【有馬記念特集】インタビュー・松田国英調教師
「有馬記念では天皇賞以上の強さを見せる」〜ダイワスカーレット〜 写真一覧(2件)
天皇賞(秋)後、激闘の疲れを癒すべく、
山元トレセンに短期放牧しているダイワスカーレット。
同馬は実力日本一を証明するために、暮れの大一番・
有馬記念に再び登場する。管理する松田国英調教師に、
女傑の強さの秘密、そして有馬記念への意気込みを聞いた。
写真=桂伸也
取材日=11月27日栗東トレセンにて
天皇賞の感動をもう一度
有馬記念はライブで観てほしい
13分にも及ぶ長い写真判定。08年11月2日15時56分、東京競馬場の電光掲示板の最上部にともった数字は「14」だった。歴史に残る名勝負となった第138回天皇賞(秋)を制したのはウオッカ。そして、わずか2センチという差で敗れたのがダイワスカーレットだった。
「レース確定後、すぐに天皇賞に出走した馬の関係者全員が、負けた自分たちを褒め称えてくれたんです。ああいったことは12年間調教師をやってきて、初めての経験でした。それだけ凄いレースをしたんだなと思いましたね」
スカーレットを管理する調教師・松田国英は、天皇賞(秋)をそう振り返った。4月の大阪杯後に管骨外側骨瘤を発症して春を全休。天皇賞はそれ以来となる7カ月ぶりの実戦だった。しかし、それでもレコード決着のハナ差2着。一番強い競馬をしたのは、この馬だと誰もが感じたはずだ。そのスカーレットの次なる目標は年末の有馬記念。秋復帰当初から年内2戦、最後は有馬記念と公言してきた師だが、最後をグランプリに設定したのには理由があった。
「骨瘤を痛めた場合、ほかの見えないところを痛めている可能性も考えなければなりません。だから、休養して骨瘤が完治したとしても、復帰後は何走もするわけにはいかないなと。慎重に考えた結果、やはり2走あたりが一番いいだろうと考えたわけです。そうなると1回使って、間隔をあけて、また1回使うことになるので、必然的に最後は有馬になります。あとはやはりグランプリですからね。ファン投票で出走するわけですし、それだけさまざまな人々の夢が集まって、大きくふくらんだものが有馬記念であると、わたしは考えています。だから選ばれた馬は出走したほうがいいですし、今まで以上のパフォーマンスを見せなければいけませんよね。そうでなければ、この前の天皇賞のような、競馬に携わっている人、馬券を買ってくれるファン、すべての人々にいい競馬だったと思ってもらえるようなレースにはなりませんから」
何かと忙しい年の瀬に、ファンがわざわざ競馬場に足を運んで観にいきたいと思えるようなレース。それが真の有馬記念であると松田はいう。だからこそ、師はスカーレットを出走させることにしたのだ。
デビュー前は課題が山積み
最初の信頼関係が重要だった
ダイワスカーレットは、これまでGIを3勝(桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯)。ウオッカに対しても前走の天皇賞(秋)でハナ差負けしたものの、3勝2敗。さらに生涯一度も連対をはずしたことがない堅実性。現役最強牝馬といっても過言ではない成績だが、デビュー前は課題が山積みだったと松田はいう。
[牧場で何度も見ていて、とにかくスピードのある馬だという印象がありました。ただ、スピードがありすぎると、そのぶん壊れる可能性、他厩舎に迷惑がかかる可能性など、さらにスピードがあればあるほど、さまざまな危険の度合いが高くなります。それになんといっても、スカーレットはダイワメジャーの下(半妹)ですからね。メジャーを管理する上原師がどれだけ苦労していたかを知っていましたから、いかにして自分たちと馬との信頼関係を最初に築いていけるかが重要でした」
初入厩して調教を始めたころ、スカーレットは常に後ろを気にする馬だった。後ろで理解できない動作や音がすると、自ら下がって威嚇していたという。ゲートにしても、普通は入厩後10日ぐらいで試験を受けるが、スカーレットの場合、ゲート入りに対して用心深く、合格するまでに2カ月もかかってしまった。
「後ろを気にする馬でしたので、そのあたりは細心の注意を払いました。隊列を組んでいるときは、一番後ろにするのではなく、前と横、後ろに必ず馬を置いて歩かせていました。ゲート試験も、後ろのトモに相撲のマワシのようなものをつけて、常に何かが触れている状態にして慣らしました。とにかく力が相当ありましたから、慎重に慎重を重ねて、スカーレットに納得してもらい、理解してもらって、少しずつステージを上げていったんです」
06年8月11日に函館入り→9月1日に栗東トレセンへ移動→9月20日にゲート試験合格。初入厩から4カ月後の11月19日にデビューしたように、松田やスタッフがいかに時間をかけて、スカーレットとの信頼関係を築いていったかがわかる。
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