イスラエルのガザ侵攻の背景にある政権闘争
2009年01月13日12時06分 / 提供:PJ
イスラエルのガザでの軍事作戦に歯止めがかからない。昨年末の12月27日の大規模空爆以来、早くも半月余である。年が明けて3日夜からは地上軍も投入され、ハマスとの戦闘は激しさを増すばかりだ。中東の衛星放送アル・ジャジーラによれば、10日時点でパレスチナ人の死者は821人、負傷者は3300人余(イスラエル側は軍人13人)という。しかもその中には、多数の民間人が含まれているらしい。これはもう、虐殺と言っていいのではないか。
それに対する西側諸国、特にアメリカの動きは何とも鈍い。8日に、国連安保理が停戦要求を決議したが、安保理15カ国中、賛成が14票、アメリカのみ棄権であった。これは、事実上イスラエルの軍事行動を容認しているとされても仕方がない。ユダヤ系米国人の影響力があるのだろうが、よく言われる、アメリカの中東政策のダブル・スタンダードだ。
国際的な非難にもかかわらず、イスラエル国内では、この作戦を圧倒的に支持している。9日付のイスラエル紙マーリブによれば、ハマスに対する軍事作戦を、ユダヤ人市民の91.4%が賛成しており、反対はわずか3.8%だという。(時事通信社)
イスラエルは、安保理の決議を拒否して戦闘を継続している。これは国際社会に対する挑戦にも思えるが、この強硬姿勢の背景にあるのが、2月10日に予定されているイスラエルの総選挙だ。この点について、ポイントを簡単に整理してみたい
イスラエルは基本的に、右派のリクード党と、左派の労働党の二大政党制である。現大統領のシモン・ペレスも労働党出身である。
リクードは、ネタニヤフの許(もと)で1996年に政権を獲(と)る。ネタニヤフはパレスチナに対する強硬姿勢で一定の支持を得るが、汚職事件がきっかけで一時政界から身を引いた。リクード党首には、軍人出身のシャロンが就いた。その後、労働党のバラック政権を経て、再びリクードが政権を握り、2001年にシャロンが首相となった。
ところが、シャロンは強硬政策を一変させ、2005年8月のガザ撤退を行う。これを主導したのが、側近のオルメルトであった。ネタニヤフは抗議のため財務相を辞任し、後任にオルメルトが就く。この事件をきっかけに、リクード党内で路線対立が起こり、中道政策を掲げるシャロン首相とオルメルトらが、2005年11月に新政党カディマを創設したのだ。
ところがその矢先、2006年1月にシャロンが脳卒中で倒れた。オルメルトが首相代理となり、同年5月の総選挙を経て正式に首相となった。来年の総選挙はこれ以来のものとなり、創設間もないカディマにとっては正念場だ。
オルメルト政権には、2006年7月のレバノン侵攻失敗の悪夢がある。これはヒズボラに対する軍事作戦であるが、100名を超える死者を出しながら、作戦目的を達しないまま撤退せざるを得なかった。しかも、国連軍への施設への誤爆を繰り返し国連軍に死者が出たことや、今回同様、民間人特に子供の犠牲者が多数に上ったことで、国際的な大非難を浴びた。イスラエル国内でも、国会の調査委員会などが、オルメルト政権の責任を厳しく問うた。この結果、政権の威信は失墜した。
さらにその後、オルメルト首相は、エルサレム市長時代の汚職を摘発されて窮地に陥り、カディマ党首を辞任している。(現党首はツィッピー・リヴニ)つまり事実上、今度の総選挙までの選挙管理内閣なのである。
このような錯綜(さくそう)する国内情勢と世論の強い支持を考えれば、イスラエルが安易な停戦に応じる状況でないのは明らかだ。いや、もう少し突っ込んで推理するなら、なぜ政権末期のこの時期に、あえてオルメルトがこのような大規模な軍事作戦を行ったのか?偶発的な事件でないなら、理由は明らかだ。宿敵ネタニヤフ率いる強硬派のリクードに対抗し、総選挙の勝利を目指すためとしか考えられない。
現在、エジプトが停戦に向けて、仲介の努力をしているが、容易には決着しないだろう。総選挙前のタイミングで停戦に応じるとすれば、ハマスの無条件降伏以外にないだろうが、さすがにそれは困難なのではないか。
現実的には、死に体のネタニヤフ政権には、それだけの政治的決断をする能力はなく、総選挙の結果を待って、新政権が停戦交渉を開始することになるのではないだろうか。それまでにいったいどれだけ死者の数が増えるのか、想像するだに恐ろしいことだ。
麻生首相よ、漢字などいくら読み間違えてもいいから、こういう時に日本として何ができるか、真剣に考えて実行してくれ!【了】
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それに対する西側諸国、特にアメリカの動きは何とも鈍い。8日に、国連安保理が停戦要求を決議したが、安保理15カ国中、賛成が14票、アメリカのみ棄権であった。これは、事実上イスラエルの軍事行動を容認しているとされても仕方がない。ユダヤ系米国人の影響力があるのだろうが、よく言われる、アメリカの中東政策のダブル・スタンダードだ。
国際的な非難にもかかわらず、イスラエル国内では、この作戦を圧倒的に支持している。9日付のイスラエル紙マーリブによれば、ハマスに対する軍事作戦を、ユダヤ人市民の91.4%が賛成しており、反対はわずか3.8%だという。(時事通信社)
イスラエルは、安保理の決議を拒否して戦闘を継続している。これは国際社会に対する挑戦にも思えるが、この強硬姿勢の背景にあるのが、2月10日に予定されているイスラエルの総選挙だ。この点について、ポイントを簡単に整理してみたい
イスラエルは基本的に、右派のリクード党と、左派の労働党の二大政党制である。現大統領のシモン・ペレスも労働党出身である。
リクードは、ネタニヤフの許(もと)で1996年に政権を獲(と)る。ネタニヤフはパレスチナに対する強硬姿勢で一定の支持を得るが、汚職事件がきっかけで一時政界から身を引いた。リクード党首には、軍人出身のシャロンが就いた。その後、労働党のバラック政権を経て、再びリクードが政権を握り、2001年にシャロンが首相となった。
ところが、シャロンは強硬政策を一変させ、2005年8月のガザ撤退を行う。これを主導したのが、側近のオルメルトであった。ネタニヤフは抗議のため財務相を辞任し、後任にオルメルトが就く。この事件をきっかけに、リクード党内で路線対立が起こり、中道政策を掲げるシャロン首相とオルメルトらが、2005年11月に新政党カディマを創設したのだ。
ところがその矢先、2006年1月にシャロンが脳卒中で倒れた。オルメルトが首相代理となり、同年5月の総選挙を経て正式に首相となった。来年の総選挙はこれ以来のものとなり、創設間もないカディマにとっては正念場だ。
オルメルト政権には、2006年7月のレバノン侵攻失敗の悪夢がある。これはヒズボラに対する軍事作戦であるが、100名を超える死者を出しながら、作戦目的を達しないまま撤退せざるを得なかった。しかも、国連軍への施設への誤爆を繰り返し国連軍に死者が出たことや、今回同様、民間人特に子供の犠牲者が多数に上ったことで、国際的な大非難を浴びた。イスラエル国内でも、国会の調査委員会などが、オルメルト政権の責任を厳しく問うた。この結果、政権の威信は失墜した。
さらにその後、オルメルト首相は、エルサレム市長時代の汚職を摘発されて窮地に陥り、カディマ党首を辞任している。(現党首はツィッピー・リヴニ)つまり事実上、今度の総選挙までの選挙管理内閣なのである。
このような錯綜(さくそう)する国内情勢と世論の強い支持を考えれば、イスラエルが安易な停戦に応じる状況でないのは明らかだ。いや、もう少し突っ込んで推理するなら、なぜ政権末期のこの時期に、あえてオルメルトがこのような大規模な軍事作戦を行ったのか?偶発的な事件でないなら、理由は明らかだ。宿敵ネタニヤフ率いる強硬派のリクードに対抗し、総選挙の勝利を目指すためとしか考えられない。
現在、エジプトが停戦に向けて、仲介の努力をしているが、容易には決着しないだろう。総選挙前のタイミングで停戦に応じるとすれば、ハマスの無条件降伏以外にないだろうが、さすがにそれは困難なのではないか。
現実的には、死に体のネタニヤフ政権には、それだけの政治的決断をする能力はなく、総選挙の結果を待って、新政権が停戦交渉を開始することになるのではないだろうか。それまでにいったいどれだけ死者の数が増えるのか、想像するだに恐ろしいことだ。
麻生首相よ、漢字などいくら読み間違えてもいいから、こういう時に日本として何ができるか、真剣に考えて実行してくれ!【了】
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パブリック・ジャーナリスト 宮下 隆二
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