「我が国の死因究明制度の実情と問題点」、弁護士に法医学者とジャーナリストが解説=大阪弁護士会館で
2008年09月17日07時01分 / 提供:PJ
大阪弁護士会と犯罪被害者支援委員会は12日、大阪市北区の大阪弁護士会館で、「我が国の死因究明制度の実情とその問題点」と題して、講演会を開いた。この日の講演会の呼びかけ人は弁護士で、参加対象者も弁護士。講師に招かれたのは、年間160〜180体の死体解剖を行い、現場から現在の死因究明制度の危機的状況を指摘し続けている法医学者の岩瀬博太郎氏(千葉大学大学院医学研究院法医学教室教授)と、遺族の取材や海外の死因究明制度の取材をとおして、我が国の実情と問題点を雑誌やテレビなどで訴えているジャーナリストの柳原三佳氏。(撮影:新納直子、12日) 写真一覧(2件)
呼びかけは「死因不明の死体は、解剖されて死因が科学的に究明されている、私たち弁護士でさえそう思っていないでしょうか。ところが、「法医学者が解剖してから、犯罪性の有無を判断する」欧米諸国と異なり、わが国では、警察官が五感を使って犯罪性の有無を判断して、解剖に回すかどうかが決められています。その結果、相撲部屋リンチ死事件、パロマCO中毒事故、保険金殺人等など犯罪や重大事故の見逃しが絶えません。肉親の死の真相を求める多くの遺族が、このような日本の死因究明制度の中で苦しみ、真相解明のために長期にわたる孤独な戦いを強いられています。そのような遺族から相談を受ける弁護士、あるいはそのような遺族を支援する弁護士にとって、現在のわが国の死因究明制度の現状と問題点を把握しておくことは不可欠であると思います」というもので、多くの弁護士らが参加した。
講師に招かれたのは、年間160〜180体の死体解剖を行い、現場から現在の死因究明制度の危機的状況を指摘し続けている法医学者の岩瀬博太郎氏(千葉大学大学院医学研究院法医学教室教授)と、遺族の取材や海外の死因究明制度の取材をとおして、わが国の実情と問題点を雑誌やテレビなどで訴えているジャーナリストの柳原三佳氏。
柳原氏は、北海道で16歳の高校生が、放課後行方不明になり交通事故死として警察に事件処理され、司法解剖をされずに死体検案書を出された実例や、和歌山県で15歳の少年が、警察の杜撰な対応で、検視されず、警察に自殺と事件処理された実例などを示し、遺族が肉親の死因の警察判断に疑問を持つ事例を紹介した。そして「日本人の死因は、どこまで真実なのか疑いたくなる」と、日本の死因究明制度に疑問を呈した。
岩瀬氏は、警察官の五感に頼る日本の死因究明制度は、犯罪性のある死体を見過ごす可能性が高い点を指摘。法医解剖は国民の安全を守るために必要だとした上、毒物による中毒死など「見た目に異状を残さない事例」を紹介。見た目があてにならない犯罪事案、外表に合理的異状のない他殺・事故死体(毒物や内臓破裂など、乳幼児の窒息死など)の構造的な見直し(犯罪見直し)が必要になってきていることを強調した。
さらに、日本の法律(死体解剖保存法)について、「法律では、日本の警察、検察に、犯罪死体だけを拾い上げればいいと考えることを許容している。その結果、簡易な捜査と遺体の表面的な検査だけで、犯罪死、非犯罪死を区分し、犯罪死と判断したものだけ、死因を特定する運営が定着した。死因が確定されない段階で、非犯罪死と判断されるので、その中には構造的に犯罪死であるものが混じる」と話した。さらに、「正確な死因究明は、法医学者による適切な医学診断と捜査・調査機関による周辺及び死亡時までの状況調査を、総合的に判断することが必要不可欠であろう」と話した。
警察官の犯罪見逃しを無くす方策として、「死因決定に関する責任者、責任官庁を決め、犯罪捜査目的だけではなく、国民の安全維持のための公的サービスとして幅広く死因究明を行うこと、情報を柔軟に開示するように制度を変更したり、法医学的な諸検査(解剖・CT・薬物検査など)を行うインフラを整備することなどが考えられる」と語った。
柳原氏は「遺族にしてみると、肉親を火葬する前の48時間の間に、どこに、どうやって相談に行ったらいいのか分からないのです。火葬する前に、弁護士会なり、どこかに相談窓口があったらいいと思っています。初期の段階でサポートしていただきたいと思っています」と、遺族の立場にたって弁護士の協力を要望した。
岩瀬氏は、「パンフレットを作成していただければと思います。遺族が相談する機関があれば、ぜひ、われわれも法医学者の立場で、サポートしていけたらと思っています。」と話した。岩瀬氏は、民主党が掲げる法医科学研究所設置法案・死因究明局設置法案についても言及。「それなりの合理性があり、参考になるだろう」と語った。【了】
■関連情報
死者の人権守る監察医制度とは
警察はどうやって事件を判断するの?
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一般市民の「自然死体」、警察はどう対応するのか
警察が「異状死体」を発見すると
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