【眼光紙背】貧困を利用する悪質なビジネス
2008年08月27日11時00分 / 提供:眼光紙背
門倉貴史の眼光紙背:第47回
所得格差が拡大していく流れの中、近年では「格差社会」の底辺に位置する貧困層が増えてくるようになった。生活保護を受ける世帯も増加しており、被保護世帯数は01年1月の76.7万世帯から07年9月には110.1万世帯へと、約1.4倍に拡大した。そうした状況下、貧困生活を余儀なくされている人たちを巧みに利用して、ビジネス展開する悪質な業者も出てきている。
たとえば、2000年代に入ってからは、50代や60代といった高齢のホームレスの人たちに生活保護を申請させて、彼らが受け取った生活保護費をピンハネしてしまうといったビジネスが横行している。
ホームレスの人たちは、基本的に野宿をしていて住所不定のため、たとえ生活保護を申請しても、行政から生活保護受給の対象として認定されにくいという問題がある。
ホームレスが生活保護を受けづらいという状況に目をつけた個人や団体は、善意のボランティアを装って、ホームレスに声をかけ、アパートの部屋や食事などを提供してやる。
住所が決まって生活が落ち着いたところで、ホームレスに生活保護を申請させる。働けないことを証明するために、アルコール依存症にかかっているように見せかけることもあるという。
そして無事行政側の審査が通って、福祉事務所から保護費が支給されるようになると、保護費の大半を、住居を提供した団体がピンハネしてしまうという仕組みだ。生活扶助費として支給されるのは、高齢者単身者世帯(68歳)の場合、東京都区部で毎月8万820円となっている(08年度の基準)。
ピンハネは、保護費を一括徴収したうえで、その一部を生活保護受給者に生活費として手渡すという形で行われる。ピンハネによって、ホームレスの人たちが実際に受け取る保護費は、毎月数千円程度になってしまうこともある。
第3者による保護費の一括徴収に生活保護受給者本人が同意している場合、その違法性を問うことは難しくなるが、一部の悪質な団体や個人は摘発されている。
たとえば、06年には、大阪で生活保護のピンハネをしていた元会社経営者が摘発された。この団体は、05年5月から12月にかけて、大阪市生野区や東大阪市にいた50代〜60代のホームレス数人をアパートに住まわせて、生活保護費(合計約494万円)をだまし取っていたという。
ただ、全国のあちこちで似たようなビジネスが横行しており、これまでに摘発された個人・団体は全体からみれば氷山の一角にすぎない。
貧困に陥っている人たちを利用して、それをお金儲けの道具にするというのは非常に悪質だが、一方で、こうした個人・団体の存在が、ホームレスの人たちの生活の改善につながっているのも事実だ。実際、アパートの敷金などが払えないホームレスの人たちは、何かのきっかけがなければ、いつまでたっても野宿の生活から抜け出すことはできないし、生活保護を受ける資格があっても保護の対象になることができない。
結局、ホームレスに対する行政側の支援策が十分ではないので、それをビジネス・チャンスととらえた個人や団体が付け込んで来るといった社会構造になっているのである。
プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。
著書に、「ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)
オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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