10/21日〜24日の4日間、浅草と上野で催された初の本格的コメディ映画祭「したまちコメディ映画祭in台東」の第1回が終了した。
 各報道では、おもに22日の「雷門レッドカーペットお練り」の光景が紹介されたようだ。山田優と南海キャンディーズのしずちゃんが2万人の見物人に囲まれながら仲見世通りを歩くシーンはなかなかインパクトがあったし、たまたま山田が小栗旬との交際を取り沙汰されている最中であることも、話題性を高める要因になった。

 「したコメ」公式カタログによれば、総合プロデューサーを務めたいとうせいこう氏の他、スーパーバイザーには大場しょう太氏(日活)、ディレクターには東急関係者。この布陣は2006年休止した「東京国際ファンタスティック映画祭」(渋谷)と同じスタッフだ。渋谷での経験を盾に、いとう氏の地元・台東区で、いとう氏の好きな「笑い」の映画祭企画を持ち込んだのかもしれない。
 いとう氏の笑い好きぶりは、パネラー参加した「いとうせいこうコメディ映画講義『マルクス・ブラザーズ特集』」(24日)でも垣間見えた。ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏を相手に熱くしゃべるいとう氏は、プロデューサーとして堅く挨拶する他でのステージとは違い、水を得た魚のようであった。

 ところで今回の映画祭、全面的に成功であったかといえば、そうでもない。凡ミスとも言えるトラブルもあった。

 22日に催されたライブイベント「歌唱・弁士 デーモン小暮閣下×琵琶奏者 友吉鶴心」でのこと。
 過去にもステージで数度、友吉氏の琵琶演奏をBGMに「活弁」を試みた経験を持つデーモン小暮閣下は、今回新作の語り下ろしをする予定で、事前に脚本作成など綿密な作業を進めていたという。
サイトにもカタログにも事前発表されなかったその映画は、『ゴジラ』であった。
 しかし、前日21日になって突然、「権利上の問題」(閣下の証言)で上映中止の通告が来たのだという。この件は「したコメ」公式サイト上では、「諸事情により」としか言明されていない。

 映画祭イベントでの『ゴジラ』上映を、事前に権利会社に通告していなかったとはおよそ考え難い。経験豊富なスタッフが映画の権利問題を知らないはずはないからだ。
 ただし、何かの手違いで詳細が伝わっていなかった可能性はある。というのも、今回の「活弁」はもともと時間制約があり、閣下自身が切り詰めに切り詰めた30分余の編集脚本をもとに「活弁」を行う予定であったのだ。しかも「活弁」なのでオリジナルの音声は使わない。権利上の問題があったとすれば、このあたりであることは薄々想像できる。
 よりによって前日に「権利上の問題」で中止ということは、今回の企画が「編集版の上映によるもの」であることが先方に伝わっておらず、前日に判明してあわてて不許可措置が下ったのでは、という可能性はある。どちらにしても、詳細連絡を関係筋に怠ったスタッフの有り得ない凡ミスだったと言わねばならない。

 結局当日のステージは、急場しのぎで用意した数枚の写真映像をもとに、閣下の「朗読劇」へと企画が変更された。
 閣下も手間をかけた作業を前日に反故にされ、当初はさすがに腹立ちが抑えられない様子。スタッフに声を荒げるシーンなどもあった。しかし「朗読劇」が始まると、客席の好反応に次第に乗ってきて、臨場感のあるシーンではゴジラの物真似もまじえつつ、40分近い熱演を披露。クライマックスで、物悲しい琵琶の音とともに友吉氏が詩吟を謡うなどの閣下流演出も効果的で、「活弁」とはまったく違う朗読版『ゴジラ』ながらも、上々の完成度であった。会場に押しかけた閣下のファンも、この代替策には十分満足したことだろう。
 閣下はそのあと行われた「雷門レッドカーペットお練り」にも加わり、他の招待客と一緒に仲見世通りを練り歩いていた。この頃にはもうスタッフに対しての怒りは多少収まっていたのかもしれない。

 閣下の件以外にも、ボランティアスタッフの応対とか、施設案内表示の不足とか、第1回なのを差し引いても物足りない部分が数多く散見したのは事実。今後回を重ねることで整備されてゆくことを期待して、第2回「したコメ」の一層の充実を今から楽しみにしたいと思う。

(編集部:尾張家はじめ)

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