製造業を中心とする転職市場で、機械・機構設計者のニーズが高まっている。自動車業界を中心として、業界・業種を超えた転職事例も増えてきた。単に売り手市場なのか、それとも機械技術者特有の理由や背景があるのか。大手製造4社をリサーチした。

■大手製造業は、どんな技術や経験を期待しているのか?
 リクルートエージェント高原氏によれば、機械・機構設計者の採用ニーズは2006年以降、この10年間になかったというぐらい、きわめて高い水準を維持しているそうだ。中には町の自動車整備工として働いていた人が、クルマづくりへの熱い思いを語ることで、大手完成車メーカーの開発者として採用された例もあるらしい。だからといって、転職希望者のほとんどが志望企業に入れる訳ではない。採用側は応募者のどこに注目しているのだろうか、大手製造業4社における実際の転職ケースを見ていこう。

■キヤノン 民生品への憧れを原動力に、航空宇宙産業から転身
・カメラか宇宙か悩んだ挙句、人工衛星の開発を選択。
 大学では航空工学を専攻し、新卒入社の際には人工衛星の開発に携われるということで大手電機に入社しました。それまで学んだことを活かせるという点で、申し分のない就職先のように思われるでしょう。それでも就活時はかなり迷いました。実は写真が好きで、カメラという光学製品にもマニアックな興味があったからです。宇宙かカメラか……両者のどちらを取るか悩んだ挙句、宇宙を選択したのです。
 そして入社後は、太陽電池パネルやアンテナを軌道上で展開する機構の設計等を担当。筺体の設計も任されました。そうした人工衛星の開発は取り組みがいのある大きなものでしたが、休日出勤が続くなど仕事自体はハードなものでした。また、仕事に慣れるに従って、民生品への憧れが高まってきました。人工衛星は最高度のテクノロジーが結集した製品ですが、一般の目に触れることがないものです。多くの人に評価される製品で、技術スキルを磨きたいという願望が次第に強くなりました。

・友人からたしかな情報を得てキヤノンに応募。
 民生品を手掛けるとしたら、カメラ以外は考えられませんでした。キヤノンに応募したのは、トップブランドということもありますが、大学時代の友人が勤めていて、待遇や労務面で前職よりも数段良いことを知ったからです。開発環境や仕事の進め方が異なることへの不安は、カメラの開発ができるかもしれないという期待がかき消してくれました。
 現在の仕事内容は、ハイビジョン用デジタルビデオカメラのレンズ部分のメカ設計です。ズームやピント合わせ、手ブレ補正のために自動/手動で複数のレンズを動かすための機構設計を担当しています。光学担当・回路担当とチームを組み、いかに小さく・薄くつくるかという課題や、高画質を実現するミクロン単位のレンズ制御への対応など、エンジニアとして刺激的な開発環境に満足しています。

■パナソニック 自社製品を提案する立場を目指して業界内転職
・前職は決められた仕様どおりに設計する仕事。
 クルマ好きの私が自動車部品の設計をしたいと思い入社した会社は、ある自動車メーカーの関連デバイスメーカーでした。担当した仕事はインパネの設計。技術者として課題解決に挑んだり機構設計上の工夫をしたりと専門性のレベルアップは実感していました。その一方、発注先のメーカーが決めた仕様に従う部分が多く、自分の意見が反映される余地は多くありませんでした。このあたりのスキルアップを求めて、自動車関連の機械・機構設計という枠の中で、仕様の検討段階から関われる企業への転職を考えるようになりました。

・入社後に驚いたのは、品質に強くこだわる姿勢。