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【加部究コラム】五輪サッカーのいびつなポジション

2008年08月18日16時01分 / 提供:FOOTBALL WEEKLY

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 五輪の中に真の世界一決定戦とは言えない種目が4つある。男子サッカー、テニス、野球、男子バスケットである。

 国際的に普及度が低く次回からは外される野球はともかく、他の3種目は五輪種目から外されても大きな不利益はない。選手たちも、ワールドカップ、ウィンブルドン、NBAの方を重要視する。
 つまりこの3つが五輪種目に組み込まれているのは、IOC(国際五輪委員会)の利益が考慮されているということだ。特にキャパシティの大きなスタジアムで行われるサッカーはドル箱である。米国開催の84年ロス五輪でさえ、最大の観客動員を記録した。
 
 本来なら男子サッカーもテニスも男子バスケットも最高級の大会に、というのがIOCの思惑だ。しかし最高の舞台としてワールドカップがあるサッカーは、テニスのように四大トーナメントのミニチュア版を五輪のために用意するわけにはいかない。結局U23選手権を五輪に回したいFIFAと、ワールドカップ級のイベントを望むIOCの綱引きの末に出来上がったのが、OA3人を加えた中途半端な方式だった。
 だが五輪種目に組み込まれたことで、U23選手権に付加価値が出たことも確かだ。もしただのU23ワールドカップだったら、メッシもジエゴもラフィーニャも、ここまで出場に固執しなかったに違いない。
 またプロの出場も公に許可され(アマチュアの祭典といわれていた時代も、実質的にはプロデビューを果たしていた後の大物選手も参加していた)、質的にグレードアップされたことで、トッププレーヤーたちのモチベーションも上がった。
 
 個人的には、OA枠が存在しなかった92年バルセロナ大会の方が混じり気なしで濃密だったと思うが、さすがにルールが設定されると、なりふり構わずメダル狙いへと突っ走る国が徐々に増えてきた。
 特にシーズン中にはスター選手を欧州に出て不在の南米やアフリカ諸国は、選手もファンも、ここぞとばかりに最強代表チームによるお国自慢を望むようになった。
 
 さて重要なのは、今後日本が五輪という複雑な大会にどう取り組むのか、という指針を明確にすることだと思う。強豪国の常識に当てはめれば、普通年齢別世界選手権はゴールではないから、上のカテゴリーに入っている選手が下に戻って出場することはない。またユーロに出た選手が1人も出場していないように、スケジュールを見る限り、フル代表との兼用は無理だと判断するべきだろう。
 北京五輪の日本人の連覇達成者を見ても、4年間好調を持続してきた選手は1人もいない。逆に中間年にスランプという名の適度な休養があったからこそ、次のピークへと高められた。
 だがサッカーの選手たちには休養年は作れない。シーズンが始まれば、毎年息つく間もなく戦い続ける。当初オシムがなかなか欧州組を代表に招集しなかったのも、こうしたコンディショニングの難しさを熟知していたからだ。
 
 しかし一方で厄介なのは、常に最強メンバーを望む世論である。今回のメッシを巡るアルゼンチン協会とバルセロナの綱引きでも、日本の世論は圧倒的にバルサに批判的なのだという。
 ここには明らかな欧州側との温度差がある。ただしサッカー人気という側面を考えれば、それも無視はできない現実だ。
 
 反町監督のやり方が中途半端に映ったのは、OAを呼ぶと決断しながら候補者が2人しかいなかったことと、OA枠を使わないのに軸も定まらず組織が熟成し切れなかったことだ。だが一方で熟成するべき時期に入っても、五輪組はフル代表に呼ばれ、そこで故障もした。つまり戦う以前に、協会側の交通整理が不徹底だった。
 
 現状で歴代監督のコメントからして、五輪はワールドカップへの経由地でありながら、勝ちに行くイベントだということになっている。しかしこうした方針は、毎回監督任せにしておいて良いものではない。五輪には、どういう戦力を用意しサポートをしていくのか。そこをもっと明確にしておかないと、ファンは余計にフラストレーションを溜めることになると思う。(了)

加部究/ Kiwamu KABE
スポーツライター。ワールドカップは1986年大会から6大会連続して取材。近著に『サッカー移民』(双葉社刊)。


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北京五輪  サッカー  ワールド  加部究  U2  

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