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紅葉情報。文人たちが愛した、温泉街=群馬県・伊香保(下)

2008年10月20日06時44分 / 提供:PJ

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紅葉情報。文人たちが愛した、温泉街=群馬県・伊香保(下)
室町時代からの湯治場だった「湯元」の河鹿橋は、10月21日からライトアップされる。群馬県・伊香保で。(撮影:穂高健一、15日) 写真一覧(5件)
(上)からのつづき。群馬県・伊香保を訪ねた文人は、徳富蘆花のみならず、地元出身の長塚節、萩原朔太郎、さらには土屋文明、夏目漱石、斉藤茂吉、島崎藤村、若山牧水など枚挙にいとまがない。地元の人からエピソードを拾ってみた。

 360段の階段から横丁にちょっと入った、そば屋の主人から話が聞けた。「画家の山下清は汚い身なりで逗留(とうりゅう)していた。五円玉を持って、画用紙を買いに来ていた。町の人は乞食(こじき)だと思い込み、にぎりめしを恵んであげていた。お礼に、変な貼(は)り絵を持ってきた。価値がわからず、そのままどこかに無くなってしまった。後々に有名になる人だったら、あの絵を取っておくんだった」と知人は悔やんでいる、と主人は教えてくれた。

 大正ロマン旗手として、一世を風靡(ふうび)した竹久夢二についても、語る。夢二はこの近くの旅館に居候していた。街の人は変わった奇妙な絵ばかり描いている、と侮っていた。それが詩、絵画、木版画、雑誌の表紙装丁などに、数多くの名作品を残し、いまでは伊香保に「竹久夢二伊香保記念館」ができている。若いころの夢路を知る、お年寄りたちには、ここまで有名になるとは信じがたいらしい。

 伊香保には、万葉の歌碑が街の随所にある。『万葉集』巻14の東歌のなかで、「伊香保」を詠んだ歌が9首あるという。石碑一つひとつの歌は、正直なところ万葉仮名が達筆すぎて読めない。難解でも歌碑をじっと見つめていると、万葉の時代を想うことができる。和歌の内容がどうしても知りたければ、石碑の側にはステンレス製の案内板がある。

 伊香保は、古くは歌人、明治以降は文豪に愛されてきた。この温泉街には見処(みどころ)が多くある。一つが石段街の上り口に近い「伊香保関所」だ。1631(寛永8)年に幕府の命により設けられたものだ。伊香保が街道としても重要な位置にあったとわかる。当時の門、建物が復元されている。内部に入ると、駕籠、通行手形、武具などが展示されている。

 紅葉の見どころは、室町時代からの湯治場だった「湯元」だ。伊香保神社から湯元通りをいくと、江戸時代に築かれた、苔(こけ)むす石垣がつづく。やがて清流の音が耳にさわやかに響く。「河鹿(かじか)橋」にたどり着くと、もみじ、かえで、くぬぎ、うるしなど広葉樹の森となる。10月21日から11月24日までライトアップされる。(16時30分から22時30分)。

 寺田寅彦は「伊香保」のなかで、湯元を描写している。それを紹介したい。『湯元まで行った頃には、もう日が峯の彼方にかくれて、夕空の殘光に照らし出されて、雜木林の色彩が実にこまやかに美しい諧調を見せていた。樹木の幹の色彩がこういう時には、実に美しく見えるものであるが、どういうものか特に樹幹の色を讚美する人は少ないようである。ここの湯元から湧き出す湯の量はなかなか豐富らしい。たくさんの旅館の浴槽を充たして、なお余りがあると見えて、惜氣もなく道端の小溝に溢れ流れ下って溪流に注いでいる』(インターネットの図書館・青空文庫より。現代文に修正)

 寅彦が描写するとおり、小川は温泉の硫黄で茶褐色になっている。まさに、湯量の多い温泉だ。露天風呂のそばには「伊香保温泉飲泉所」があり、東屋のベンチがある。紅葉を楽しみながら、温泉を飲用すれば、新たな心地よさがある。紅葉の季節の文学散歩は情感がある。そのなかでも、伊香保はお勧めスポットだ。【了】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

関連ワード:
温泉  紅葉  群馬県  夏目漱石  山下清  
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