サブプライム問題、耐震偽装、防衛利権……私たちの身のまわりには、多くのリスクが存在する。それはエンジニアも同じ。商品開発から会社での生活、さらには転職まで、あらゆる活動にリスクは付きモノ。そんなリスクをかわし、しなやかに世の中を駆け抜けるための方策を探る。

危機管理は重要ってわかるけど……
「ロールアウト直前に設計ミスが見つかって対処できない!!」「自分が身につけてきたスキルがオールド化して役に立たなくなった!!」「開発に追われているうちに彼女にフラれた!!」――世の中のありとあらゆることには、さまざまなリスクが存在する。何も企業経営や政治・外交戦略といったマクロ的なものだけではない。エンジニアのごく普通の日常の中でも、身のまわりはリスクだらけと言っていい。リスクを想定し、それに対する備えをしておかないと、危機に見舞われて泣きながら右往左往するハメにも……。果たしてエンジニアはどのようなリスクマネジメントを実行しているのか。これまでの人生において無数のトラブルに見舞われ、リスクコントロール、リスクマネジメントの必要性をイヤというほど痛感させられてきたTechスナイパーが、エンジニアのリスクマネジメントの実態にロックオン!!

■危機管理をして、楽しく明るく
 仕事、プライベートともさまざまなリスクに囲まれているエンジニア。当然いらない苦労や身の破滅を招きたくはないとあって、多くのエンジニアがそれなりにリスクコントロールを行っている。「プログラムなど常に見ていないと忘れたりするので、スキルを保つためにも、家でもスキルアップを図る」「常にメモをとって、コピー、pdfファイルなどで証拠を残す」「社内キーマンと考えられる人とは情報交換や連絡を日常からとり、アクシデントに見舞われたときも助けを得たり協力できる体制をとっている」「常に周りに情報を発信し、間違った方向に進んでいないことを、確認しながら仕事を進める」……。
 が、それでもリスクのもたらす厄災に見舞われてしまうのが人生というモノ。果たしてリスクの影響を最小限にとどめ、いいエンジニアライフを送るためにはどうしたらいいのだろうか。リスクコントロールの極意をリスクコンサルタントの草分けといわれる牛場靖彦氏に聞いた。

■どんな道にもリスクはある
 仕事や日常生活を何となく平和に過ごしている私たちだが、一寸先は闇。いつどのようなリスクに見舞われるか、わかったものではない。果たして、どのようにリスクマネジメントを行えば、より良い人生が手に入るのだろうか。
  リスクコンサルタントの草分け的存在として知られる牛場氏は、意外なことに、リスクを恐れるべきではないと語る。
「ビジネスマンの人生にはおおむね3つの道があります。第1は今いる会社に定年まで居続け、そこで功績を挙げて出世するという道、第2は自分にとってよりよい道を探すため、転職や社内でのジョブチェンジを模索する道、第3は独立して一国一城の主となる道です。そのいずれにもリスクはある。安全な道などないんですよ」
 安定志向で、会社で定年まで勤めようとしても、途中で業績が悪くなったり倒産するかもしれない。転職したらしたで、新しい職場が肌に合わなかったりイジメに遭ったりする可能性もある。独立して成功すれば利益は自分の総取りだが、失敗すれば借金の山ができてしまう。
「それらのリスクをどう最小化するかですが、その判断の決め手となるのは教養、知恵なんです。これはとても重要なことですが、知識と知恵は違います。今はインターネットが発達していることもあって、知識なんか誰でもいくらでも手に入る。でも、そんなものは本当の意味では役に立たない。自分でいろいろと試して失敗して痛い目に遭って、そこからはい上がって初めて知識が知恵になる。知識を実際の生活やビジネスに応用できる知恵をもち、その知恵の蓄積である教養をもつこと。これがリスクマネジメントには大切なんです」(牛場氏)

■ゾンビになるな。アライブ族になれ!
 牛場氏は昔から、ビジネスマンを2つのタイプに区分けしている。さもしく、活気がなく、いつも利己的にしか振る舞うことしか考えない「ZOMBIE(ゾンビ)族」と、自分はもちろん世の中にとってもプラスになるような夢をもつ“利他的利己主義”者「ALIVE(アライブ)族」である。
「会社にいると、それこそゾンビみたいな上司や同僚がたくさんいる。これは会社や自分が儲かりさえすればあとはどうでもいいという人たち。ゾンビにも階級があり、最上位に意図的に利己主義で人をたぶらかすゾンビマスターがいて、その手下に悪知恵を働かせるゾンビゼネラル(参謀)がいる。そんな彼らの下で夢をもたずに『俺の人生はこの程度なんだ』とあきらめてしまうと、その人もゾンビになってしまう。それではダメ。ゾンビに立ち向かう、他人のために良く、自分にはさらに良くという“利他的利己主義”で行動できるアライブ族を目指すべきです」
 人生における最大のリスクは、何のために生きたのかわからないような過ごし方をして、そのことを後悔しながら虚無的に死ぬこと。転職・独立をする、しないにかかわらず、生き生きと人生を過ごすためには、利他的利己主義を実現させ、アライブ族になれと牛場氏は言うのである。
「みんな本当は、生き生きと生きたいはずです。そうするためには、先にも述べたように知恵、教養を身につける努力をすべきです。腕力では1人かせいぜい数人を相手にすることしかできないが、知恵をもってすれば1000人にだって勝てる。会社や上司は別に神様じゃないんだからみだりに尊敬をしてはダメ。自分はどう生きるかというスタンスをきちんと決めて、より良く生きることを目指してほしいですね」(牛場氏)

■エンジニア、危機管理の実態
 牛場氏が語った社会人としてのリスクに加え、開発業務、社内の上司・部下や同僚との人間関係、キャリアアップなどエンジニアの身のまわりには、実に多様なリスクがひしめいている。エンジニアは実際問題として、どのようなリスクを負い、どのような対処を行っているのだろうか。Tech総研は読者アンケートを実施し、リスクのパターンや対処法の実態を探った。

■仕事編1 【人間関係の危機管理】
 職場の人間関係についてのトラブルで圧倒的多数を占めるのは、やはり上司、部下の関係。上司の無理解に憤る若手も多いが、部下のいい加減な仕事ぶりに悩まされている上司もそれに負けないくらい多い。エンジニア人生において、人間関係のリスクマネジメントは極めて重要だ。
 人間関係を司るのは、基本的に相互理解だ。この手のトラブルの背景をよく調べてみると、若手が大した実績でもないのに自信過剰になっていたり、ベテランがやたらと上司風を吹かせ、若手のやる気をみすみすそいだり、不要な摩擦を生んでしまったりする。
 どんなにイヤミな上司でも、あるいは生意気な部下でも、普段から相手を尊重する姿勢を見せていれば、いざというときにあしざまに言われることはない。人間関係がちょっとね……と思っている人は、普段から相手とよく話をするようにしてみるのも手だ。人間関係が円滑になれば、職場の雰囲気も180度違って見えることウケアイである。

■仕事編2 【プロジェクトの危機管理】
 開発プロジェクトにおいて、最初に想定したモノが何のトラブルもなくロールアウトされるというのは理想だが、現実は仕様や開発スケジュールなど、多くの点について変更に次ぐ変更のオンパレードだったりする。変更は開発者にとって、まさしくリスクの火種だ。アンケートを見ても、ソフトウェア、ハードウェアともに、仕様変更がもとでプロジェクト全体に影響が及んだというケースが目立つ。
 リスクマネジメントの観点からは、開発前にあらかじめどういう事態が想定されるかというシミュレーションを行うとともに、途中での仕様変更をどれだけ受け入れやすくするかという、柔軟性のある開発体制を工夫することが求められよう。また、ニーズと合わない開発になっていることが自覚されながらなかなか修正できないケースも案外目立つ。ここについても対策が求められよう。

■仕事編3 【キャリア設計における危機管理】
 アンケート結果では、会社の業務にかかわっているうちに全体的な技術トレンドがわからなくなって道の選択を誤った、ひとつの技術にこだわり続けているうちにいつの間にか時代の流れから取り残されたといった“忙殺型”と、ついつい勉強を怠ってしまってスキルを身につける機を逸したという“怠慢型”の2つに大きく分かれた。
 技術は生き物であり、常に変化していくものだ。自分がかかわっているテクノロジーが、それを土台に大きく発展していくタイプのものなのか、あるとき別の優れたモノに取って代わられるようなタイプのものなのかといった将来展望を冷静に認識しておく必要があろう。社内や業界内の評価だけでなく、別分野のエンジニアと交流して意見を求めるなど、積極的な情報収集を行うことが、より正確な情報を得るためのコツだろう。……≫続きはこちら

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