2007年3月、サブプライムローンの破綻により米国金融市場は混乱、景気も低迷している。それが全世界に波及、日本の景気も減速している。景気は人の行動心理にも影響を及ぼす。購買意欲はもちろん、転職意欲もそぐ傾向がある。本当に景気が悪いと転職は不利なのか。時代に左右されない転職の考え方を探っていく。

■景気後退期の転職は有利?不利?
 景気が後退すると、人材の採用に慎重になる企業も多い。その表れが、厚生労働省が発表している有効求人倍率の低下。2008年8月の有効求人倍率(季節調整値)は0.86倍と、前月を0.03ポイント下回っている。また正社員有効求人倍率も0.53と前年同月を0.08ポイント下回っている。このようにマスでとらえると、求人数は減少傾向にある。
 このような状況から、「今は時期が悪い」と、転職に消極的になってしまう人も多い。確かに全体の求人数は減っている。だからといって「自分が携わりたい仕事」が減っているということではないはず。そこで景気後退期にある「今」は転職のタイミングとして有利なのか、不利なのか、専門家に意見を聞いてみた。

■今の時期の「転職」をどう見る?
IRコンサルタント ・西堀氏:景気の悪いときの転職は採用条件が厳しいなど困難が伴うが、入社後は同時に入る人数も少ないので大事に扱ってもらえる
 企業が採用する理由は大きく2つに分かれます。ひとつが「ビジネスがうまくいっていない場合」、もうひとつが「新しいビジネスを立ち上げる」場合です。景気が後退している今、いずれの場合においても即戦力として期待されるため求められる経験やスキルはかなりハードルが上がることが考えられます。転職に苦労はしても、大事な人材として扱ってもらえるのでタイミングとしてはよいのではないでしょうか。

FP・平野氏:「景気は関係ない。将来ビジョンを描けない状況にあるなら、いつでも転職を」
 転職は将来、自分がどのような暮らしと職業生活を送っていたいのかという将来ビジョンを立てたうえで考えるべきことがらです。今の会社にいるとそのビジョンが描けないのであれば、転職を考えるべきでしょう。不景気になると求人市場は狭くなります。しかしそれは転職をしないという理由にはならないと考えます。

ヘッドハンター・福田氏:「マネジメント職および深い専門性が求められる職種では景気の動向は関係なし」
 不景気だから転職が不利ということはありません。特に当社が得意とするミドルマネジメント以上のポジションの人材、また研究開発職など深い専門性をもつ人材は普遍的な人材難のため、求人数も安定的に推移しています。企業はこれからの戦略を考えたうえで、競合に勝てるような人員をそろえていく傾向はこれからも続きます。専門性のあるエンジニアにとっては、景気の動向は転職に影響がないといえるかもしれません。

CA・高原氏:「2〜3年以内での転職を考えているなら、なるべく早く動くこと」
 現在、転職市場は確実に縮小傾向。景気の後退により、多くの企業で採用計画の見直しが入り、求人数が激減することが予想されます。そのような動きは既に現実にも表れており、最終面接までいった人が採用計画の見直しにより、採用までに至らなかったというケースもありました。エンジニア職はまだ求められていますが、スタッフ系の職種の採用は縮小傾向にあります。1〜2年後は、エンジニアの求人市場においてもさらに厳しくなることが考えられます。ここ2〜3年以内に転職をと考えている人は、なるべく早く動くことが得策です。

組織・人材マネジメント研究・豊田氏:「景気の動向に振り回されすぎない」
 エンジニアはもともと、好・不況の影響を受けにくい職種です。例えば研究開発職の研究職や製造やITなどの上流工程職種などは、企業の製品・サービスを生み出す中核であるうえに、常に人が採れないため、企業も困っている。確かにSEなどの流動性の高い職種は多少、減少傾向になるかもしれませんが、それもほかの事務系職種と比べると減り幅が小さい。転職を考える際に景気の動向に振り回されすぎないことです。不況になると消費行動同様、転職を控える傾向があります。つまり求人数は減るが、動かない人も多いので、不況期の転職は意外にチャンスとも考えられます。