ネットの市民言論が危ない! グロービート裁判の行方(1)
2009年01月31日06時52分 / 提供:PJ
都内の会社員・橋爪研吾被告が自身のサイト上で、ラーメンチェーン店「花月」などを運営する株式会社グロービートジャパンと、擬似行軍演習や朝鮮人差別発言を繰り返す右翼カルト集団「日本平和神軍」との関係を記述していたことが名誉毀損罪に問われていた裁判で、東京高等裁判所は1月30日、一審の無罪判決を破棄し、橋爪被告に求刑通り罰金30万円の有罪判決を言い渡した。
この事件では2008年2月に東京地方裁判所が、インターネット個人利用者の表現による名誉毀損について新基準を示す形で無罪判決を言い渡していた。しかし、東京高裁の長岡哲次裁判長は、一審判決を「刑法の適用を誤った」として全否定。検察側の求刑通り30万円の罰金とした。橋爪被告は、判決直後に上告の意向を表明した。
橋爪被告は、1999年頃から自身の個人サイト「平和神軍観察会・逝き逝きて平和神軍(リンク:http://es.geocities.com/dempauyo/)」において、黒須英治氏率いる「日本平和神軍」を批判する文章を掲載。その中で、黒須氏が会長(当時)であったグロービートジャパン社と平和神軍の関係に言及していた。これに対してグロービート社は、橋爪氏に3150万円の損害賠償を請求して提訴。さらに刑事告訴を行い、民事・刑事で裁判が行われていた。
民事裁判では、橋爪氏に計77万円の賠償を命じた05年5月の東京高裁判決が確定している。刑事裁判では、東京地裁が08年に「(橋爪被告が)インターネットの個人利用者として要求される水準の事実確認を行っていた」ことなどを理由として、無罪判決を出したが、今回の控訴審判決で逆転有罪となった。
名誉毀損に関しては「違法性阻却要件」と呼ばれる基準がある。(1)公共の利害にかかわる内容であり、(2)公益目的によってなされたものであり、(3)内容が真実であるかまたは真実と信じるに足る相当の理由が合った場合には、たとえ相手の名誉を毀損していても違法性はない、というものだ。一審判決は、橋爪被告の表現に(1)と(2)を認めた上で、(3)について、従来は想定されていなかったネットの個人利用者特有の事情を考慮した新基準を打ち立てて、橋爪氏を無罪としていた。
「二審での検察側の求刑は、公共性、公益性、真実性のすべてを否定した上でのもの。しかし東京高裁は、公共性と公益性を認めておきながら量刑については求刑通りとした。極めて重い刑だと言える。一審は、平和神軍側が橋爪氏に対して大々的に反論し、さらには脅迫めいたことまでしていたという事情も検証した上での判決だったが、二審は『(ネット上での名誉毀損被害者が)誰でも反論できるわけではない』という一般論で一審の判断を否定した。それは一般論としては正しいが、この事件の個別事情を無視している。一般的予防効果を狙った判決としか思えない。これでは、一般市民の立場での企業批判などができなくなる。ネット上の表現に壊滅的効果をもたらすのではないかと危惧する」と橋爪被告の弁護人・紀藤正樹弁護士は語った。
橋爪被告本人は、法廷内で判決の主文を聞いた瞬間から、落胆を隠せない。「『型どおり自動的に有罪にされた』という印象。一審は、こちらが出した膨大な証拠を吟味してくれて、グロービートと平和神軍との間に一定の関係があることも認めてくれた。しかし高裁は、証拠を一切見ていないのではないか。これで有罪にされてしまうなら、個人の表現などできなくなってしまう」(橋爪被告)。
一審は22回の公判を積み重ねての判決だったが、今回の高裁の公判はたった1回。同じく弁護人の荻上守生弁護士は、この判決を「時代に逆行する」と非難。
「これから裁判員制度が始まり、生の感覚で判決を出すことが求められる時代。高裁が書面審査だけで一審判決を切り捨てるようでは、(裁判員の参加が一審のみである)裁判員制度に暗雲がたちこめる」(荻上弁護士)。
記者はグロービート社にコメントを求めたが、「担当者不在のため、こちらから折り返す」としたまま、1月30日夜半時点で連絡はない。【つづく】
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この事件では2008年2月に東京地方裁判所が、インターネット個人利用者の表現による名誉毀損について新基準を示す形で無罪判決を言い渡していた。しかし、東京高裁の長岡哲次裁判長は、一審判決を「刑法の適用を誤った」として全否定。検察側の求刑通り30万円の罰金とした。橋爪被告は、判決直後に上告の意向を表明した。
橋爪被告は、1999年頃から自身の個人サイト「平和神軍観察会・逝き逝きて平和神軍(リンク:http://es.geocities.com/dempauyo/)」において、黒須英治氏率いる「日本平和神軍」を批判する文章を掲載。その中で、黒須氏が会長(当時)であったグロービートジャパン社と平和神軍の関係に言及していた。これに対してグロービート社は、橋爪氏に3150万円の損害賠償を請求して提訴。さらに刑事告訴を行い、民事・刑事で裁判が行われていた。
民事裁判では、橋爪氏に計77万円の賠償を命じた05年5月の東京高裁判決が確定している。刑事裁判では、東京地裁が08年に「(橋爪被告が)インターネットの個人利用者として要求される水準の事実確認を行っていた」ことなどを理由として、無罪判決を出したが、今回の控訴審判決で逆転有罪となった。
名誉毀損に関しては「違法性阻却要件」と呼ばれる基準がある。(1)公共の利害にかかわる内容であり、(2)公益目的によってなされたものであり、(3)内容が真実であるかまたは真実と信じるに足る相当の理由が合った場合には、たとえ相手の名誉を毀損していても違法性はない、というものだ。一審判決は、橋爪被告の表現に(1)と(2)を認めた上で、(3)について、従来は想定されていなかったネットの個人利用者特有の事情を考慮した新基準を打ち立てて、橋爪氏を無罪としていた。
「二審での検察側の求刑は、公共性、公益性、真実性のすべてを否定した上でのもの。しかし東京高裁は、公共性と公益性を認めておきながら量刑については求刑通りとした。極めて重い刑だと言える。一審は、平和神軍側が橋爪氏に対して大々的に反論し、さらには脅迫めいたことまでしていたという事情も検証した上での判決だったが、二審は『(ネット上での名誉毀損被害者が)誰でも反論できるわけではない』という一般論で一審の判断を否定した。それは一般論としては正しいが、この事件の個別事情を無視している。一般的予防効果を狙った判決としか思えない。これでは、一般市民の立場での企業批判などができなくなる。ネット上の表現に壊滅的効果をもたらすのではないかと危惧する」と橋爪被告の弁護人・紀藤正樹弁護士は語った。
橋爪被告本人は、法廷内で判決の主文を聞いた瞬間から、落胆を隠せない。「『型どおり自動的に有罪にされた』という印象。一審は、こちらが出した膨大な証拠を吟味してくれて、グロービートと平和神軍との間に一定の関係があることも認めてくれた。しかし高裁は、証拠を一切見ていないのではないか。これで有罪にされてしまうなら、個人の表現などできなくなってしまう」(橋爪被告)。
一審は22回の公判を積み重ねての判決だったが、今回の高裁の公判はたった1回。同じく弁護人の荻上守生弁護士は、この判決を「時代に逆行する」と非難。
「これから裁判員制度が始まり、生の感覚で判決を出すことが求められる時代。高裁が書面審査だけで一審判決を切り捨てるようでは、(裁判員の参加が一審のみである)裁判員制度に暗雲がたちこめる」(荻上弁護士)。
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パブリック・ジャーナリスト 藤倉 善郎
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