12/3にポニーキャニオンから立川談志の3枚組DVD「『落語のピン』セレクション DVD-BOX」Vol.1が発売される。
 9450円と少々高価だが、まだ談志の落語に触れた経験の無い人にはオススメしておきたい。ここ数年の落語ブームの基礎が、ここに収録された高座にあると言っても過言ではないDVDだからである。収録内容と詳細はコチラ

 1993年4月、フジテレビが水曜深夜に落語番組『落語のピン』を始めた時、落語ファンの間では大いに話題になった。その頃テレビで落語放送というと、ごく限られたレギュラー番組を除いて、せいぜい12〜3分程度のオンエア。それが、たった3〜4人の出演で1時間半の放送枠を独占しちゃうわけだ。1分単位のテレビ芸が全盛の現在からすれば、信じ難い時間の取り方である。

 そして、この番組の中核となったのが、立川談志その人である。
 関西の落語家のように大きな芸能事務所が仕事をマネジメントしない人がほとんどの東京落語界において、半世紀弱にわたってポピュラリティを維持し続けている唯一無二の落語家。高座においては、「問題提起」と「話芸での魅了」を両方できる数少ない人物で、その強烈な個性を拒絶するアンチも多い分、一方でカリスマ的人気も保持している。
 その談志が、毎週1本、30分近い古典落語を演じるのである。さすがに放送禁止用語はオンエアでは伏せられたものの、談志の芸風を知るには格好の番組となった。放送開始とともにそのカリスマ性は加速して、当時の談志の独演会はプレミアチケットと化した(一説には、放送禁止用語をナマで聞きたい人が押し寄せたとも)。
 番組を見て落語に目覚めた現アラフォー世代は、現在も落語ファンとしてあちこちの落語会に出没して応援し、またある者は落語会を主催する側に回って、若手落語家の育成の場を提供している。それを考えれば、『落語のピン』は落語界にとって意義深い番組であった。

 また、談志以外に番組を支えた落語家も、今見ると錚々たる顔ぶれだった。
 売れっ子・春風亭小朝、当時マスコミ出演が急増中だった立川志の輔、真打昇進したてのバリバリの若手・春風亭昇太、談志の弟子で深夜番組でも人気のあった立川志らく・立川談春、このあたりが主力メンバー。その他、桂米助、柳家小緑(現・花緑)、三遊亭新潟(現・白鳥)、林家たい平ら当代の人気落語家がイレギュラー出演していた。本業が放送作家の立川藤志楼(高田文夫)や、まだ古典落語に集中する以前の林家こぶ平(現・正蔵)なんてあたりもたまに出ていたのが面白い。詳しい『落語のピン』出演者一覧はコチラ

 どうせなら談志個人のセレクトDVDではなく、番組丸々1週分を1ディスク、計24ディスクのシリーズにした方が、15年前の「伝説の番組」の鮮度をリアルに楽しめて新しい落語ファンにも訴える向きがあったとは思うが、諸事情が絡んだ場合そうはいかないのかもしれない。

 体調不良から最近めっきり露出が減り、恒例だった12月の独演会も中止してしまった談志家元だけに、この暮れはDVDで全盛時の家元の高座を懐かしく楽しむ……それが信者にとっての2008年締めの落語ライフになりそうだ。

(編集部:尾張家はじめ)

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