【A】 私はトヨタの社員寮近くで暮らしているんだけど、会社をリストラ解雇されて、仕事も住居も失った人たちが豊田市から1人、2人......と、日を追うごとに消えているのは実感する。

【C】 以前は寮の空き部屋がなく、突貫の仕切りを設置して、一部屋に数人を収容したこともあったんですけどね。どうせ社員寮は空室だらけなんだから、解雇後もしばらくは、せめて住まいだけでも提供してくれたらいいのに。

【A】 トヨタの不況は、会社や工場にいるよりも、社員寮の付近にあるお店を見たほうがわかりやすいのかもしれない。賑わっていた周辺の定食屋やコンビニ、パチンコ店もいまではすっかり閑古鳥が鳴いて、町はゴーストタウン化、地域住民としては不気味な感じですよ。


●グローバリゼーションが招いた営業赤字の転落


──これまでトヨタで働く非正規労働者のクビ切りの実態を中心に話を進めてきましたが、正社員に対するリストラなどの動きはありますか? 昨年12月に行われた記者会見の席で木下光男副社長は「国内の正社員の雇用に手をつけることは考えていない」と明言しています。

【B】 今のところ、正社員の雇用は守られているようです。トヨタ北海道やトヨタ九州で働く正社員を長期出張という形で、愛知県内の工場などで受け入れ、その結果、派遣社員や期間従業員が切られたりしていますが......。給料もカットということもないですし、冬のボーナスも例年通り支給されましたよ。正社員に対するリストラはこれからでしょう。これまで東京ドームで開催される都市対抗野球にトヨタ野球部が出場する際は、無料バスの利用や名古屋〜東京間の往復新幹線チケットを6000円で購入(通常は2万円程度)できたんだけど、それが来年からは廃止になるようですね。

【A】 工場では最近、保護具の交換を渋るようになっている。保護具は、工場で働く労働者の命を守る大切なもの。従業員の命よりもコスト削減のほうが大事ということなのでしょう(苦笑)。

 また、私が働いている工場では、昨年11月に3度、12月に2度ほど生産ラインをストップすることがありましたが、そのときは一日中みんなで清掃をしていましたよ。そういえば、元町工場の仕事納めは例年通りの12月25日でしたが、レクサスやランドクルーザーなどの高級車を生産するトヨタ国内最大規模の田原工場は同月22日で年内は終了。景気の悪化で高級車の売れ行きが不調なんですが、これは工場にも直接影響を及ぼしています。

【B】 仕事がないので上司から有給休暇を勧められる正社員も少なくありません。私の周りでも年末年始にかけて、3週間余りの休みを取った人がいますからね。

【A】 あと、トヨタでは家族や親戚、知人などに自動車購入の斡旋をすると、報奨金が支給されるのですが、これまで1台あたり3000円でした。それが、昨年12月から2万円に跳ね上がった。会社としては1台でも多く車を売りたいということでしょうが、あまりに短絡的すぎるというか......。

──一部のマスコミ報道によると、トヨタでは今年春に渡辺捷昭社長が退任し、創業一族の豊田章男副社長が昇格すると伝えられています。この人事が実現すると、豊田家から社長が誕生するのは実に14年ぶりとなりますが、創業一族への「大政奉還」に対する現場の反応はいかがでしょうか?

【B】 豊田章男副社長は、以前からずっと次の社長候補と言われ続けてきたからね。経営的には非常に厳しい時期に就任することになるけど、人減らしのリストラが功を奏して、おそらく来年は、今回のような営業赤字になることもないはず。会社がイケイケドンドンの時期に就任して、経営を傾かせてしまったと批判を浴びる心配もない。タイミング的には良い時期じゃないかな。でも、今の時代、「大政奉還」によって会社が一枚岩になるとは考えられない。また、トヨタでは1月より財務部を復活させましたが、これは「09年も本業の自動車販売では苦戦するだろう」という経営陣の危機感の表れ。"冬の時期"に抜け目なくしっかりと資金管理を強化する戦略は、トヨタらしいですけどね。