「早く大量の計算をする」だけだった時代から、今や人間のさまざまな機能や制御を代替するようになってきているコンピュータ。そんななか、「歌う」「ゲームする」など、特に“人間らしい”機能を追求するソフトウェアの開発に迫ってみた。

■Part1 ソフトはこんな「人間の知性」を目指している
 2007年11月28日から12月1日まで、有明の東京ビッグサイトで開催された、「2007国際ロボット展」。産業用ロボットや、「お手伝い」や「掃除」のロボット、あるいはこれからのロボットの機能を探る実験用の機体など、さまざまな出展が見られた。
 産業用ロボットでは、ただ流れてきた部品を相手に、それこそ“機械的”に単一の動きをするのではなく、今や相手のサイズや形からロボット自らが「判断」をして、自在に姿勢を変化させながら、適切な作業を行うのが主流。特に今回のロボット展では、これまではやはり人間の役割と思われてきたような、例えば製品の目視検査を高速・自動で行うロボットなども目に付いた。
 そんなふうに、ロボットやIT家電の制御でも、あるいはコンピュータ上で操作するソフトウェアでも、「これが機械のすることなの?」と思うようなものが次々に登場してきている。

■人間に迫り、人間を超える
 古典的SFでよく使われる「電子頭脳」という言葉にも表れているように、コンピュータは人間の頭脳の機能(の一部)を代替・拡大するもの。
 とはいっても、今のところその能力は、突き詰めれば「計算処理する」だけ。しかし、今や恐ろしく高速・膨大になったその処理能力に、さまざまなアルゴリズムを組み合わせれば、「考え、判断すること」や、あるいは「やはり人間じゃないと」と思われてきたようなその他の作業も可能になってくる。さらには「これまで人間じゃなければできなかったこと」に、「コンピュータじゃないとできないこと」を組み合わせて、思いがけない機能や強みを発揮することも。
 今回は特に、「人間に迫る」「人間を超える」ことが目的のソフトウェアをクローズアップ。人の機能を“追いかける”開発の難しさと面白さをインタビューしてみた。

■Part2 「人間の知性を超えるソフト」とその創り手たち
人間のように歌うVOCALOID2:本格的バーチャル・アイドル誕生
 2007年秋以降、動画投稿サイトを中心にブレイク中なのが、「バーチャル・アイドル歌手を自宅でプロデュース」をうたい文句に発売された「キャラクター・ボーカル・シリーズ」第一弾の「初音ミク」(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)。
 メロディと歌詞を入力すれば、そのとおりに歌ってくれるソフトウェアで、サイト上では、既存の歌だけでなくオリジナル曲を作って歌わせたり、歌に合わせて2Dや3Dのアニメを自作してみたりと“百花繚乱”。ついに12月には、そんなオリジナル曲のひとつが「歌手名:初音ミク」で通信カラオケで配信されるまでに。

 そんなバーチャル・アイドルの基幹となっている音声合成エンジンが、ヤマハが開発した「VOCALOID」(現在は改良版のVOCALOID2」)である。そもそもここまでの大ヒット、開発時には予測していた?

「はっきり言って、予想外でした。
 楽器の音は、現在既にコンピュータである程度合成できる。唯一残されたものが人間の『歌声』で、ヤマハとしても挑戦しなければと開発を始めたのですが、当初は音楽関係の方が、インストゥルメンタルの曲に仮にボーカルを入れる“仮歌”にでも使ってもらえれば、という感じでしたから。
『初音ミク』のヒットは、キャラクターや声のかわいさもあるでしょうが、ネット上での活躍を見たときは、私自身面白さと楽しさで大ウケ。中にはオリジナルの歌で『ヤマハの技術は世界一』なんて歌っていただいているものまであって……いや、気恥ずかしいですけれど(笑)」(ヤマハ株式会社 剣持秀紀氏)

“歌声の追求”はエンドレス
 音声合成は、1961年、米国のベル研究所がその物理モデルを発表するなど、古くから研究されてきたテーマ。テキスト音声の合成では、読み上げソフト、カーナビのアナウンスなどで実用化もされている。

「しかし、音が明瞭で意味が通ればいいテキストと違って、歌はなかなかうまくいきませんでした。人の声は、声帯の振動だけではなく、呼気の乱流、共鳴などさまざまな要素がある。しかも、常時耳にしている音でもあるので、わずかな不自然さも耳につきます。
 VOCALOIDでは、音声そのものは実際の人の歌の“素片”をデータベース化、この歌声ライブラリをつなぎ合わせることで“歌わせる”ことを可能にしています。歌詞がきちんと聞き取れるようにしつつ、音のつながりを自然にする――特にこのつなぎ合わせ方が焦点でした。歌には“伸ばし音”があり、そこが美しくつながらないと歌は成り立たない。音素と音素の境界をうまく“合わせ込む”技術開発が必要でした。……≫続きはこちら

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