2009年3月期の連結決算で最終損益が480億円の赤字になる見通しを発表したばかりの新生銀行が推進する「実りの円定期預金」が5か月半で1兆円を超えた。大ヒットの秘密は金利。1年で年1.1%、5年だと年1.7%。大手銀行の数倍という「高金利」だ。なぜこんなことができるのか、大丈夫なのか。

大手銀行にはめずらしい「高金利」定期

   新生銀行は2008年8月に「実りの円定期預金」キャンペーンをスタート。当初09年1月末までの募集期間を、好評だったので2月10日まで延ばしている。この間、世界的な景気悪化で金融市場は大混乱。08年10月には日本銀行が政策金利を引き下げるなど、日米欧で金利は下降局面にある。そうした中にあっても、同行の「高金利」はいまも変わらない。

   たとえば、100万円を1年間(年1.1%)預けると税引き後の利息は約8800円、5年間(年1.70%)では6万8000円になるのだ。

   新生銀行のホームページでは、メガバンクやインターネット銀行との金利比較を掲載。メガバンクの円定期は1年もので年0.25%、5年もので年0.48%〜0.55%程度。ネット銀行でも1年もので年0.48%〜1.20%、5年もので年0.57%〜年1.40%程度と、どれも新生銀行を下回る。

   年1%を超える金利をつける円定期は、日本振興銀行やオリックス信託銀行などがあるが、キャンペーンとはいえ大手銀行ではめずらしい。

   高金利の円定期に資金が集まる背景には、世界的な金融危機で株式や投資信託などの投資商品が軒並み振るわず損失を出したことがある。投資に懲りて、「元本保証」のある円預金にシフト。しかもペイオフ制度の認知度が高まったことで、1000万円までなら、どんな金融機関でも安心して預金できることがわかっているからだ。

「資金繰りの不安もない」と断言

   高金利をつけるのは、それだけ個人預金がほしいからだ。ある大手銀行の幹部は、「個人預金を集めるのは、法人預金がはがれていくからだ」と指摘する。業績悪化によって、資金繰りのために手元の預金を取り崩している企業は少なくない。そのため、新生銀行のように法人預金のウエートが高い銀行は手元流動性が厳しくなる。

   また、新生銀行が債券による資金調達に力を入れてきたこともある。株価からもわかるように、同行はマーケットの評価が低い。現在、債券市場は急速にしぼんできており、債券での資金調達はほとんど無理な状況だ。とはいえ、発行済み債券の返済時期はやってくる。預金はいわば、その備えとして積んでおく必要があるわけだ。

   新生銀行に「どうして年1%を超える金利が付けられるのか」聞いたところ、「お客様のニーズに最大限応えているからできること」(広報部)という返答だった。

   07年12月末の預金全体の調達コストは0.83%、08年12月末が0.84%と、「前年とほとんど差がないし、手元流動性も1兆円ある」と説明。「資金繰りの不安もない」(広報部)と断言する。

   しかし、日本格付研究所(JCR)が2月3日、新生銀行の格付けを「A」から「A−」に格下げするなど、周囲は厳しい目を向けている。

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