「あさきゆめみし」アニメ化のニュースを聞き、胸躍らせた女性は多いはず。1979年にmimi(講談社)で連載を開始し、その後舞台をmimi Excellentに移して1993年に完結したこの漫画は、幅広い世代の女性に愛されてきた。かの「源氏物語」を原作とし、光源氏の華麗なる女性遍歴と悩み多き生涯、子孫の恋物語を13巻に渡って描いている。

 帝の寵愛を一身に受けていた「桐壺」。やがて帝の子である「光源氏」を産むが、若くして命を落とす。失意の帝は桐壺に似た「藤壺」を后とし、桐壺の面影に愛情を注いだ。一方、幼い光源氏は藤壺への恋心を抱いたまま「葵の上」を正妻に迎える。夫婦となりながらも心を開かない葵の上との生活に疲れた光源氏は「六条の御息所」との恋に溺れていくが、新しい恋人「夕顔の君」とも逢瀬を重ねる。六条の御息所は嫉妬に狂い、我知らず夕顔の君を呪い殺してしまった。心癒やされる存在だった夕顔の君を失っていたところに藤壺の面影を持つ少女「紫の上」に出会うも、若すぎて恋の相手とはならない。愛を求めさまよう光源氏はついに藤壺に思いを告げ、想いを遂げる。そしてただの一度で藤壺は身ごもってしまった。

 これはほんの触りだが、噂に違わぬプレイボーイぶり。その後も「朧月夜の君」だの、「明石の君」だの、「空蝉の君」だの、美人を見つけては自分のものにしてしまう。さらには自らの庇護の元に育て、自分を兄とも父とも慕っていた紫の上までをも恋人にしてしまうのだ。

 かように光源氏は女性から見れば危険な好色家、男性からすればすればまったくもって鼻持ちならない色男だが、なぜか憎めない。それはお世辞にも美しいとはいえない「末摘花」や、老婆である「源の典侍」などを相手にした恋というよりも温情に近いようなエピソードのおかげでもあるが、なによりも光源氏が自分の愚かさを存分に自覚し、読者にもそれが伝わるからだろう。

 光源氏は実に愚かだ。常に新しい物を欲し、手にしている物は失わなければその大切さがわからない。しかしこれは世の男性すべてに通ずるところであろう。それにひきかえこの作品で描かれている女性陣の生き様のなんと見事なことか。明石の君の聡明さ、朧月夜の君の奔放さ、末摘花の健気さ、地味ながらも常に光源氏を支えてきた「花散里」の温かさ。中でも光源氏最愛の恋人、紫の上はすべての女性の共感を集めてやまない。

 時の人、光源氏の寵愛を幼い頃から受け続け、素晴らしい女性へと成長していった紫の上。彼女は光源氏が自分に他の女性の面影を求めていることを感づき、光源氏と他の女性との逢瀬を許し、さらには光源氏が他の女性に産ませた子供を育てるまでに至っている。まさにこれは慈愛の境地、と早合点してしまいそうになるが、紫の上が光源氏に抱いてきたのはまぎれもない男女の愛だ。嫉妬も寂寥も封じ込め、そこから自由になりたいとあがく紫の上。女として生きること、女の自由、そんなものを紫の上を通じて女性読者は考えさせられる。

 この作品は多くの女性の心をつかんできたが、アニメ化にあたり男性諸君にもぜひ味わってもらいたい。そしていつも隣にいる女性を、より深く愛するきっかけになればと願う。

(編集部 三浦ヨーコ)


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