【加部究コラム】受け身型育成からロナウドは生まれない
2008年12月24日18時21分 / 提供:FOOTBALL WEEKLY
■着眼点に見る世界と日本の違い
1位ルーニー、2位クリスティアーノ・ロナウド、3位マンソ。FIFAのテクニカル・スタディー・グループは、クラブワールドカップの優秀選手を、こう序列にした。短絡との見方もできるが、反面彼らがゲームの帰趨(きすう)を左右する存在だったことも紛れもない事実である。彼らは常に前線で最大限の責任とプレッシャーを背負っており、もともとファンの要求の次元も違っている。
一方、マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)のアレックス・ファーガソン監督が最大限の賞賛を送ったのを筆頭に、ガンバ大阪で名前が挙がるのは遠藤保仁ばかり。同じように攻撃的スタイルを標榜しながら、マンUの象徴はルーニーやロナウドなのに、G大阪は遠藤になる。実はそこに世界と日本の端的な違いが表れている。
マンUだけでなく、欧州で覇を競うようなクラブは、たとえ数的不利でも一瞬の隙をゴールに結びつける強靭で俊敏な体と精度の高い技術を併せ持つFWを擁している。全体をコンパクトに保つ中で、彼らには最終ラインからの1本のパスをゴールに繋げてしまう凄みがあり、チーム全体がとにかくボールを奪取した瞬間にそこを見る。
だが、G大阪の選手たちがボール奪取の瞬間に見るのは遠藤だ。マンUならルーニーやロナウドの得点の可能性を探るところから攻撃が始まるのに対し、G大阪は遠藤に預けたところでスウィッチが入り、パスが繋げられていく。
3位決定戦でパチューカにボールを支配されても怖くなかったことを指摘しながら、その遠藤が語っていたそうだ。「もしかすると自分たちも同じように思われているのかもしれない」。
■求められる発想の転換
こうしたことを気付かせてくれるのが、クラブワールドカップという大会の存在意義なのだが、実際にその遠藤が対面するアンデルソンを慌てさせたのは一度だけだった。自ら突破してミドルシュートを狙ったシーンで、それまでアンデルソンは配球役に徹する遠藤のスタイルを見抜き、ほとんど間合いを詰めてこなかった。
FWだけでなく、実はMFのゴールに直結する仕掛けの少なさも、やはりJを退屈にしている一因である。つまり国内ではポゼッションを重視し、ボールを失わずにパスを回すことが美しく攻撃的なのだと信じ込まれ、そこで意識が止まっている。
奇しくも遠藤は、それを日本の多くの指導者が目標としてきたメキシコのクラブ「パチューカ」によって気付かされたということだ。
ただしそれでも数年来日本ではポゼッションを最優先事項のように強調し続けた結果、ボールを保持してパスを繋いでいくという作業では、まずまずの水準を維持している。おそらく今の育成方針を持続しても、MFの人材はそれなりに育まれてくるのだろう。
だがルーニーやロナウドのクラス、あるいは最終ラインのファーディナンドやヴィディッチのようなタイプの出現は、数十人から数百人のメンバーに一律のメニューを課し、そこから発芽する選手を待つという従来の受け身型手法では、奇跡を待つようなものだ。
例えば、プラチナ世代と言われるアジア予選を突破したU−16日本代表でも、最大の得点源とも言える宇佐美貴史やボックス内で際立って精度の高いプレーが出来る高木善朗ら、もともとFWだった選手が1列下げられ、また最終ラインにはフィード能力には長けても本来CBのサイズなのかが疑わしい選手が起用されていた。
一方でフル代表の現実を眺めれば、明確なFWとCBの人材不足があり、中澤佑二や寺田周平らは明らかに遅咲きで、ユース年代に何ひとつ代表歴はない。
必要な素材を発掘し、適切な指導を施すことで根気良く発芽を促す。それが育成だ。日本が世界との差を縮めるなら、そこに思い切った発想の転換が必要なのだと思う。(了)
1位ルーニー、2位クリスティアーノ・ロナウド、3位マンソ。FIFAのテクニカル・スタディー・グループは、クラブワールドカップの優秀選手を、こう序列にした。短絡との見方もできるが、反面彼らがゲームの帰趨(きすう)を左右する存在だったことも紛れもない事実である。彼らは常に前線で最大限の責任とプレッシャーを背負っており、もともとファンの要求の次元も違っている。
一方、マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)のアレックス・ファーガソン監督が最大限の賞賛を送ったのを筆頭に、ガンバ大阪で名前が挙がるのは遠藤保仁ばかり。同じように攻撃的スタイルを標榜しながら、マンUの象徴はルーニーやロナウドなのに、G大阪は遠藤になる。実はそこに世界と日本の端的な違いが表れている。
マンUだけでなく、欧州で覇を競うようなクラブは、たとえ数的不利でも一瞬の隙をゴールに結びつける強靭で俊敏な体と精度の高い技術を併せ持つFWを擁している。全体をコンパクトに保つ中で、彼らには最終ラインからの1本のパスをゴールに繋げてしまう凄みがあり、チーム全体がとにかくボールを奪取した瞬間にそこを見る。
だが、G大阪の選手たちがボール奪取の瞬間に見るのは遠藤だ。マンUならルーニーやロナウドの得点の可能性を探るところから攻撃が始まるのに対し、G大阪は遠藤に預けたところでスウィッチが入り、パスが繋げられていく。
3位決定戦でパチューカにボールを支配されても怖くなかったことを指摘しながら、その遠藤が語っていたそうだ。「もしかすると自分たちも同じように思われているのかもしれない」。
■求められる発想の転換
こうしたことを気付かせてくれるのが、クラブワールドカップという大会の存在意義なのだが、実際にその遠藤が対面するアンデルソンを慌てさせたのは一度だけだった。自ら突破してミドルシュートを狙ったシーンで、それまでアンデルソンは配球役に徹する遠藤のスタイルを見抜き、ほとんど間合いを詰めてこなかった。
FWだけでなく、実はMFのゴールに直結する仕掛けの少なさも、やはりJを退屈にしている一因である。つまり国内ではポゼッションを重視し、ボールを失わずにパスを回すことが美しく攻撃的なのだと信じ込まれ、そこで意識が止まっている。
奇しくも遠藤は、それを日本の多くの指導者が目標としてきたメキシコのクラブ「パチューカ」によって気付かされたということだ。
ただしそれでも数年来日本ではポゼッションを最優先事項のように強調し続けた結果、ボールを保持してパスを繋いでいくという作業では、まずまずの水準を維持している。おそらく今の育成方針を持続しても、MFの人材はそれなりに育まれてくるのだろう。
だがルーニーやロナウドのクラス、あるいは最終ラインのファーディナンドやヴィディッチのようなタイプの出現は、数十人から数百人のメンバーに一律のメニューを課し、そこから発芽する選手を待つという従来の受け身型手法では、奇跡を待つようなものだ。
例えば、プラチナ世代と言われるアジア予選を突破したU−16日本代表でも、最大の得点源とも言える宇佐美貴史やボックス内で際立って精度の高いプレーが出来る高木善朗ら、もともとFWだった選手が1列下げられ、また最終ラインにはフィード能力には長けても本来CBのサイズなのかが疑わしい選手が起用されていた。
一方でフル代表の現実を眺めれば、明確なFWとCBの人材不足があり、中澤佑二や寺田周平らは明らかに遅咲きで、ユース年代に何ひとつ代表歴はない。
必要な素材を発掘し、適切な指導を施すことで根気良く発芽を促す。それが育成だ。日本が世界との差を縮めるなら、そこに思い切った発想の転換が必要なのだと思う。(了)
加部究(かべ きわむ)
スポーツライター。ワールドカップは1986年大会から6大会連続して取材。近著に「大和魂のモダンサッカー」(双葉社)「忠成〜生まれ育った日本のために」(ゴマブックス)など。
スポーツライター。ワールドカップは1986年大会から6大会連続して取材。近著に「大和魂のモダンサッカー」(双葉社)「忠成〜生まれ育った日本のために」(ゴマブックス)など。
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