5日、毎年のマンガ選びの決定版「このマンガがすごい!2009」が宝島社から発売された。恒例の「今年最も面白かったマンガランキング」をはじめ、作者インタビューや対談、ジャンル別イチオシ作品ガイドと盛りだくさんの内容。毎日夥しい数のマンガが発売される中、じっくりと吟味する時間のないマンガ好きにはありがたい本だ。内容は各自読んでいただくとして、ついでに最近読んで面白かった漫画の中から二点紹介したい。



まずは、男性作者のランキング5位に入っている阿部夜朗「深夜食堂」。とある繁華街の片隅にある深夜営業専門のメシ屋を舞台にして、ここに集まるちょっとワケありな客たちの悲喜こもごもを一話完結の人情ドラマとして描いた料理マンガ。一話ごとに登場するクセのある客とその客の好物をとりあげつつストーリーを展開する構成はありふれているが、わずかな枚数で毎回軽妙なオチをつける手腕には感心させられる。
内容はたとえば、結婚しそびれた女性三人の微妙な絆を描いた「お茶漬け」、郷愁をそそる料理の代名詞・肉じゃがを作って男の気を引く女を描いた「肉じゃが」、クリスマス・イヴに常連客が黙々とカニの身をほぐす「カニ」、食べる前に合掌して「いただきます」と言う古風なAV女優が登場する「いただきます」といった具合。
料理マンガの多くがうんちくの披露にページの大半を割いてしまうのと対照的に、本書では「次の日のカレー」(1巻所収)に代表されるようにごく庶民的な目線で食事をとらえているところに共感を覚える。手に汗握るスリリングな展開も、読み始めたら止められなくなる中毒性とも無縁の作品だが、線の少ないシンプルな絵が話の短さとあいまって読みやすく気持ちを和ませる。トイレの中に置いておいて入るたびに少しずつ読んだり、枕元に置いて寝る前に少しずつ読むのが似合う。これを読んだ後、必ず出てきた料理のどれかが食べたくなるが、今回はオニオンリングだった。

次はランクインしていないが、筆者が最近読んだという極私的な理由から「男になりタイ〜私の彼氏は元オンナ〜」。作者は「ハニー&ハニー〜女の子どうしのラブ・カップル〜」、「ハニー&ハニーデラックス」で実体験を元にレズビアンの世界を赤裸々に描いた竹内佐千子。本作では、体は女なのに心は男という“おなべ”の新恋人・カイくんがタイへ性転換手術に行くのに同行する珍道中を「体が変わったら心も変わるのでは?」とか「もし失敗したら・・・」などと揺れる女心を交えながらコミカルに描いている。
性的マイノリティであることの葛藤や苦悩がないはずはないが、あえてそういった暗部を哀れっぽく取り上げるでもなく、といって隠すでもなく、普通に恋愛を楽しんでいる姿に好感が持てる。読後は「性的に特殊に生まれついただけで自分たちは少しも“特殊な人間”じゃない」という彼らの主張がすとんと腑に落ちる。そういった特殊な設定が面白いというよりも単にサチコとカイの何気ないやりとりやケンカっぷりが面白かった。ノンケの読者には全く参考にならないはずだが、ページをめくりながら何度も「へぇ〜」とつぶやいてしまう“タメにならないのにタメになる”マンガ。是非ご一読を。

(編集部:こてつ)

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