【A】 トヨタ側が派遣社員に異動を強いるのは別の理由もあります。労働者派遣法(第40条の5)において、「受け入れ先の会社は、3年間にわたって同一の場所・業務に就いた派遣社員に対して、直接雇用を申し込まなければならない」(3年ルール)とあります。しかし、その間に異動があれば適用外となるんです。つまりトヨタからすれば、派遣会社を通じて派遣社員に異動を命じることで、自分たちの都合に合わせて人材を思うがままに使えるだけでなく、人件費のコストも抑えられるというカラクリです。

【D】 とは言っても結局のところ、派遣社員を選んだのは自分自身の意思によるもの。だから「派遣社員になった本人の自己責任」と言われたら、それまでなのですが......。


●派遣、期間工切りは経団連から要請された?


【C】 しかし、それにしてもトヨタの非正規社員に対する待遇はひどすぎる。こちらにしたって、それ以外に選択肢がなかった人もいるだろうし、全員が好きで非正規労働者の道を選んだわけではありません。

 ここで、本来なら弱い立場の非正規労働者を守るために労働組合が立ち上がるべきなのでしょうが、トヨタ最大規模を誇る「トヨタ自動車労働組合」は会社の傀儡組合でしかありません。なんたって、同組合は03〜05年の3年間、経営陣に対してベースアップを要求しなかったほど。当時は会社の業績も右肩上がりで好調でした。それなのに、労組がベースアップを要求しないのは前代未聞。労働者のほうを向いていない、何よりの証拠ですよ。06年に新たに結成された「全トヨタ労働組合」は、地道な草の根運動を展開するなど、非正規労働者の支援のためにも頑張っているようだけど、会社から組合活動の妨害を受けることもしばしばあるみたいですね。

【A】 無借金経営をモットーにする同社は、"トヨタ銀行"と称されるほどで、約14兆円の内部留保を持つなど、財務体質には定評があります。某幹部も「うちはトヨタ全従業員が10年間遊んで暮らせる金がある」と豪語したとか。私の持論としては、会社はその潤沢な資金の一部を使って、非正規労働者を救済すべきだと考えます。それは、近い将来の会社の利益にもつながるのではないでしょうか?

【B】 まったくAさんの言う通りだと思いますね。このまま会社が非正規労働者のクビ切りを続けると、未来を担う若い労働者への技術継承や生産体制の面において、大きなマイナスにもなりかねません。トヨタの"ものづくり"が大きく揺らぐ恐れもあるでしょう。厳しい今だからこそ、非正規労働者を守る。そうすれば、企業価値はもちろん、社会的な評価もさらに高めることができるはず。ここ数年、トヨタはエコ活動や環境問題に注力しているけど、その前にもっと果たすべき大事な責任があるだろうと。これまで会社のために汗水流して一生懸命働いてきた労働者たちをサポートしてやれ! と、経営陣には言ってやりたいですね。

【A】 ひと昔前までは閉鎖的な企業風土から、"三河モンロー主義"と揶揄されることもありました。しかし、現在は"世界のTOYOTA"で、日本経済の象徴と言っても過言ではありません。そんな同社が先頭に立って、非正規労働者のクビ切りを行うのは、「ほかの国内企業も後に続け」と言っているようなもの。失業率の上昇に伴い、景気はさらに悪化していき、車も売れなくなる。人減らしの経営戦略は、トヨタにとっても悪循環を招くだけだと思います。

【B】 ただ、非正規労働者のクビ切りは、日本経済団体連合会(以下、経団連)の要請も大きいみたいですね。Aさんが先ほど指摘した通り、経団連に加盟している企業としては、「トヨタがやってくれれば、うちもやりやすい」という図式がある。周知の通り経団連の初代会長を務めたのは、同社取締役相談役の奥田(碩)さん。現在も代表取締役会長の張(富士夫)さんが副会長の役職にいる。また、これまでトヨタは、経団連を通して政府に雇用形態の規制緩和等の働きかけを行うなど、いろいろと利用してきた。だから、経団連の要請はむげには断れないはず。