2009年02月09日に発生した中国中央テレビ局の大火災。国家テレビ局での事故、しかも死傷者まで出したのだから、普通なら同情が集まって当然だ。しかし、中国のインターネット上では、そうなっていない。逆に、批判、皮肉、揶揄のオンパレードだ。背景にはテレビ局の報道姿勢に対しての不満がある。

オーストラリアの火事報道しても、自分のことにはだんまり

   中国中央テレビの火事は、発火してからすぐ、高さ160メートルもあるビル全体に延焼した。市民の中には9・11事件の再来ではないかと思った人もいるようで、ケイタイから撮った写真などがすぐさまインターネットに掲載された。中央テレビは遠く離れたオーストラリアの火事はしきりに報道したが、自分自身のニュースは鎮火するまでほとんど報道しなかった。ネットには洪水のように現場の写真、動画がアップされたにもかかわらず、中央テレビ系列の十数チャンネルは、どこをひねってもほとんど映像が出てこなかった。中央テレビ局は4台のカメラを現場に設置しており、本来ならもっとも多くの映像を放映できたはずなのに、だ。

   大火事の原因は結局、同局が頼んだ違法の花火のせいだった。中央テレビは10日にお詫びのメッセージを公表したが、それ以上の謝罪、反省の声は聞かれない。

   毎年、春節前の大晦日に放映される中央テレビの紅白歌合戦。今年は見ない、と宣言することは、最近の流行のようなものである。今年は「口ぱく」はさすがになくなったが、その一方で、官僚の腐敗を皮肉ったりする内容はきれいに消えていた。

「天罰」とインターネットに書き込みする人も多い

   ほかにも、市民の不信をかうことがいくつも起きていた。

   インターネット企業百度の検索は、お金をもらっている企業が先に表示される。それだけではなく、百度は牛乳にメラミンをいれた三鹿社から300万元もらって、事件発覚前に暴露記事を抑える、ということまでやってのけた。それを批判したのは、中央テレビ局だった。しかし、今回の春節紅白歌合戦の番組では、4300万元の協賛金をもらい、数時間の番組中、現場にいた百度の経営者の笑顔を繰り返して映した。番組に出ている俳優にも、あえて百度について言及させた。

   地方テレビ局が未来のアイドルを目指す少女を対象に 企画したオーディション番組「スーパーガール」。若者の間で人気が出て、とんでもない高視聴率番組に成長した。率先にそれを批判したのは、中央テレビのタレントたちだった。しかしその後は、自分たちがした批判をきれいに忘れて、それとほぼ同様の番組を中央テレビ局から放映した。

   中国北方地域では、旱魃がますますひどくなっている。中央テレビ局はそんな話題に触れる兆しもない。

   9日の火事を見て、「嗤っていた」(評論家の黄于明氏)というのが市民の姿だ。「テレビ局のビルで、1億元の花火を打ち上げた」などとも揶揄されている。すぐ削除されても、「天罰」とインターネットに書き込みする人も多い。中央テレビ局の火事について、同情する声は中国のインターネットではほとんど聞かれないのだ。

(J-CAST 北京)

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