1960年代後半から、数々の宇宙探査計画が実行された。アポロをはじめとした探査機が、初めて地球に送ってくる未知の世界の映像に、光り輝く未来を感じた時代。TVやニュースだけでなく、自分の目で星を見てみたい……そんな知的好奇心に突き動かされ、望遠鏡を手に入れた読者は多かったのではないだろうか。初めて見た月のクレーター、木星の不思議な模様、土星の環……。決して手の届かない、遠く離れた星を間近に見ることができる「天体観測」の魅力とは?

今回は東京都三鷹市に位置する国立天文台を訪問。こちらの広報であり、著名な天文学者として数多くのメディアに登場している渡部氏に「天体観測の魅力」についてお話をうかがった。小さなころから筋金入りの天体観測少年だった渡部氏。現在は「未来の天文学者」を育てるべく、2000年まで不可能だった国立天文台の一般開放を実現させ、多くの子供たちに「星の不思議」と触れ合う機会を与えている。

■星に興味をもったきっかけは?
私が小さいころ、男の子が興味をもつ三大テーマは「虫・星・アマチュア無線」でした。中でも「星」についてはこの当時、大きなニュースが盛りだくさんでした。1969年のアポロ月面着陸、1971年の火星大接近、1972年のジャコビニ流星群……。気がついたら私もいつしか「星」に夢中になっていました。

特に1972年のジャコビニ流星群はその後の私の人生に大きな影響を与えたと思います。当時「降るように流れ星が見られる!」と期待が高まっていましてね。私の育った会津若松でもその夜は街中の明かりが消えて、みんな空を眺めていました。

私も学校の校庭でクラスの仲間と夜中ずっと空を見ていたんですが、なぜか流れ星は全然現れない。月食や日食と違って、予測がはずれることがあると知って大きなショックを受けたんです。教科書に載っていない、わからないことが星の世界にあるということは驚きでした。

その後、流れ星がでなかった理由をどうしても知りたくて、小学生で日本流星研究会の会員に(笑) このころから「将来は天文学者になる!」と決めていたように思います。

■その後、「星」とのかかわりは?
1971年の火星大接近がきっかけで、お小遣いをためて念願の望遠鏡(ケンコー社製、口径11.3cm)を買ってからは毎夜、木星や土星を観測・スケッチしてました。
特に木星は毎日違った模様が見えましてね。望遠鏡でじっと見ていると2時間くらいで大赤斑がダイナミックに動いていくのがわかるんです。
大赤斑をスケッチしながら「もしかしたら、この瞬間の木星を見ているのは自分だけかもしれない!」なんていう使命感に燃えたものです(笑)。

その後、中学・高校になってからは流れ星の観測へ。観測には当時まだ局数が少なかった民放FM局の電波を利用していました。通常ノイズしか聞こえない周波数でも、流れ星が飛ぶとその反射で一瞬放送が聞こえるので、その時刻を記録するという方式です。
受験勉強をしながらの観測だったので、ヘッドフォンでは音楽ではなく、ずっとノイズを聞いてたんですね(笑)。一瞬放送が聞こえた時刻を、2年間ずっと記録してました。

このころ、同じ方式で流れ星を観測してた人は日本に10人くらいかな。流れ星は観測できる範囲が限定されるんです。各自「この空は俺の領域!」という責任感を感じながら観測に励んでいたと思いますよ(笑)。

■天体観測の魅力は「一期一会」
私たちが望遠鏡を使って天体観測を始めたのは今からわずか400年前。実はまだまだわからないことがたくさんあります。予測がつかない突発的な出来事も多いので、アマチュアによる重大な発見もよくある世界です。

天体観測をしていると「一期一会」という言葉が浮かびます。膨大な時間をかけて届く光の中で、この瞬間の星はもう二度と見られない。そして今この星を見ているのは世界中で自分だけかもしれない、そう思うと子供みたいにわくわくします。科学者ってどこかしら子供みたいなところがありますよね。そういった部分が研究に対するモチベーションにつながっていると思うんです。……≫続きはこちら

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