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「100円」で「100万円」が儲けられる方法?=掘り出し物伝説(上)

2008年10月12日11時20分 / 提供:PJ

pj
「100円」で「100万円」が儲けられる方法?=掘り出し物伝説(上)
「古本屋業界には掘出し物伝説がある。それが徒弟制度で語り継がれてきた」と出久根達郎さんは語る。東京・千代田区の東京會舘で。(撮影:穂高健一、9月16日)
05年秋の千代田区・神保町の『神田古本まつり』の即売展で、定価35銭の本が147万円という高値で売りに出された。1907年5月に出版された藤村操の『煩悶記』(はんもんき)だ。ほぼ新書サイズで、約60ページの薄い小冊子。白っぽい表紙には「藤村操」と書いているだけだ。あまりにも高値だったことから、メディアは驚きをもって報じた。内容に関してはあまり詳細に伝わっていない。

 藤村操は第一高等学校(旧制)の学生だった。1903(明治36)年5月22日に日光・華厳の滝で自殺した。滝の傍にあったミズナラの木に、『巌頭之感(がんとうのかん)』と題して「すべての真相は不可解」という内容を彫り遺していた。エリート学生の死に触発された、当時の若者たちが数多く華厳の滝で後追い自殺した。一種の流行となった。

 日本ペンクラブの月例会が9月16日、東京會舘(東京・千代田区)で開催された。ミニ講演会は直木賞作家(受賞作:佃島ふたり書房)の出久根達郎(でくね・たつろう)さんで、テーマは『古本屋になるまで』だった。そのなかで、出久根さんは古本屋の立場から、藤村操の『煩悶記』が出た背景について語った。

 出久根さんは15歳で、東京・中央区の古本屋「文雅堂」に勤めはじめた。72年には独立し、古書店を営む。根っからの古本屋だ。「私は本が大好きなんです。金儲(もう)け以前に、人の知らない本を掘り出し、お金をつけて、お客さんに渡していく。そこに魅力を感じている商売です」と話す。そのうえで、古本屋業界には掘り出し物伝説がある、と紹介した。

 古本屋業界にとっては、藤村操の『煩悶記』は実に久しぶりのビックニュースだったという。「同著は発行された後、すぐ発禁となった本です。『日本発禁図書年表』(目録)などのリストには出ています。『煩悶記』はこの世に一冊しかないと言われてきました」。唯一の持ち主が文芸評論家の谷沢永一さんだった。ところが、05年秋に2冊目として『煩悶記』が神田・古本市で売りに出されたのだ。

 その売買の実態は未公表。「古本屋の勘でいいますと、147万円の高値ですが、買った方はきっといます」と話す。藤村操を研究する人にとっては、内容でなく、どんな本の体裁で、どんなふうに発禁になったか、それらを得るためだという。

 2冊目がなぜ売りに出されたのか。「それは文芸評論家の谷沢さんが自作『遊星群』のなかで、『自分は藤村操の『煩悶記』をもっている。自分に万が一のことがあれば、世の中に、この内容が伝えられないで終わってしまう。せめて全文を掲載したい』という理由で、公表されたからだと思います」と出久根さんは話す。

 『煩悶記』の全文分が世に発表された。いつまでも持っているよりも、いま手放した方が良いと判断して、2冊目が売りに出されたのだろう、と出久根さんは推量するのだ。他方で、『煩悶記』の全文がもし公開されず、二冊目が出ていたならば、大変な値段だったはずだともいう。【つづく】

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記者HP:穂高健一ワールド
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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