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阿部勇樹「全力を尽くした証し」

阿部勇樹「全力を尽くした証し」

インタビュー・文●島崎英純
写真●写真●兼子愼一郎、足立雅史

「浦和レッズマガジン2月号(2月12日発売)より」

『浦和レッズマガジン』を愛読していただいているサポーターの皆さんと弊誌編集部で選出する2008年MVP「ウラワ・ドーロ」は阿部勇樹に決まった。平均点は梅崎(6.13点)、田中(6.10点)に次ぐ3位(6.06点)だったが、リーグ戦出場試合数(33試合)はフィールドプレーヤーの中ではナンバーワン。読者による投票ランキングも1位で、総合ポイントは2位の細貝を大きく突き放す結果となった。記念すべき第1回ウラワ・ドーロに輝いた阿部の昨シーズンを振り返る。

 涙に暮れた1年だった。
 昨季、浦和レッズでの2シーズン目を迎えた阿部勇樹は多忙だった。岡田武史監督率いる日本代表に常時招集され、浦和でも主力としてピッチに立ち続けた。その実力からすればふさわしい扱いだが、そのスケジュールは殺人的で、度重なるけがと蓄積された疲労に悩まされ、本来のプレーパフォーマンスに陰りが見られた年だった。それでも阿部は奮闘し、浦和のために身を粉にし続けた。その結果が無冠、監督交代。阿部はひどく落ち込み、最終戦の後には人目をはばからず涙した。それが阿部の2008年シーズンである。

指揮官にとって、思い描くプランを忠実に体現してくれる稀有な存在

 浦和での阿部はディフェンス面における役割の比重が大きい。それは前任のホルガー・オジェック、そしてゲルト・エンゲルス監督の下でも変わらなかった。左ストッパー、リベロなど、バックラインでの仕事はもちろん、本職であると思われる守備的MFでもチームバランスに注視する利発性が指揮官の信頼を得て、一方では、そのユーティリティー性を買われてサイドバックのポジションでもプレーした。
 
 本人はその都度、役割を忠実にこなして歯車であり続けた。しかし、さすがにサイドバックのポジションでは窮屈さを感じ、試合後には自身の役割について懐疑的な意見を述べることもあった。だが、浦和を率いる指揮官には明確な指針がある。それは、「阿部勇樹は絶対に外せない選手」という評価である。
 阿部の特長についてチームメートに聞いてみると、たいてい似たような答えが返ってくる。堀之内聖は、こう言って阿部の特性を称えた。

「阿部ちゃんは、特に何が『すごい!』というところはない。でも、あらゆる要素のレベルは高い。つまりサッカーに必要なスキルが高次元で備わっているということ。これは非常に大きな武器だし、チームを指揮する監督に認められる点だと思う」
 
 阿部は、いわゆる「サッカー脳」が発達している。ピッチ上のあらゆる場面で的確に何を成すべきかを瞬時に判断できる。そして、その判断を卓越したスキルで実行できるのだ。チームを率いる指揮官からすれば、思い描く戦術、プランを忠実に体現してくれる存在として稀有な選手であるといえよう。
 
 例えば前述のサイドバック起用に関して。阿部は試合後に「僕にはドリブルで相手を抜き去るような技術がないから、いかにみんなと連動して、パスでボールを前に運ぶかを考えた」と語っている。サイドバックというポジションの特性においてドリブルスキルは大きなファクターとなるが、阿部はその自己分析によって別の視点で物事を見極めて実行しようとする。その点が彼のサッカー選手としてのセンスと相まってピッチ上で具現化されるのだ。

 また、オジェック前監督は阿部をこう評して称賛したことがある。

「彼はたとえけがをして満身創痍になっても気力が萎えない。何度相手にピッチにたたきつけられても、必ず立ち上がり、ゴールを防ぎ、ゴールを決めてしまう。私はあれほど精神力の強い選手を見たことがない」

 阿部の特長。それは技術、体力によるものではなく、その内面的な部分にある。
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