日通が保有する、変電所用の大型変圧器などの輸送用貨車「シキ車」(240t積み)。

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どんな製品も、「つくる」だけでなく、「運ぶ」技術があってこそ、われわれの生活・社会に役立つことができる。しかし、中には数百t、数千tもある超重量物といった「とんでもない荷物」も。そんな荷物を輸送するには、どんな技術が必要なのだろうか。

どんな先端技術の成果も、使う現場に運ばれてこそ「優れた製品」
「運ぶ技術は、“モノをつくる”と“使う”の間にある、あくまでも過程のことだけに、昔は軽視されがちでした。けれど、いくらいいモノをつくっても、それが工場にあるままでは何の役にも立たない。運ぶ技術があってこそ、モノは生きるんです」(日本通運株式会社重機建設事業部専任部長 福島茂明氏)
 ――と、改めて言われてみれば、至極もっともなこの言葉。確かに、われわれの生活も、産業も、「運ぶ」という“血流”があって、初めて機能しているのだ。しかし、そこで言う“モノ”が、数百t、場合によっては数千tにも及ぶ代物だったとしたら?
 いくつも積み上げられた鋼板のコイルや、変電所で使われる巨大な変圧器。あるいは、プラントの大きな構造体や、分割された船舶や橋梁のパーツ……。そんな、「重く、大きく、特殊な荷物」を運ぶ技術の現場を取材してみた。

■輸送の”プロ”は、運ぶためには道も作る
 産業用のさまざまな荷物だけでなく、一般家庭の引っ越し、宅配便で、われわれの生活にもすっかりおなじみなのが日本通運(日通)。総合物流の国内最大手企業として、「運ぶ」技術のエキスパートと言えるが、そんな同社の仕事の中でも、一筋縄ではいかない輸送や据え付けを請け負う部門のひとつが、重機建設事業部である。
 事業部の名前に「建設」が入っていることからもわかるように、この仕事はただ「運ぶ」だけではすまない。大型の機器の据え付けや橋梁架設では、大型のデリックやクレーンを組み上げる。最高で3000tにも及ぶ超重量物の輸送では、必要となれば新たに道をつくり、橋を架けることさえするという。プラント工場そのものの建設工事を含めて、これもまた建設である。

「われわれは“運送屋”だけれど、“工事屋”でもあるんですよ。
 重量物の輸送で多いのは、発電所や変電所などの電力関連や、石油化学などのプラント。最近はプラントを工場で巨大なモジュールに組み上げてしまってから運ぶこともあり、3000tクラスの輸送も何度か手掛けています。この場合、長大なトランスポータを何両も並列に連結し、全体で3000t以上を運べる車両をつくり上げる。この上にモジュールを載せて工場からはしけへ、はしけから設置場所へと運ぶのです。ただし、プラントは普通、モジュールの工場も設置場所も海岸沿いにあり、公道輸送の必要がないので、輸送手段やルートは比較的組みやすい。
 しかし、水力発電所や変電所は内陸にある。この場合、荷物は数十tから240t程度までの場合が多いのですが、公道を使用するので、いろいろと工夫が必要になります。
 また最近は橋梁も、ある程度組み上げてからの一体架設や、形のままの一体撤去が多くなっていますから、ここでも大きい・重い荷物の輸送のニーズが出てきます」(福島氏)

■重い鋼材や船体ブロックを運ぶ特殊車両を製作
 超重量物用の特殊な輸送車の主要メーカーは、現在、世界に4社あり、その一角を占めるのが、神鋼電機である。同社では、最大で600tクラスの産業用運搬車両を設計・製作。これらは、主に造船所や製鉄所などで働いている。
 現在、大型の船舶はあらかじめ工場で、ある程度の大きさに分割された船体をつくってしまい、これをドックに運んでひとつの船へと組み上げていく方法が一般的。部材を一つひとつ組んでいく手間のかかる工程を工場で行えるために効率がよい方法だが、一方で、その大きなパーツをドックまで運ぶ手段が必要になる。ここで使われるのが、「ブロック台車」と呼ばれる大型の運搬車両である。

 一方で、製鉄所などで主役となるのは、「エレベーティング・トランスポータ」と呼ばれる車両。「エレベーティング」と付くのは油圧によって車高を上下できるからで、車体そのものが数十cm沈み込み、鋼板や線材のコイルなどを載せたパレットの下に入って、その荷物をいわば“背中に担ぎ上げて”輸送する。主力となる160t積みトランスポータの場合で、300馬力のディーゼルエンジンを前後に2基搭載。運転席も両端に2つあり、前進・後進が区別なくできる。荷重を支えるムカデのような車輪は、前後の4組ずつがそれぞれ反対向きにステアリングでき、長大な車両が無理なく曲がれる仕組みをもつ。

「造船所で使われる台車の場合、400t積みの車両で時速4km程度。船のブロックはそれほど次から次に出来上がってくるものではありませんから、速さよりも、巨大で重いブロックをいかに慎重に運ぶかが課題です。
 一方で、製鉄所用のトランスポータでは、160t積みの車両で時速約30kmで走行可能。それも満載状態での速度です。工場では『時は金なり』ですからね。重量物をそれだけの機動力で運ぶうえに、車高を変える機構ももつ。脚部のユニットの強度をどれだけ確保するか、そのサジ加減が、当社の、そして技術者のノウハウでもあります」(大型搬送システム営業部担当部長 谷岡孝氏)
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