昨年のM-1グランプリでは、敗者復活枠から出場したサンドウィッチマン(フラットファイヴ)が優勝。劇的な幕切れは感動を呼んだが、同時に準決勝戦までの審査の不透明性をも浮き彫りとする形となった。

 昨年、決勝戦で審査員を務めたオール巨人が、なぜサンドが敗者復活戦からの勝ち上がりなのかと疑問を投げかけた。これには大きく頷かざるを得ない。優勝できるほどの実力を持ち合わせているコンビを準決勝で敗退させてしまったのは審査員たちの手落ち、もしくは手抜きだ。ひょっとしたらサンド以外にも不当な評価を受けた芸人もあったかもしれない。穿った見方をすれば、まことしやかに囁かれている“吉本の力”のようなものの存在を感じることもできてしまう。しかし大会実行委員長である島田紳介は、今年は敗者復活からの優勝はない、といったことを公言しており、審査の透明性や公平性をアピールした。現時点で公表されてはいないが、なにか具体的な改善策が施されたのかもしれない。

 しかし、昨年の敗者復活ドリームはM-1という大会のいいスパイスとなったことは確かだ。香辛料は入れすぎると料理がだめになってしまうが、適量ならば非常にいい仕事をする。今年も、ややもすれば、という期待は見ている側、そして敗者復活戦に参加する芸人たちは少なからず持っているはずだ。

 今年の敗者復活戦にはいい顔ぶれがそろっている。M-1の申し子・麒麟(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)はここでホームレス色を払拭できるかが来年以降の鍵となるだろう。ナイツと並びショートネタブームから頭角を現したオードリー(ケイダッシュステージ)を4分間じっくり満喫してみたいし、実力はありながらもブームの表舞台にあまり顔を出すことはない流れ星(浅井企画)にも期待できる。久しぶりにオリエンタルラジオ(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)の本気漫才も見てみたい。

 今年はより一層注目を集めているM-1グランプリ敗者復活戦。さまざまな思いや揶揄が交錯する場となってしまっているが、うるさい外野のことなど放っておけばいい。芸人たちにとって、観客から笑い声が引き出すことだけがあの場における正義、そして誠意であろう。芸人の熱意と観客の笑顔が大井競馬場を埋め尽くすことを期待する。

(編集部 三浦ヨーコ)


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