見せかけ、「道徳的にはアレ」な気持ちを和らげている。こんな背景はないだろうか。

次週はいよいよ、事件の真相を亮二がサチに告げる重要なお話。めくってもめくっても真実が浮かび上がらない“玉ネギ”みたいな展開に変化は起こるのか。

「ストレス溜まり」が著しい記者は、火曜日が待ち遠しい限りである。

(編集部:クリスタルたまき)
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