"お笑い帝国"吉本興業をめぐる闇とケッタイな企業体質
2008年12月03日08時00分 / 提供:日刊サイゾー
言わずもがな、バラエティ界を牛耳る吉本興業だが、そもそもなぜ、吉本がこれほどまでに強大な組織となることができたのか? 吉本の創業から現在までの趨勢を追った『吉本興業の正体』(草思社)の著者・増田晶文氏は「吉本が劇的に変化した時代は、やはり80年末〜90年代」と語る。時はバブル崩壊後、番組スポンサーが続々と撤退し、制作費を削らざるを得なくなったテレビ局が、コストの高いドラマや歌番組を減らし、比較的安価で制作できるバラエティ番組に主流が転換したことが大きいという。
「そういった時代背景を受けて、それまで芸能界のヒエラルキーの最下層だった芸人が、いきなりトップに立つこととなった。まさに天変地異が起こったんですよ」(増田氏)
その下地となったのが、82年に設立した芸人養成学校「吉本総合芸能学院(NSC)」である。1期生としてダウンタウンを輩出したことで一気に脚光を浴び、今や毎年500人以上の申し込みがあるほどまでに成長している。次のスターを生み出せる可能性と同時に、学費で多額の収入も見込めるという、吉本にとっては一石二鳥のうまみが凝縮したシステムだ。そして、NSC卒業生たちの活躍の場として、自前の劇場を持っていることも吉本の強みである。
「東京進出組がトップの1軍だとすると、大阪には2軍、3軍がファームを持っている。大阪にはなんばグランド花月(NGK)や京橋花月、さらにbaseよしもとというテイストが違う3つの劇場があり、芸人を絶え間なく輩出する原動力となっている」と増田氏は語る。
もうひとつ大きなポイントとして挙げられるのが、「吉本のマネージャーのあり方は芸能界に新風を巻き込んだ」(増田氏)ことだろう。マネージャーの職務といえば、タレントの管理が主ではあるが、吉本興業のマネージャーは一人ひとりが単独で行動し、担当する芸人を生かした企画を立て、番組制作にまで深く携わるのである。
「芸人の育成にはじまり、芸人が出演する番組の企画から制作までを徹底管理するといった、マネージャーのやり方を彼らは70年代に大阪で確立したんです」(増田氏)
すなわち、かつてはタレントのスケジュール管理が主だったマネージャー業務が、吉本発祥のやり方によって、
今現在、ごく当たり前に業界で行われているタレントコントロールに移行したといえるのだ。
●吉本スキャンダルは業界内でもアンタッチャブル
また、ある芸能プロダクション関係者は「吉本の内部事情は、闇の部分が多い」と声をひそめる。
「昨年に週刊誌などで報道された創業者一族と現経営陣との争いで、『恐喝』や『暴力団』といったダーティな言葉が表立ったものの、結局、何事もなかったように会社として成り立っている。05年の社長交代時も、林さん(裕章/前社長)が突然亡くなって、経営者としての能力があまりあるとは思えない吉野さん(伊佐男/現社長)が跡を継いだ。その裏で糸を引いていたのは、大崎さん(洋/副社長)だというのがもっぱらの話です。ただ、売れている芸人が大勢所属しているだけに、業界内では吉本批判はあまりできません」
また、現在の状況を増田氏は「過渡期」と見ている。その理由として大阪を知らない東京採用の社員が増えたこと、そしてバラエティ番組の衰退の可能性があることを挙げた。
「社員研修ではじめてNGKに行くという社員もいますし、今後15年ぐらいで大阪出身者は少数派となるかもしれません。となると、当然、社風も変わってくるでしょう」(増田氏)
ただ、それでも「吉本帝国が揺らぐことはない」と増田氏は見ている。今年9月、スティーブン・スピルバーグやブラッド・ピットらが所属するハリウッドの最大手タレントエージェンシー・CAAと包括提携を結んだことは業界を震撼させた。CAAは吉本が以前からコンテンツビジネスの手本としていた会社であり、海外での展開も含め、この提携が吉本の力をより強固なものにすると考えられるからだ。また、来年3月には沖縄・北谷で吉本が主催する国際映画祭が予定されており、お笑い専門という印象からの脱却を積極的に図っているのだ。
増田氏は、吉本興業という企業の本質をこのように捉えている。
「ウイルスですよね。ウイルスは有機物なのか無機物なのかもわからない不思議な存在。平気で何億年も自分が繁殖しやすい時期を待って潜伏することができる。たとえ、バラエティ番組が衰退しても、機を見計らってまたパンデミック(感染爆発)が起きた頃に出てくればいい。たとえ崩壊したように見えても、それは潜伏しているだけ。芸人という、異界に住む魑魅魍魎たちをコントロールしている吉本という会社は、芸人以上に恐ろしい存在かもしれません」
今後、吉本という会社が、どうなっていくのかは誰にも予測がつかない。ただ間違いなく言えるのは、長らく続くテレビ界の芸人・バラエティ偏重時代の終焉とともに、吉本という会社は、また新たなビジネスを仕掛けていくのであろう。
(佐藤拓也/「サイゾー」12月号より)
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