お笑いコラム【この芸人を見よ!10】「偶像は死んだ」ものまね芸人・山本高広の破壊力

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 たった1人のものまね芸人の意地と情熱が、織田裕二という巨大な偶像を破壊した。彼の名は山本高広。山本が開発した「織田裕二のものまね」は、単なるお笑い芸の域を超えて、大物俳優の人生を揺さぶる衝撃を与えることになった。

 山本高広の最大の功績は、「織田裕二」という人物を「笑ってもいいもの」として世間に提示した、ということにある。山本高広という免罪符を得たことで、私たちは織田裕二を笑う自由を手に入れたのだ。

 『世界陸上』のメインキャスターとして、子供のように無邪気に興奮する織田裕二。数々のドラマや映画で、独特のハイテンションな演技を見せる織田裕二。振り返ってみれば確かに、織田はもともと面白い存在だったのだが、それを意識している人はほとんどいなかった。本人が真剣だから、何となく笑ってはいけないような空気ができあがっていたのだ。その空気に流されて、私たちは長い間、織田裕二を笑うことを忘れていた。

 だが、山本高広がこの状況を打ち破った。織田裕二を直接見て笑うのは気が引けるとしても、ものまね芸ならば気兼ねなく安心して笑える。つまり、山本というフィルターを通すことで、織田裕二が笑ってもいいものになったのである。

 ちなみに、山本というと織田裕二のものまねばかりが注目されがちだが、彼のものまねのレパートリーはそれだけではない。DVD『山本高広が...きたーーーっ!!』を見ると、彼の持ちネタの豊富さが実感できる。

 特に、織田裕二、ユースケ・サンタマリア、柳葉敏郎、北村総一朗、いかりや長介の5役を演じ分けて、ドラマ『踊る大捜査線』の登場人物を1人で再現する「ひとり大捜査線」は必見である。これだけしっかりしたネタを持っていれば、織田裕二ものまねのブームが落ち着いてからも、彼の人気はしばらく揺るがないだろう。

 先日、織田裕二の所属事務所から民放各局に「物真似を企画される際には、(真似される)本人のイメージを尊重していただくようなルール作りをお願いしたい」との通達があったという。織田の所属事務所はこの件に関して「中止要請ではない」明言したが、一方のフジテレビは定例会見で「織田のものまねを止めさせるよう通達があった」と認めている。

 だが、山本はこれにもひるんでいない。DVD発売イベント直後の取材でこの件について問われると、「その質問キター!!」と応じ、「室井さん、聞いてるか? 織田さんのものまね、封鎖できません!!」と堂々と答えたという。

 現状を冷静に見れば、このものまね禁止令に実質的な意味がないことは明らかだ。たとえ山本高広がものまねをやめても、世間の人たちはもう、山本が示したような「織田裕二の楽しみ方」を忘れたりはしないからだ。

 偶像はすでに壊れていた。お笑い芸は批評性という鋭い牙をむき出しにして、1人の大物俳優のプライドを食い尽くしていたのである。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

※画像:『山本高広が・・・きたーーーっ!! 』/ ビクターエンタテインメント


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