「婦人科がん」も医師不足 悪性腫瘍の手術1〜2か月待ち
2009年02月02日19時32分 / 提供:J-CASTニュース
大学病院や地域の中核病院に女性特有のがんである「子宮がん」と「卵巣がん」の患者の受診が急増している。このため、産婦人科ではお産に加えて「婦人科がん」も医師不足に陥り、地域によっては悪性腫瘍にもかかわらず、手術が1〜2か月待ちという状況になっている。
昼間はがんの手術、夜はお産
日本産科婦人科学会・第5回拡大産婦人科医療提供体制検討委員会が2009年1月25日、都内で行われ、筑波大学の吉川裕之教授が「地域の婦人科腫瘍診療が抱える問題点」について発表した。
調査は日産婦に登録されている約220病院について、子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)、卵巣がんの患者数を04年と07年を比較した。このうち年間症例数100以上の病院で、患者が1.25倍以上に増えたのは、17施設に上った。中でも増加が著しかったのは三重大(2.26倍)、千葉県がんセンター(2.02倍)や東京医科大(1.95倍)、大阪大(1.71倍)、群馬大(1.62倍)、東海大(1.62倍)、千葉大(1.61倍)と続く。
吉川教授は、
「大学病院の産婦人科で行われている医療は、周産期医療(妊娠からお産まで)が4割、婦人科がん治療が6割で、婦人科治療にかかる割合の方が大きいです。昼間はがんの手術をして、そのまま夜にお産に入るというケースもある。現場からはお産を扱うのを止めて、がん治療に徹したいという声も上がっています」
と話す。
現状では産婦人科医のうち8割が産科と婦人科の両方に携わっている。
地域によっても事情が異なる。吉川教授が日産婦の地方部会に行ったアンケートで、こんな意見が上がった。
「悪性疾患にも関わらず手術待ちの期間が1か月以上、特に混み合っている時期には2か月半前後になることもある」(栃木県地方部会)
宮城県「崩壊寸前」茨城県「中堅機関はがん治療中止」
宮城県では「崩壊寸前」という声も上がっている。茨城県は、「県内中堅の医療機関の産婦人科で減員され、分娩取り扱い中止とともに婦人科がん治療の多くを中止した。かなりの数の重症症例が筑波大学などに紹介されている」。千葉県は、「婦人科腫瘍専門医はすべての婦人科に存在しているわけではなく、県内においても地域格差があるのが現状である」。富山県は「(地域での分娩施設が減少したことで)分娩取り扱い数の増加が、婦人科診療を困難にしている」。他にも群馬、三重、熊本、鹿児島などで問題となっている。一方で、山口県は「大きい問題があるとは認識していません」。愛媛県は「対応できているものと思われます」と答えており、地域によって差が出ている。
その理由について、吉川教授はこう説明する。
「お産の場合は自宅近くで生みたいという人が多く、自宅から20―30キロ圏内の病院を選ぶ。一方、がんの場合は自宅から100キロ離れていても、いい病院があれば遠くに行く。そのため一部の病院でのみ患者が増えているが、全体では増えていない所もあり、ばらつきが出ています。婦人科医不足が大騒ぎになっていない理由でもあります」
同調査で女性がんの患者が2.26倍に増えた三重大学医学部付属病院。総務課の担当者は、
「(産婦人科の医師に聞いたところ)近隣の病院で放射線治療を行わなくなり、大学病院に集中しています。また、患者の『大病院志向』も高まっており、産婦人科の患者が増えています。当院の場合は産婦人科医よりも麻酔医が不足しており、手術が予定通りに運ばず、患者さんに待っていただくという事態も出てきています」
と話す。
産科医不足が叫ばれ、とかく周産期医療の改善が指摘されているが、それだけではだめで、産婦人科医療全体を変えていく必要がありそうだ。
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