それに僕もそうだけど、無駄を排除する「かんばん方式」が身に染みているトヨタ社員は、良い意味でも悪い意味でも用心深く、貧乏性(苦笑)。だから、経営陣たちも今回の営業赤字1500億円は相当のショックだったんじゃないのかな。それで余裕がなくなって、とにかく来期の赤字帳消しのことしか頭にないから、中長期的な判断ができなくなって、安易なリストラ策に走っているようにも見える。

【D】 ここでトヨタが非正規労働者の支援・サポートに乗り出せば、世論的には「さすが"世界のTOYOTA"だけのことはある。それに引き換えホンダ、日産は人でなし」ということになるのに、ホントにもったいない(苦笑)。


●起こるべくして怒った秋葉原通り魔殺傷事件


──ところでトヨタといえば、金にものを言わせた広告戦略が有名ですが、広告出稿料は、実に年間100億円以上。昨年11月には奥田氏が(自ら座長を務める有識者会議「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の席で)「厚労省叩きは異常な話。マスコミに報復してやろうか。スポンサーを降りるとか」と発言をして、大きな波紋を呼びました。「マスコミのトヨタタブー」というのはいまだ根強いでしょうが、最近では、派遣や期間従業員切りなどが大々的に取り上げられるなど、トヨタをめぐる報道に変化が訪れているように思います。現場の方々は、これらをどのように見ていますか?

【A】 確かに最近は、業績不振などネガティブなニュースがたくさん報道されています。しかし、経営陣はそれらをあえて容認しているところもあると思う。というのも、「業績不振による派遣切り」という報道が出ると、世間は「そこまでトヨタの経営は厳しいのか」と取ってしまう。結果、世間の同情を買うことにつながり、リストラや解雇の容認を助長することになってしまう。

【C】 しかし、本当に危険なのはリストラ後ですよ。これからさらに失業者が増え、犯罪や自殺者も増えるはずです。私の場合は、たまたま友人のところに居候することができたけど、会社に解雇されて仕事も住まいも失った人は少なくありません。

【D】 路頭に迷っているのは日本人だけではない。これまでトヨタ子会社や系列会社ではブラジル人や中国人、ベトナム人など、たくさんの外国人労働者を受け入れてきた。彼らの多くは、母国のブローカーを通じて来日し、工場では実習生という名目で迎え入れられるため、時給は数百円。派遣社員よりもずっとひどい待遇です。私が知っている人の中には、こうした厳しい状況の中でも、母国にいる家族を養うために仕送りを続けている人も少なくありませんでした。したがって、当然彼らの手元には貯金がない。会社を解雇されて、「もう日本には用はない、でも帰国できない......」という外国人労働者は本当に多い。そんな彼らが犯罪に手を染める可能性は、極めて高いと思います。

【C】 昨年6月に起こった秋葉原通り魔殺傷事件の加藤智大容疑者が、トヨタ系列会社・関東自動車工業の派遣社員として働いていたのは有名な話。彼の犯行動機のひとつは、"派遣社員として働くことの不安"というものでした。彼の凶行は、決して許されるものではありません。しかし、非正規労働者として働いていた者からすれば、彼がどれほど自分自身の将来を悲観していたのかは想像に難くありません。今後も企業が非正規労働者のクビ切りを続ければ、第二、第三の秋葉原通り魔事件も続いてしまう。

──こうした"トヨタ・ショック"は、地元行政にも飛び火しているようですね。トヨタ本社がある豊田市は、これまで同社が納める莫大な税金のおかげで日本一潤っている超優良な地方自治体といわれていました。実際、08年度の法人市民税の収入は約440億円でしたが、それが今年度は9割減になる見通しです。