「Popons」名のネットユーザーの書き込み

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   毎日新聞の大誤報問題で、犯行示唆と決めつけたネットユーザーに紙面上で謝罪していないことに批判が上がっている。このユーザーもネット上で、紙面での謝罪が拒否されたことを明らかにした。同社は「会って誤報についておわびした」と釈明するが、背景にネットへの不信感があるのではとの指摘も出ている。

毎日新聞さんの報道が私の現実の生活にも影響」

   大誤報は、警察がまだ目星を付けていないうちに、犯人と決めつけたことから生まれた。

   元厚生事務次官宅の殺傷事件で、ウィキペディアを編集した「Popons」名のネットユーザー。毎日新聞が2008年11月19日未明、「犯行示唆」と報じると大騒動になった。その後に記者が日本時間と勘違いした誤報と判明したが、このユーザーも大変な騒動に巻き込まれたらしいのだ。ウィキペディアの項目「ノート:社会保険庁長官」で、そのてん末を綴っていることが分かった。

   ユーザーは、ウィキペディア上で19日、誤解されたことを反省したとして、事件の遺族や捜査関係者に謝罪。そればかりでなく、騒ぎを受けて、警察に連絡した結果、「被疑者」として1日中取り調べを受けたという。このために、会社を休み、個人情報やアリバイになるものを警察に提出しなければならなかった。22日の書き込みでは、「精神的にとても疲れました。毎日新聞さんの報道が私の現実の生活にも影響を及ぼした」と漏らしている。

   同じ日に、毎日新聞社に抗議の電話をしたといい、その結果なのか、29日になって、社会部の担当者と会ったことを明らかにした。書き込みによると、新聞紙上での自分への謝罪、誤報の原因究明、不利益を受けたことの補償をその場で求めた。これに対し、担当者は、騒動については口頭で謝罪したものの、紙面での謝罪は拒否。その理由として、当時の書き込みが被害者を傷つけるものだったため、紙面での謝罪は道理に反すると説明したという。補償については、誤報がなくても警察の取り調べはありえたとして拒否したとしている。

   ただ、毎日の担当者は、原因究明については紙面で取り上げる可能性があること、騒ぎを大きくしたことは認識していることを明らかにしたという。

「編集の担当者がご本人に会って誤報についておわび」

   毎日新聞社社長室の広報担当者は2008年12月1日、J-CASTニュースの取材に対し、「Popons」名のネットユーザーとの話し合いを認め、「本件につきましては、編集の担当者がご本人に会って誤報についておわびしました」とFAXでコメントした。このユーザーは、担当者が「毎日新聞は正義」と言ったと書き込んだが、この点については、「誠意を持って対応しておりますが、ご本人とのやり取りの中で『毎日新聞は正義』という発言はしておりません」としている。

   とはいえ、コメントでは、犯人扱いされたユーザーに紙面で謝罪するかどうかの答えはなかった。ITジャーナリストの佐々木俊尚さんは、こうした毎日の姿勢に対し、「記事で書かれたために警察の取り調べを受けたのですから、きちんとした謝罪が必要」と批判する。同社のおわびがユーザーへの責任転嫁だと指摘されていることにも理解を示し、その背景には、根強いネット不信があるとする。

「変態ニュース問題など以来、社内では『インターネット憎し』の雰囲気で凝り固まっています。新聞読者しか世論とは思っておらず、ネットユーザーらは得体の知れない連中と見ているようです。だから、そんな対応になるんですよ。おわびは、言い訳をしているとしか見えず、冷静さを失って感情的に反応しているように思えます。ほとんど矯正不可能で、世代交代を待つしかありませんね」

   補償については、佐々木さんは、「普通はそこまで求めない」として、こう指摘する。

「言ってみれば単純ミスで、悪意はないのだから、謝ればよかった。変態ニュースのときと同じで、ユーザーのせいにするなら、最初から謝らなければいい。また、おわびだけでなく、冷静に事実に基づいて誤報を検証するべきです。話し合いも記者がブログ上に書くとか、経過を見えるようにすることが大事。きちんとしないから、そんなことを言われるんですよ」

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