――デビュー時から変わらずに、歪んだギターと相性のいいロックな歌声だなと感じているのですが、今回のシングル「月華-tsukihana-」に収録される3曲はいずれもギターロックで、特に2曲目の「鏡の国のアリア」はかなり攻撃的な音が鳴っていますよね。アレンジを担当している根岸孝旨さんには何かリクエストされたのですか?

北出:ずっとギターの音にはすごくこだわりがあるんです。「この人のギターじゃなきゃ」みたいな所があって、全部西川さんというギタリストがやってるんですけど。やっぱりその人の音がずっと好きで、どのギターを聴いても超えられなくて。だからといって、ギタリストと一緒に音楽を作ればいいかというと、そうでは無くて。プロデューサーのネギはベーシストなんですけど、逆にベーシストが操ってくれた方が、ヴォーカルもギターも逆に自由に出来て。西川さんと二人で楽曲を作っても、二人とも暴走してしまうので、誰も止める人がいなくなって。かといって、二人でそれを押さえようとすると、押さえつけちゃったみたいに、つまんなくなっちゃったりして。

二人で暴走できる時は二人でやってもすごくいいんですけど、それより二人を紐で繋いで裏で操作しながら、私達は紐に繋がれながら自由なことをやるみたいな状況が必要で、そういうことをやれるプロデューサーをずっと探していて。西川さんが今ネギと一緒にバンドを組んでるんですけど、一緒に対バンして、私のライブを観て「やろうよ」ということになって、「こういう感じのことがやりたい」みたいな話をして。実は「鏡の国のアリア」はすごく昔からあった曲なんだけど、「もう激しくて、重くて、暗いから無理!」って言われてたんですけど(笑)。「多分ネギだったら一緒にやってくれると思うけど」「じゃあ、やってみようか」ということで2曲目に入ったりして。

――ご自身で歌詞を書かれてますが、作詞は割とスラスラと出来ますか?曲によって違うかもしれませんが。

北出:いつもレコーディングのギリギリまで書いちゃうんですけど、「こっちの言葉の方がいいんじゃないか?」とか、もう切りが無いんですよね。でも最終的に、メロディがあって、アレンジがあって、歌があったら絞り込まれていくように、絶対に一つの言葉にしかならないんですけど、降りてくるまでが大変で。頭で考えて無理矢理書きたくないから、降りてくるまで待つ時間が私にはすごく必要で。でも、何をして待ってればいいのか?みたいな。そういう時は本を読んだり、映画を観たりするんですけど。だから、スラスラではないと思います。コレと思ったら早いですけど、自分でも思えるかどうかも分からないので、すっごく不安ですね。

もう頭で考えて書くのが嫌になっちゃったんですよね、もっと自然発生的なものがいいというか。もちろん何も考えてないわけじゃないですけど、考えて形式的に書くのが嫌で。人間の能力は全部使い切れてないって言うけど、自分が書いたとは思えない言葉が出て来た瞬間って、ある意味霊的な気持ちというか。普段使い切れてない能力があるとしたら、出てくるまで待とう、みたいな感じですね。

――結構スリリングと言うか、ひらめかない可能性もあるわけですよね?

北出:でも、ひらめかせますね。どうすればいいか、ひらめかせるための方法は自分の中で何となくあるんですよ。基本的に私は追い込まれるといいんですけど、すごくもう極限状態で、「駄目だ、私は書けない、何もやれない!」となった時にふと「それかも知れない?」と思える時があって(笑)。追い込まれると、不思議な力が発揮されることが多いので。あとは、すごくいいサウンドの中で書いてるといいので。アレンジとかの段階で、自分がトリップ出来るような、気持ちいいと思えるようなサウンドにしておくと、サウンドから引っ張られて歌詞が生まれることもあります。

――イメージを膨らませやすいような環境作りというか、家やレコーディングスタジオとかでいつもやっていることは?

北出:お家にはもう本当に自分に必要で、好きだと思ってるものしか置いてないですし。基本的に電化製品がちょっと苦手な傾向がありまして。でも最低限、パソコンと冷蔵庫と洗濯機ぐらいは、まぁエアコンとかもありますけどね(笑)。暑いのが嫌いで、もっとフリフリしたお洋服を着たいのに、夏とか暑くて着られないのがすごく嫌で。「なんでこうなっちゃうんだろう?もう絶対に機械のせいだ!」とか思っちゃうんですよね(笑)。