【竹田聡一郎コラム】琉球の蹴球〜沖縄サッカーの今〜
2008年11月07日12時46分 / 提供:FOOTBALL WEEKLY
■Jの舞台はそう遠くない
1993年の開幕時に10チームだったJリーグのクラブは、それから15年の間にどんどんできた。3チームがひしめく九州はすっかりサッカー先進地域になった。札幌や徳島にもJは息吹いて、新潟で盛り上がって、山形と仙台で昇格争いを繰り広げて、ってな具合に津々浦々で発展している。
関係者の努力や地域自治体の振興活動、そしてなによりファンの声援あってだろう。僕もいちファンとしてJリーグの成長はとっても嬉しいし、誇らしい。
だが、その波に乗り遅れてる地域というか県がある。沖縄、琉球だ。「球」がつくのに何事か、と思っていろいろ調べていると、ここ近年「沖縄=サッカー不毛の地」からの脱却が始まっている、というではないか。
すぐさま飛行機に乗った。
レンタカーを駆って、まずは“シーサーズ”FC琉球の練習へ。FC琉球は今季からあのトルシエが総監督に就任し、沖縄から世界へ続くサッカーを伝えるべく「トルシエ革命元年」と息巻いている。
オフ明けの練習とあってラン中心のメニューだったが、指揮官は相変わらずで、秋に来る台風のようにエキセントリックに叫ぶ。ただ、練習自体、選手の技術なんかはJのチームより格段に落ちる、という印象は受けなかった。ある選手は鬼軍曹について語った。
「正直、何言ってるか、たまにわかんないときもあるけど。それでもやっぱり世界を知っている監督の下でサッカーができるというのはモチベーションになるし、勉強になる」
エスパルスから移籍してきたJを存分に知る平松康平選手も、「ポテンシャルはある。個人的な技術はJFLもJとそんなに変わらない」と言う。今季のJFLでは残り4節の時点18チーム中15位に甘んじているが、観客動員数は一試合平均が3000人弱と、JFLでも屈指の数字だという。
あのカネコさんも定期的にブログを書いて宣伝活動に一役かっているようだし、サポーターさえつかんでおいて、オン・ザ・ピッチは世界を知るトルシエさんに任せておけば、ほっといてもJの舞台は遠くないような気がした。
■それぞれのステージで根を張る琉球サッカー
ユース年代はどうなっているのだろう。高校総体の沖縄予選で準優勝に輝き、6月にあった九州大会で熊本の名門・大津高校から3点を奪うジャイアント・キリングを見せた宜野湾高校サッカー部にお邪魔した。
グラウンドの半面を使ってのフォーメーションのトレーニングを見たが、攻撃の緩急とパススピードの強弱、球離れの早さに特筆すべきものがある。高校野球は名門揃いだけど、かつては万年1回戦負けだった沖縄のサッカーは見違えて進歩していた。
宜野湾高校のサッカー部の顧問である島袋先生は、沖縄の高校サッカーの躍進の要因に、「我那覇選手のような沖縄出身のJリーガーの活躍」や「FC琉球をはじめとしたJを目指すチームの存在」などの例を挙げてくれたが、いちばんは「波布(はぶ)リーグ」の開始だと分析する。
波布リーグは県外の強豪との対外試合がほとんどできない沖縄県の高校サッカーのレベルアップのために04年に設立されて5年目のシーズンを迎える。
「沖縄のサッカー、狭いところで細かくつないで局面を突破したり、1対1の勝負を大切にするスタイルが前面に出て見ごたえがある」と沖縄のサッカーフリークに好評だ。サッカー部の生徒も「試合がたくさんあって楽しい」と口を揃える。
波布リーグは2部制となっており、参加希望チームがあれば基本的には加入できるという。「FC琉球の下部組織」なども加わって“沖縄版高円宮杯”の様相を呈してくれば、それが沖縄のユース年代の強化に直結することは疑いようがない。
逆に沖縄がトップレベルのサッカーもある。ビーチサッカーだ。そのパイオニアであり、日本代表戦士をもっとも輩出するクラブ「SOL MAR PRAIA(ソーマプライア)」のホームビーチであるアラバビーチへ向かった。
ソーマプライアのメンバーは毎朝9時にビーチに集合し、濃度の高い練習をした後は、三々五々、仕事に出かける。日本では南米や欧州ほど、ビーチサッカーのスポーツとしての人気は高くないので、収入も多くは望めない。
日本代表で、チームでは監督兼GM兼広報兼キャプテン兼ゲームメーカー兼ホペイロの河原塚毅さんは言う。
「ビーチサッカー、やるのはつらいけど観るのは絶対、おもろいっすよ。ピッチが狭いから展開も早いし、派手なプレーもたくさん出るから」
本場ブラジルで開催されたW杯はとんでもないレベルと熱狂だったそうだ。
「でも、あれは日本でもできるし、やるべきなんですよ。日本は島国なんですから」
W杯のアジア予選を沖縄に誘致する運動はすでに起きている。そしてゆくゆくはW杯の本戦の沖縄での開催を目指す。
「沖縄は観光資源も受け入れ体勢もあるから絶対、できるはずなんです」
世界を見据えているかぎり、まだまだ県外のチームに不覚を取ることはなさそうだ。
先の天皇杯3回戦では、FC琉球をしりぞけて本戦に出場した沖縄代表のかりゆし琉球FCがJ2の横浜FCと対戦し、敗れはしたが、鋭いカウンターから先制ゴールを挙げ、Jリーガーを慌てさせた。FC琉球にも刺激になっただろう。
高校サッカー選手権の沖縄代表は11月8日に決まる。第85回、86回大会と2年連続で全国ベスト16に残っている。沖縄県勢初の“国立”が期待される。
ビーチバレーの“浅尾効果”でビーチスポーツが注目を浴び始め、競技人口が少しづつ増えているビーチサッカー。「沖縄で一番=日本一」の公式がまだまだ不動なのは、10月に行われた「全国ビーチサッカー大会2008」で証明された。
それぞれのステージで琉球サッカー、そろそろブレイクの兆候が見えてきた、というのは僕の単なる希望的観測だろうか。オリオン片手に波布リーグ、Jリーグ、ビーチサッカーW杯のはしごを堪能する、そんな贅沢な旅ができる日を待ち望んでいる。琉球サッカー、ちばりよー。(了)
竹田聡一郎 Soichiro Takeda
黄金世代と同じ1979年生まれ、神奈川県出身。湘南ユースでプロを目指した元DF。04年にフリーランス宣言以来、情報誌、グルメ誌、トラベル誌などに寄稿している。
1993年の開幕時に10チームだったJリーグのクラブは、それから15年の間にどんどんできた。3チームがひしめく九州はすっかりサッカー先進地域になった。札幌や徳島にもJは息吹いて、新潟で盛り上がって、山形と仙台で昇格争いを繰り広げて、ってな具合に津々浦々で発展している。
関係者の努力や地域自治体の振興活動、そしてなによりファンの声援あってだろう。僕もいちファンとしてJリーグの成長はとっても嬉しいし、誇らしい。
だが、その波に乗り遅れてる地域というか県がある。沖縄、琉球だ。「球」がつくのに何事か、と思っていろいろ調べていると、ここ近年「沖縄=サッカー不毛の地」からの脱却が始まっている、というではないか。
すぐさま飛行機に乗った。
レンタカーを駆って、まずは“シーサーズ”FC琉球の練習へ。FC琉球は今季からあのトルシエが総監督に就任し、沖縄から世界へ続くサッカーを伝えるべく「トルシエ革命元年」と息巻いている。
オフ明けの練習とあってラン中心のメニューだったが、指揮官は相変わらずで、秋に来る台風のようにエキセントリックに叫ぶ。ただ、練習自体、選手の技術なんかはJのチームより格段に落ちる、という印象は受けなかった。ある選手は鬼軍曹について語った。
「正直、何言ってるか、たまにわかんないときもあるけど。それでもやっぱり世界を知っている監督の下でサッカーができるというのはモチベーションになるし、勉強になる」
エスパルスから移籍してきたJを存分に知る平松康平選手も、「ポテンシャルはある。個人的な技術はJFLもJとそんなに変わらない」と言う。今季のJFLでは残り4節の時点18チーム中15位に甘んじているが、観客動員数は一試合平均が3000人弱と、JFLでも屈指の数字だという。
あのカネコさんも定期的にブログを書いて宣伝活動に一役かっているようだし、サポーターさえつかんでおいて、オン・ザ・ピッチは世界を知るトルシエさんに任せておけば、ほっといてもJの舞台は遠くないような気がした。
■それぞれのステージで根を張る琉球サッカー
ユース年代はどうなっているのだろう。高校総体の沖縄予選で準優勝に輝き、6月にあった九州大会で熊本の名門・大津高校から3点を奪うジャイアント・キリングを見せた宜野湾高校サッカー部にお邪魔した。
グラウンドの半面を使ってのフォーメーションのトレーニングを見たが、攻撃の緩急とパススピードの強弱、球離れの早さに特筆すべきものがある。高校野球は名門揃いだけど、かつては万年1回戦負けだった沖縄のサッカーは見違えて進歩していた。
宜野湾高校のサッカー部の顧問である島袋先生は、沖縄の高校サッカーの躍進の要因に、「我那覇選手のような沖縄出身のJリーガーの活躍」や「FC琉球をはじめとしたJを目指すチームの存在」などの例を挙げてくれたが、いちばんは「波布(はぶ)リーグ」の開始だと分析する。
波布リーグは県外の強豪との対外試合がほとんどできない沖縄県の高校サッカーのレベルアップのために04年に設立されて5年目のシーズンを迎える。
「沖縄のサッカー、狭いところで細かくつないで局面を突破したり、1対1の勝負を大切にするスタイルが前面に出て見ごたえがある」と沖縄のサッカーフリークに好評だ。サッカー部の生徒も「試合がたくさんあって楽しい」と口を揃える。
波布リーグは2部制となっており、参加希望チームがあれば基本的には加入できるという。「FC琉球の下部組織」なども加わって“沖縄版高円宮杯”の様相を呈してくれば、それが沖縄のユース年代の強化に直結することは疑いようがない。
逆に沖縄がトップレベルのサッカーもある。ビーチサッカーだ。そのパイオニアであり、日本代表戦士をもっとも輩出するクラブ「SOL MAR PRAIA(ソーマプライア)」のホームビーチであるアラバビーチへ向かった。
ソーマプライアのメンバーは毎朝9時にビーチに集合し、濃度の高い練習をした後は、三々五々、仕事に出かける。日本では南米や欧州ほど、ビーチサッカーのスポーツとしての人気は高くないので、収入も多くは望めない。
日本代表で、チームでは監督兼GM兼広報兼キャプテン兼ゲームメーカー兼ホペイロの河原塚毅さんは言う。
「ビーチサッカー、やるのはつらいけど観るのは絶対、おもろいっすよ。ピッチが狭いから展開も早いし、派手なプレーもたくさん出るから」
本場ブラジルで開催されたW杯はとんでもないレベルと熱狂だったそうだ。
「でも、あれは日本でもできるし、やるべきなんですよ。日本は島国なんですから」
W杯のアジア予選を沖縄に誘致する運動はすでに起きている。そしてゆくゆくはW杯の本戦の沖縄での開催を目指す。
「沖縄は観光資源も受け入れ体勢もあるから絶対、できるはずなんです」
世界を見据えているかぎり、まだまだ県外のチームに不覚を取ることはなさそうだ。
先の天皇杯3回戦では、FC琉球をしりぞけて本戦に出場した沖縄代表のかりゆし琉球FCがJ2の横浜FCと対戦し、敗れはしたが、鋭いカウンターから先制ゴールを挙げ、Jリーガーを慌てさせた。FC琉球にも刺激になっただろう。
高校サッカー選手権の沖縄代表は11月8日に決まる。第85回、86回大会と2年連続で全国ベスト16に残っている。沖縄県勢初の“国立”が期待される。
ビーチバレーの“浅尾効果”でビーチスポーツが注目を浴び始め、競技人口が少しづつ増えているビーチサッカー。「沖縄で一番=日本一」の公式がまだまだ不動なのは、10月に行われた「全国ビーチサッカー大会2008」で証明された。
それぞれのステージで琉球サッカー、そろそろブレイクの兆候が見えてきた、というのは僕の単なる希望的観測だろうか。オリオン片手に波布リーグ、Jリーグ、ビーチサッカーW杯のはしごを堪能する、そんな贅沢な旅ができる日を待ち望んでいる。琉球サッカー、ちばりよー。(了)
竹田聡一郎 Soichiro Takeda
黄金世代と同じ1979年生まれ、神奈川県出身。湘南ユースでプロを目指した元DF。04年にフリーランス宣言以来、情報誌、グルメ誌、トラベル誌などに寄稿している。
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