景気減退と物価上昇が進む中、秋から冬へのエンジニア転職市場はどうなるのか。これまでの市場動向を基に、技術系職種を大きく8つに分け、10月から3カ月間の短期予想を載せた。取材先は各分野のベテラン転職アドバイザーたち。それぞれの分野での求人動向と、企業の求める人材像に注目だ。

全体動向 景気減速の風向きに怯えることなく、転職活動の正道を行こう
「企業からの求人は、私が入社以来、初めての落ち込み」── 人材紹介会社のキャリアアドバイザーが深刻な表情でそう呟くのを聞いた。聞けば2000年の入社で、その年にあったネットバブルの崩壊も、彼の担当業種には影響を与えなかったよう。つまり入社以来、転職マーケットの右肩上がりの成長だけを見てきた彼には、今夏以降の景気減速感の逼迫、それに伴う求人マーケットの低迷は、少々ショックなようなのだ。

 しかし、景気はよいときもあれば悪いところもある。過去にはもっとひどい年もあった。採用数を絞るどころか、大手企業が大幅な人員リストラを繰り広げたのもそう遠い昔の話ではない。グローバル化の度合いを強める経済は、国内需要を見ているだけでは先が読めず、サブプライムローンや原油高など思わぬ外部要因に足元をすくわれることもよくある。だから求人市場は「水もの」とまで言うつもりはないが、景気後退局面にはそれに適した転職ノウハウが求められるというわけだ。
 まさに求職者の転職活動に当てはまること。一生転職しないつもりなら別だが、いずれは転職したいと考える人にとっては、景況の変動はとうに織り込み済みでなければならない。採用枠の減少とはいっても、生産活動の量と質を高めようと考える限り、企業は求人を続けざるをえない。いかなる事態であっても、その狭き門に到達できるだけのスキルを身につけておくくらいの気持ちは必要だろう。

 高い専門知識とコミュニケーション能力、人を束ねる力とものづくりにおける工夫、そして常に技術の進歩を疑わず、その進歩を自らが担うという気概があれば、企業は必ず「その人に会ってみたい」と関心を示すはずだ。
 景気減速傾向の中でもなぜこの企業は人を採るのか、という疑問を突き詰める中に、これからの新しいテクノロジーやマーケットの動向が浮かび上がることもある。今はまだ「べた凪」ではない。風向きが少し変わっただけだと考えよう。逆風を受けてむしろ帆船はスピードを増す。そんな気持ちで、秋以降の転職活動に臨んでほしい。

■制御系SE 車載関連製品など好調な製品あるも、全体的には縮小の余波あり
 マーケットは動いていますが、徐々に採用人数が減り始め、難易度は高まってきました。自動車業界は依然堅調というものの、採用企業は一部の完成車メーカーやサプライヤーに限られてきています。家電業界からの求人も横ばい傾向。携帯電話業界も横ばい、減少傾向です。
 以前は設計開発者への求人が多かったのですが、最近は開発力に加えてマネジメント力が重視されているのは、すべての業種に共通する傾向です。20代後半なら4〜5人規模のチームのリーダーまたはサブリーダー経験、30代前半ならより責任のかかる業務経験が重要になります。

 そうした経験をどんな会社で、どのような業務の中で積んできたのかが、採用側としては最も聞きたいところ。それをできるだけ詳しく話すことが面接でのポイントになります。仮に中小の協力会社での下請け業務であっても、そこで実施的なリーダー役をやってきた人や、高い技術領域のプロジェクトに参画されていたなら、十分大手企業へ移るチャンスがあると思います。
 また、企業は採用エンジニアの職場への「定着可能性」を、今まで以上に気にするようになりました。短期間で転職を繰り返す傾向の人は、「いつまでうちの会社にいてくれるだろうか」という不安を呼び寄せることになり、面接では不利になるでしょう。景気の後退感は製造業に大きく影響してくるため、こうした「厳選傾向」は、年度末に向けて厳しくなる可能性もあります。

 このような時期にあっても、先に挙げたように、マネジメント力をもつ人への注目は高く、また技術分野では、画像系の組み込みエンジニアの需要は依然高いものがあります。画像技術はさまざまな製品に組み込まれておりますが、例えば最近注目の高い車庫入れサポート装置などは、画像認識とカメラ技術を車に応用するもので、高度なエンベディッドの技術が求められます。
 画像技術はひとつの例ですが、「これから技術力やマネジメント力を高めていきたい」という場合は、メーカーであれソフト会社であれ、その会社でどのような経験が積めるかという情報を集めながら積極的に行動するとよいでしょう。

■アプリ系SE 大手SI企業の採用基準は高まるが、特化型ベンダーは元気
 全般的な景気悪化の影響か、IT・システム業界にも以前ほどの元気がありません。もちろん大手SI企業には仕事があるのですが、以前なら外部の独立系ソフトハウスにも回せるだけの量があったのが、最近はそれがなくなったため、系列以外の企業への外注を減らす傾向が見られます。いわゆる冠系SI企業でも、親会社の事業を請け負っている部門は元気で、人ももっと欲しいが、グループ外からの受注をメインにしていた事業部門はそうでもない、という状況が続いています。
 それがエンジニア採用にも影響を与えています。昨年、一昨年のような大手SI企業における、第二新卒や経験の浅い若手の大量採用はほとんど見られなくなりました。同じエンジニアを採るなら、リーダー経験、マネジメント経験のある人をという志向性が強く感じられます。一口にいえば、与えられた仕事をこなす以上に、仕事そのものを取ってこられるような人が欲しいということでしょう。

 大手でさえそうなのですから、独立系や中小のソフトハウスの現状は推して知るべし。待っていれば大手からの仕事が受注できるという状況ではもはやないのです。エンジニア採用数の減少、採用基準の高度化はここでも顕著です。
 こうした中でも強い求人意欲がうかがわれるのは、ニッチながらも高いシェアをもつ自社パッケージを擁する企業や、金融業界のフロントシステムで高い実績をもつような特化型ベンダーです。あるいは、特定の業務領域に専門特化したブティック型コンサルティングファームでは、コンサルタント以外のITエンジニアの求人が活発になってきました。つまりは「自分たちの強みをもつ会社」です。

 こうした企業にとっては、大手が採用を渋りだした昨今の状況はまたとない採用チャンスでもあり、積極的な人材募集を行っています。その多くは規模的にはまだ小さな企業ですが、だからこそ、入社すれば若いうちからマネジメントスキルが磨かれ、スペシャリストへの道も歩めます。
 これらの企業は知名度が低いために一般的な情報が少ないものです。また。会社と技術者の双方の意向を、十分にすりあわせることも不可欠になります。採用条件は満たしていないものの、「該当分野での強み」をアピールして採用に至るケースもありますので、情報を集めて積極的に行動することが先決です。

■コンサルタント 実効性のある業務改革が求められ、即戦力採用が強まる
 コンサルタント業界全体の活況は続いていますが、求人の傾向には変化が見られます。顕著な動きは、第二新卒層の採用が少なくなっていること。若手を大量にプールしておいて、飛び込んできた案件にアサインするというより、それぞれの案件にフィットした即戦力人材を採用したいというニーズへの変化が見受けられます。
 また、これまでITスキルなどテクノロジーベースの知識や経験を重視していた大手会計系ファームが、業務知識に重きを置くようになったのも最近の変化でしょう。例えば、銀行に長く勤務し、豊富な金融業務の知識を持ちながら業務改革のプロセスに通じている人材は、ファーム各社から高い引き合いがあります。

 こうした変化を促したのは、顧客であるクライアント企業の意識の変化でしょう。これまでのように提案書を書いて終わりではなく、提案書+システムの提案、さらにシステム運用から新たな業務改革のニーズを引き出していくような、システムライフサイクル全体にかかわる、息の長いコンサルティングが求められるようになっています。言い換えれば、業務改革提案により高い実効性、「本当に動くシステム」が求められているということです。
 それに対応してファーム側も、戦略策定から設計、導入、運用、保守に至るまでサービスラインを総合化する動きが見られます。特に大手会計系にはその傾向が強く、システム運用で顧客に張りつきながら、新たな業務改革のニーズを掘り起こしていくようなビジネススタイルを強めています。
 こうしたスタイルでは、人員を大量に投入してシステムをデリバリーする力だけでなく、本当に業務がわかるコンサルタントの存在が欠かせません。それが、即戦力採用にシフトしていく理由のひとつだと考えています。

 こうした傾向は年度当初から感じていたもので、秋以降も加速すると見ています。コンサルティング業界全体の採用傾向は、量よりも質に転じているとはっきり言えます。
 事業会社からコンサルティングファームを目指す人には、これまでの社内向けノウハウをより企業横断的に適用して、より大きな業務改革に携わりたいという志向をもつ人が多い。変化感やスピード感のある職場で、プロフェッショナル性の高いキャリアを積みたいという人には、大きなチャンスです。ただ、採用基準は高くなっているので、それなりの即戦力性やスペシャリティを身につけないといけません。
 この即戦力性や専門的な業務知識、コンサルタントとしての素養は、現在の職場にいても十分に身につくものです。常に経営視点で自分の担当業務を見直し、業務への携わり方を意識的に変えていく。こうしたマインドセッティングが重要になります。……≫続きはこちら

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