【本多圭コラム】"東スポ映画祭"で思い出すビートたけしの「苦悩」とバイク事故
2008年12月09日15時00分 / 提供:日刊サイゾー
この"東スポ映画祭"は1991年にスタートしたが、筆者はコーディネーターとして初回からかかわってきた。"世界の北野"がなぜ、東スポと組んで映画賞を創設したのかも、間近で見てきた。そもそも、お笑い芸人として大ブレークした頃から、スキャンダルを次々に暴露する東スポは、たけしにとっては、86年に襲撃した「フライデー」に次ぐ、「宿敵」だったはずだ。
しかし、その後、プロレスに興味を持っていたたけしは、ビッグバン・ベイダーというプロレスラーを引き連れ、新日本プロレスの興行に関与することになる。この流れの中で、プロレス報道に力を入れていた東スポとの距離は縮まり、たけしのほうから「東スポは嫌いだけど、紙面はおもしろいから、客員編集長をやらせてくれないかな?」と打診があった。東スポは二つ返事で引き受け、東スポのスタッフライターであった筆者も関わりを持つようになった。
たけしは89年に松竹の映画『その男、凶暴につき』で初監督を務めるが、当初は主演だけという話だった。ところが、監督が予定されていた故・深作欣二監督が突如降板しまったことで、「たけしさんがやらない?」とお鉢が回ってきた。以来、映画に取りつかれたたけしは、さまざまなしがらみの中で賞が決まる「日本アカデミー賞」を始めとした各映画賞に疑問を抱くようになり、完全なる自由な立場から映画を評価する映画賞をつくりたいと、東スポに提唱。東スポもそれに賛同すると、たけし自ら審査委員長を務め、「独断と偏見で賞を決める」と断言し、91年に映画祭がスタートした。
たけし審査委員長は、ときには監督賞に長嶋茂雄、主演女優賞に花田憲子(当時)や新人賞に宮沢りえのママといったテレビやワイドショーを賑わせていた人物を選ぶなど、サービス精神は旺盛で、そのハチャメチャな映画祭の内容は、良くも悪くも評判を呼んでいた。一方で、本当に"本物"と思った作品には、自分も作品も含めて、賞を与え、自らの言葉で最高の賛辞を送ってきた。
そんな折、忘れもしない94年8月2日、たけしがバイク事故を起こしてしまった。その大事故を海外でラジオで聞いたとき、激しい震えを覚え、直感的に"自殺未遂"ではないかと思った。
その頃の、たけしは本物の喜劇映画をつくるんだと、『みんな〜やってるか!』の撮影に入っていたが、思うようにいかずに悩んでいた。そして、筆者に対しては"死にたい"とよくこぼしていた。さらに、フーミンこと細川ふみえとの不倫騒動が持ち上がり、この件で記者会見を開いたたけしは、川内朋子リポーターに「潰れかかった銀座のクラブのチーママみたいな顔しやがって」と、毒づいたのだ。女性には優しいたけしにしては、珍しい光景だった。それだけ追いつめられていたのだろう。
バイク事故を起こす前に、たけしはガダルカナル・タカらを連れて、六本木のバーに現れたそうだ。そこで、筆者の編集担当Oとバッタリ会っている。「今日は本多サンはいないの? これから呼びなよ」と言ったという。その頃、筆者はOに「海外に行くけど、みんなには内緒にして」と口止めしていたために「もう、遅いですから」とOが断ったところ、タカが「そうですよ」と助け舟を出してくれたという。しばらく経ってから、「本多の家に行こう」と言ってきたというが、タカがまたして制止して、結局店を出て行ったという。その日の翌朝にバイク事故。そして、幸いにして、奇跡的な復帰。この間、"東スポ映画祭"は休むことなく、毎年続けられている。
たけしが映画を撮り始めてから、枯渇していた日本映画界が活性化されたが、最近は粗製乱造がたたり、邦画ブームは下火になっている。そんな中でも、映画業界との癒着を排除し、"天才"たけし自身が目を凝らして、玉石混淆の中から、本物の作品を選び出すという、東スポ映画祭は貴重な存在といえるだろう。今年は、どんな作品がノミネートされるか、今後もレポートしていきたい。
(本多圭)
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